- プレスリリース
山岳トンネルの装薬作業を自動化し、切羽近傍における労働災害リスクを大幅に低減
― 脚線付電気雷管を用いた機械装填を実トンネルで実証 ―
2026年10月02日
株式会社熊谷組(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:上田 真)は、一般的に使用されている脚線を有する電気雷管を用いた親ダイの機械装填装置と当社開発済みの爆薬の遠隔装填システム※1を組み合わせた、新たな爆薬機械装填システムを開発しました。
本システムは、無線電子雷管向けに先行して開発した親ダイ機械装填装置の機構をベースに、脚線特有の課題を解決したものであり、実際のトンネル工事において一連の装薬作業(親ダイ・増ダイ・込め物の機械装填)に適用し、システムの有効性を確認しました。
これにより、作業員が切羽近傍(切羽(天端)からの45度の範囲※2)に立ち入ることなく装薬作業が行え、大幅な安全性向上と機械化による生産性の向上や省力化が可能となります。
なお、本技術は、ニシオティーアンドエム株式会社(本社:大阪府高槻市、代表取締役社長:北 俊介)、株式会社キヨモトテックイチ(本社:宮崎県日向市、代表取締役:清本 康夫)の協力のもと実現したものです。
1. 開発背景
山岳トンネルの発破作業において、切羽(掘削面)直近での雷管および爆薬の装薬作業は、肌落ちや崩落リスクに晒される極めて危険な作業であり、労働災害防止と省人化の観点から機械化・無人化が業界全体の急務となっています。
当社ではこれまで、危険な装薬作業を切羽から離れて行うことを目的に、「爆薬の遠隔装填システム」の開発・実用化を行い、30現場以上で実績を積み重ねてきました。
また、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)※3」に参画し、次世代技術である結線不要の『無線電子雷管』を用いた装薬作業の完全自動化システムを開発・実証してまいりました。
しかしながら、無線電子雷管は現在社会実装に向けた開発段階であり、実際のトンネル工事の多くは、現在も脚線(導線)を有する「電気雷管」が主流として使用されています。
本開発では、現在流通している製品をベースに、現場の安全性を飛躍的に向上させることを目的とし、雷管として最も広く普及している電気雷管を用いた「脚線付親ダイ」の機械装填を可能にする新たな機械装填技術を開発いたしました。
2. 概要
当社がこれまでに運用してきた爆薬の遠隔装填システムは、増ダイや込め物の自動装填は可能でしたが、親ダイ(雷管を取り付けた起爆用爆薬)の装填については、起爆用の「脚線」の処理・取扱いが困難なことより、人力による手作業に頼らざるを得ませんでした。
親ダイを機械装填する際に、脚線のテンション(張力)を適切にコントロールしながら保護・ガイドし、断線リスクを低減しつつ、スムーズに所定の位置まで押し込む仕組みを構築しました。
これにより、作業員は切羽から離れたドリルジャンボ等の操作室内からパネルを操作することで、脚線付親ダイの挿入から、その後の増ダイ・込め物の遠隔装填まで、一連の作業を連続して自動化できます。

(1)親ダイ供給装置
親ダイ供給装置(写真1)は、爆薬と雷管、脚線を分離して納めるマガジン(写真2)と、親ダイを1本ずつ親ダイ挿入装置のガイドパイプ内に正確に供給する機構で構成されます。
親ダイ挿入装置の動きに連動して、親ダイの供給をします。
(2)親ダイ挿入装置
親ダイ挿入装置(写真1)は、発破孔に装填パイプを挿入するための送り機構と、親ダイと装填パイプを発破孔にスムーズかつ正確に挿入するためのガイドパイプで構成されています。
装填パイプの後端には、爆薬の遠隔装填システムの爆薬装填ホースが接続されており、親ダイを送り込んだ後にそのまま引き続いて、紙巻き爆薬の増ダイおよび込め物の装填を連続して行うことができます。
(3)装薬作業の自動化(操作パネル)
親ダイ・増ダイ・込め物の装填といった一連の作業は、ドリルジャンボ等の操作室内に設置した操作パネルから操作できます。
本システムは、親ダイ供給・装填パイプによる発破孔への挿入から、後方の装填台車による増ダイ・込め物の装填まで、親ダイ・増ダイ・込め物の装填工程を自動化しています。作業員は発破孔への位置合わせを行った後、「装薬開始ボタン」を1度押すことで、一連の装薬作業を自動で実行できます。
3. 現場実証結果
今回開発した脚線付親ダイの機械装填技術を実際のトンネル工事に適用して試験施工を行った結果(写真3)、懸念された脚線の断線や絡まり等のトラブルを確認することなく、確実に装填できることを確認しました。





写真3 試験施工状況
4. 今後の展望
本技術の意義は、インフラや法整備が必要な次世代システムの本格普及を待つことなく、現在主流である電気雷管を使用するトンネル工事において、親ダイ装填を含めた装薬作業全般における切羽近傍での作業員の立ち入りを不要にできる点にあります。現在の施工環境のまま導入が可能でありながら、安全性の向上と省力化に寄与します。
当社は今後、本システムの実現場への水平展開を推進するとともに、次世代の「無線電子雷管」と現行の「電気雷管」に対応する両輪の技術で装薬作業の完全自動化をリードし、国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」の実用化に貢献してまいります。
- 爆薬の遠隔装填システム
山岳トンネル工事の発破掘削における装薬作業を切羽から離れて行うことにより、作業の安全性向上と効率化を実現したシステム - 厚生労働省「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」を改正しました
山岳トンネル工事の発破掘削における装薬作業を切羽から離れて行うことにより、作業の安全性向上と効率化を実現したシステム - 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト
第3期の課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」におけるサブ課題A「革新的な建設生産プロセスの構築」(研究開発責任者:筑波大学 永谷圭司教授)、研究開発テーマa-3:トンネル発破等の危険作業の自動化・無人化に係る研究開発」において、トンネル発破等の危険作業の自動化・無人化実現を目指し、無線電子雷管システムの実用化、ならびに標準化を行う。
関連記事
お問い合わせ先
本リリースについてのお問い合わせ先
株式会社熊谷組 経営戦略本部 広報部
電話:03-3235-8155
技術に関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 土木事業本部 土木技術統括部 トンネル技術部
https://www.kumagaigumi.co.jp/contact/tech-solution/