環境を守る
環境破壊が叫ばれて久しい私たちの社会。近年地球規模の環境破壊の広がりや異常気象の頻発など、環境問題は深刻さを増すばかりです。
建設業と環境保護。一見相反するようですが、それは一昔前のお話です。今や建設業の活動に環境保護は大前提となっています。環境保護、環境修復、環境創造など自然と共に歩んできた建設会社だからこそ可能となる技術があります。
私たち熊谷組は「環境ナンバーワン企業」を標榜する会社です。
- ZEB・ZEH・省エネルギー技術
自然環境
都市開発や地域整備工事など、自然環境の現状変更を伴う場合には、自然環境の保護を念頭においた計画と施工が行われます。
事前調査技術、保全技術、復元技術、修復技術等の自然環境を守るための技術が活かされています。
「自然環境」のポイント
自然環境保護を目的とした技術開発は業界内でも古くから実施しています。生物が生息できる空間を復元・再生する「ビオトープ創造」技術や現地発生表土の利用による在来植生の復元技術などを活用し、生物の多様性・生態系の保全に積極的に取り組んでいます。
代表的な技術
生態系を考慮した屋上緑化工法
熊谷組では、都市の自然環境保全を目的として、ビル群の谷間や建築物の屋上における屋上緑化工法を開発しています。特徴としては、1.軽量2.低コスト3.メンテナンスイージー4.温度抑制効果があります。
ホタルの棲める環境づくり
人に優しく地球に優しい熊谷組、環境を考える熊谷組として、従来から自然環境や生物が生息する空間を復元、再生、創出させることを使命としてきました。その取り組みのひとつとして、ホタルが棲める環境づくり「ホタルビオトープ」を提供します。ホタルビオトープは、失われた清涼な自然のシンボルであるホタルの生育を可能とする環境の創成として、ホタルの卵が羽化するまでの生育が可能な水、土壌を創造します。
ビオトープ
都市空間の環境改善を図る緑化技術は、これからの地球環境保全を考える上で欠かせない要素です。熊谷組では、都市の自然環境保全を目的として、ビル群の谷間や建築物の屋上における自然環境創出の一環として、ビオトープの創造技術の開発に取り組んでいます。
ネッコチップ工法
伐採木を粉砕した生のチップ材と現地発生表土を混合し、高速ベルトコンベアにより法面に撒き出して生育基盤を造成する緑化工法です。建設副産物の発生量抑制とリサイクルによりコスト低減が図れます。現地発生土(表土)を使用することで在来植生の復元と地域生態系の保全が可能です。
ネッコチップ工法高所施工システム(ポンプ圧送方式)
生のチップ材と現地発生表土を混合した生育基盤材をピストンポンプにより圧送することで、法高30mを越える法面や大型の施工機械の配置が困難な狭隘地での施工を可能にしました。伐採木や被災木などのリサイクルができ、現地発生の表土を用いることにより在来植生の復元と地域生態系の保全が可能です。
ドローンによる植生管理
ビオトープの植生管理にドローンを活用しています。植生の定期的なモニタリングをドローンによる空撮で行い、3Dモデルやオルソ画像を作成して管理のデジタル化を可能にしました。人が入れない傾斜地などの植生把握に有効な手段です。
循環型・持続可能社会
循環型・持続可能社会に向けた活動は多くの産業が取り組んでいますが、建設業においても作業所で発生する廃棄物の有効活用、建築設備の省エネルギー技術の高度化、再生可能エネルギー生産技術への取り組み、土壌汚染・水質汚濁修復技術の進化など、多岐に亘る取り組みが行われています。
「循環型・持続可能社会」のポイント
循環型・持続可能社会に対応する技術開発として、太陽光、風力、バイオ発電等の新エネルギー導入に係る技術、高効率設備システムを導入したZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)の開発などが行われています。
代表的な技術
ZEB・ZEH・省エネルギー技術
熊谷組の取組み
当社は2010年に建設業界で初めてエコ・ファースト企業として認定され、「低炭素社会」の構築(CO2排出量の低減)、「循環型社会」の形成(3Rおよびグリーン購入の推進)、「自然共生社会」の推進(生物多様性保全)の3項目を軸として環境保全に取り組んできました。今後も『自然との調和のとれた人間活動の場を構築』を実現するべく、ZEB・ZEH-Mの提案・実施・普及活動を通じて、引き続き環境負荷低減活動の継続的な取り組みを行います。
さらに、2025年度に受注する設計・コンサルティング業務のうち、ZEBが占める割合を50%以上にすることを目指します。
ZEBとは
建築物の外皮性能や設備の省エネ性能の向上により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用などにより、年間における一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたは概ねゼロとなる建築物をZEBといいます。(NET Zero Energy Building)
ZEHとは
ZEHとは、ZEBの住宅版を指します。特に集合住宅においては、ZEH-M(Net Zero Energy House Mansion)といいます。
ZEBプランナー/ZEBリーディングオーナー
