ライフサイクル
建設物の寿命は様々です。数十年から百年を越えるものまでとにかく長い。熊谷組の仕事は建設物を建設するだけではありません。
建設計画の立案から、設計、施工、運営、維持管理、リニューアル、立て替え、経験豊富なソリューション技術でマネジメントまで手がけます。
建てる前のこと、建てること、建てた後のこと、そして将来のことまで、一緒に考え続ける会社です。
リニューアル
既存建設物を活かしながら、当初建設時よりも機能を上げ、寿命を延ばしてゆく。 作業時間、方法、環境、騒音、振動、粉塵…。
多くの制約条件が当たり前のリニューアル工事は、新築工事よりも高度な総合的技術力と全てに亘る配慮が求められます。
「リニューアル」のポイント
トンネルの覆工背面などの空洞や空隙に注入する材料である「可塑性注入材」も多くの改良が重ねられています。セメントサイロからトンネル内の作業場所まで配管による長距離圧送が可能となったことは、在来手法のアジテータカー(コンクリート運搬車両)が入れない狭い現場での作業を可能にしました。
また、火力発電所から排出される石炭灰(フライアッシュ)を可塑性注入材にセメントの代替材として添加し、廃棄物の有効活用を図っています。
スーパーエコマックス
トンネル覆工背面の空洞箇所などに充填する可塑性の注入材。フライアッシュを混合しながらもインラインミキシング方式を採用しているため長距離圧送が可能です。
AZグラウト
配合を変えることにより「長距離圧送タイプ」「高強度タイプ」「軽量化タイプ」など優れた汎用性を発揮する可塑性の注入材。1km以上の長距離圧送が可能であるため、小断面トンネルにも有効です。
目地じょうず
レンガやブロック積みトンネルの目地モルタル劣化部の充填を効率的かつ高品質なものとする工法と新材料を開発しました。
サポートライニング工法
過去に建設された供用中のトンネルは、経年劣化により健全性が低下しているものが数多く見られる。熊谷組はそのような既設トンネルの覆工を早く安く確実に補強する工法を開発しました。
マンションリノベーション技術データベース
「マンションリノベーション技術データベース」は、リフォーム・リニューアル、コンバージョン、リノベーション等に必要な各種技術を網羅的に統合したものです。マンションリノベーションを計画しているディベロッパー等のお客様からの要望や技術相談に対して、当社やグループ会社の技術営業担当者が、データベースを用いて、広範囲かつ詳細な技術情報の中から、最適な計画を提案することができます。また、当社の得意技術も盛り込んでいますので、プラスアルファの提案も可能です。建物全体および室内空間の基本的な性能について、与条件に応じたベストな提案を、総合的な技術力の裏付けの元で実施いたします。
ソリューション
建設事業に伴って発生する様々な問題。計画段階、施工途中、完成後に亘ってあらゆる可能性を予想し事前に対処することができれば、それは問題ではありません。
建設事業に関連する、あらゆる問題への解決力。 熊谷組には総合建設会社として長年培ってきた経験やノウハウがあります。
「ソリューション」のポイント
大型商業施設の建設や再開発事業においては、施工途中から完成後においても、周囲の交通量、流れや渋滞などの状況は一変します。計画段階での交通計画は必須事項です。また、大規模災害時の交通麻痺をシミュレーションし、対応を事前検討しておくことは社会的、国家的な要請事項です。
大規模開発における熊谷組の交通分野の取り組み
熊谷組は、人・モノ・情報の流れを効率化・高度化するための新しい技術を取り入れた提案を行っています。ソフト技術の代表的な取り組みとして、大規模都市開発等の事業を円滑に進めるために、街区レベルでのミクロなアプローチや開発地区レベルでの検討に交通シミュレーションを活用して課題解決を行っています。
耐震診断・補強リニューアル
耐震診断システム
昭和56年に制定された「新耐震設計法」以前に設計された建物について、新耐震設計法と同等以上の耐震性を有しているのかの判定を、図に示す調査・診断と計算を用いて確認します。
補強リニューアル
耐震診断の結果、耐震性に問題があれば建物の使用上の問題や機能を損なわない最適な新補強技術を用いて、柱・梁・壁等の主要構造部の補強を行います。また、補強技術によって新たな開口部を設けることも可能です。
合意形成ツールとしての交通シミュレーション
市街地における建設工事では、周辺住民の理解を得ながら建設計画から工事まで進めていくことが求められています。近隣住民の多様化する価値観やニーズの中では利害が広範囲に及ぶことから、円滑に建設事業を進めるためには、効率的な事業実施への要請と同時にコミュニケーションによる合意形成が課題となってきています。熊谷組では、工事車両の安全性確保に対する合意形成ツールとして交通シミュレーションを活用しています。
医