当社は平成30年度ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業の一環として、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(略称:SII)が公募する「ZEBプランナー」に申請し、2018年8月31日に登録されました。また、福井本店計画において「ZEBリーディングオーナー」を2021年1月29日に取得しました。
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ZEBプランナー -
ZEBリーディングオーナー
ZEBプランナー:
ZEBや省エネビルのプランニングに係わる知見を有する企業等をSIIは登録・公表することで、ZEBの普及、ZEBの実現を目指す事業者への支援を目的とする
ZEBリーディング・オーナー:
ZEB Oriented以上の性能である建築物の計画、導入実績を一般に公表する先導的建築物のオーナーを、SIIは登録・ホームページで公表し、ZEB普及の活性化を目的とする
ZEHデベロッパー
当社は集合住宅分野における省エネルギー化活動の一環として、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(略称:SII)が公募する「ZEHデベロッパー」に申請し、2023年1月13日に登録されました。
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ZEHデベロッパー
ZEHデベロッパー:
ZEH-M取組に関する計画、進捗状況、導入計画、導入実績を一般に公表し、ZEH-Mの案件形成の中心的な役割を担う建築主(マンションデベロッパー、所有者等)や建築請負会社(ゼネコン、ハウスメーカー等建設会社)
省エネ建築物の実績
『非住宅系(ZEB)』
2023年度ZEB受注実績
◆設計
規模 | 件数 | |
---|---|---|
新築 | 300m²未満 | 0 |
300m²以上2000m²未満 | 0 | |
2000m²以上 | 2 |
<関連技術>
耐火木造+ZEBによる次世代都市型コンパクトオフィス 福井本店計画 熊谷組福井本店が第1回SDGs建築賞の審査委員会奨励賞を受賞『住宅(ZEH-M)』
2023年度ZEH-M導入計画・導入実績
建物名称 | 都道府県 | 新築/既存 建築物 |
用途 | 延床面積 m² |
階数 地上/地下 |
住戸数 | 竣工 年/月 |
備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大阪市N計画 | 大阪府 | 新築 | 共同住宅 | 20,000 | 34/0 | 173 | 2025年5月 | ZEH-M Ready |
2 | Kマンション計画 | 千葉県 | 新築 | 共同住宅 | 70,000 | 43/0 | 600 | 2027年10月 | ZEH-M Oriented |
3 | KNマンション計画 | 神奈川県 | 新築 | 共同住宅 | 8,800 | 40/0 | 708 | 2028年3月 | ZEH-M Oriented |
4 | T独身寮計画 | 愛知県 | 新築 | 寮 | 2,600 | 4/0 | 99 | 2024年10月 | ZEH-M Oriented |
5 | 京都市N計画 | 京都府 | 新築 | 共同住宅 | 8,100 | 10/0 | 81 | 2025年1月 | ZEH-M Oriented |
<関連技術>
熊谷組が技術協力したノーリツ社「集合住宅用ハイブリッド給湯システム」が 2022年度 省エネ大賞「省エネルギーセンター会長賞」を受賞 株式会社ノーリツ ハイブリッド給湯システム 「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2023」優秀賞を受賞 2022年度 省エネ大賞「省エネルギーセンター会長賞」を受賞 ~業界トップクラスの省エネ性で低炭素社会の実現に貢献~ 「エコ・ファーストの約束」お問合せ窓口
ZEB・ZEH-M・省エネルギーに関するメールでのお問合せはこちら
→熊谷組ZEB・ZEH・省エネルギー窓口(kumazeb@ku.kumagaigumi.co.jp)
プラスチックシンチレーションファイバーを用いた自走式放射線2次元分布測定システム
コンパクトトラックローダに装着した計測器により放射線の計測を広範囲かつ早く正確に実施することができるシステム。全地球航法衛星システム部(GNSS)を使うため、除染効果の評価に有効な測定システムです。
油汚染土壌の処理技術(SRS:スーパーリサイクロンシステム)
熊谷組が独自に開発したスーパーリサイクロンシステム(SRS)により油汚染土壌をトルネードコンボ内で精米するように摺り合わせて、土粒子から油を剥離させる技術です。
福島産土着藻類による燃料生産実証事業
熊谷組が参画する一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムは、経済産業省資源エネルギー庁 平成28年度「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」にて補助金事業者として採択を受け、福島県の土着藻類による燃料生産実証事業を行っています。このコンソーシアムの中で熊谷組は効率的な藻類培養システムに関しての研究開発を分担しています。
ちゅらパイル工法
熊谷組は、南洋土建(株)、熊谷組グループのテクノス(株)と共同で、将来の沖縄米軍基地移転後の跡地開発を見据え沖縄特有の土質や気候に対応した油汚染土壌の浄化処理技術「ちゅらパイル工法」を開発しました。本浄化工法は、油分解能力が高く、かつ安全性の高い分解菌を用い、沖縄特有の粘性土や気候のもとでも、より確実で安全に油汚染土壌を浄化することが可能です。またコスト面でも、通常最も多く実施される「土壌入替え」と比べて半分以下となりました。
高効率藻類培養システム
二酸化炭素排出量削減が叫ばれる昨今、高い二酸化炭素固定能を有する微細藻類に注目が集まっています。熊谷組は土木建築のノウハウを活かし、培養施設の建設だけではなく、独自の微細藻類を用いた培養技術の開発に取組んでいます。高い生産能力を実現するため、今までほとんど検討されてこなかった培養槽内流れを実験的・数値的に解析しています。この技術を軸に、新しい持続可能なビジネスの創出を目指しています。
微生物を利用したCO2変換技術
カーボンニュートラルの実現には徹底的なCO2排出量削減に加えて、カーボンネガティブとなるCO2有効利用(CCU)技術が必要です。CO2を資源として有効利用するCCU技術の実用がカーボンニュートラル実現のカギを握っています。熊谷組では、CO2を炭素源として利用する鉄酸化細菌(Acidithiobacillus ferrooxidans)を用いて、CO2を原料に基礎化学品であるエチレンを微生物電気化学的に生産する技術を開発しました。今後さらに精力的に研究開発を推進し、カーボンネガティブあるいはカーボンリサイクル技術として実用化し社会実装を目指していきます。
廃棄物
環境問題における重要事項にゴミ(廃棄物)問題があります。
熊谷組では高機能型最終処分場の構築技術や管理技術を通じて、最終処分場における環境汚染問題を解消しています。
「廃棄物」のポイント
管理型最終処分場に必要な「貯留機能」と「浄化機能」を立地条件や廃棄物の種類に応じて最適化する技術、汚染リスクが少ない信頼性の高い処分場遮水構造技術など、最終処分場の高機能化技術への取り組みを行っています。
代表的な技術
最終処分場トータル構造システムCRooS
最終処分場トータル構造システムCRooSは、セパレーションシステム、ルーフィングシステム、カセットシステムを効果的に組み合わせることで、降水と浸出水を管理し、最終処分場の貯留機能と浄化機能を向上させることができます。
遮水構造:KMライナー(検知システム一体型複合遮水構造システム)
廃棄物最終処分場の構造基準である遮水シートとベントナイト混合土の複合遮水工、遮水シート機能管理を行う検地・修復システムを組み合わせた遮水構造システムで、より信頼性の高い遮水工の構築を可能としたものです。
ルーフィングシステム
雨水を制御し、周辺環境との調和を図る準好気性型の屋根付き処分場システム。埋立地を大きな屋根で覆い、廃棄物への雨水の浸入を防ぐことが出来ます。
カセットシステム
カセットシステム処分場は、区画堤や仕切壁等により区画した“カセット”に廃棄物を順次計画的に埋立てながら浸出水質や発生ガス量、温度を計測・管理できるタイプ。
浸出水調整容量算定システム
最終処分場計画地の地域性や敷地形状などを考慮した、安全で経済的な処分場形式を比較検討し、浸出水の処理量と調整容量を正確にシミュレートします。
セパレーションシステム
処分場埋立地の底部に廃棄物層と隔離した空間を設け、そこを浸出水の地下貯水槽とすることで、浸出水の処理量のコントロールが容易となり環境汚染リスクの低減と水処理設備への負担低減が図れます。
建設環境
建設行為によって起こる環境変化は、建物敷地内や近隣地域まで影響することもある重要な問題です。例えば建設後に発生する可能性のある「ビル風」は、計画段階からシミュレーションや実験による予測・評価を行い、対策を設計に提案・実施をしていく必要があります。
「建設環境」のポイント
目に見えることのない“風環境”の立体的な可視化技術、建物周辺の風環境や耐風性能を予測・評価する技術などの採用により、建設後の環境にも配慮しています。
代表的な技術
Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術
流体解析とVR技術を組み合わせ、目に見えない3次元の風の流れをVR空間で可視化するものです。従来の2次元情報と比較し、ビル風の原因を容易かつ正確に把握することが可能となり、設計品質や住環境性能の向上、強風による事故防止の注意喚起のためのツールとして大いに期待できます。
鉄道用架線金具の風騒音防止
鉄道の架線を支持する金具の風騒音を防止する技術です。鉄道の架線金具には材料強度や意匠性などの理由から鋼管が採用される場合が増えていますが、鋼管周壁にボルト穴やメッキ穴が空いているため、風が吹くと、風向きによっては穴部分で風騒音が生じる場合があります。この風騒音への対策として、鋼管穴周辺の気流性状分析から考案したリング状突起を穴周囲に取り付けることにより、気流を制御し風騒音を防止できるようになりました。
電子受容体を利用した油含有土壌の省力低コスト嫌気処理法
生物機能を利用した油含有土壌の浄化技術であるバイオレメディエーション技術について、酸素を必要としない嫌気処理技術の開発に取り組んでいます。嫌気処理技術と従来技術の好気処理技術を組み合わせることによって、ランニングコストの低減が図れます。また、電子受容体を添加するだけで土壌中に生息する微生物群を活性化させることから、自然が元来持つ浄化能力を引き出す環境調和型浄化技術になると考えられます。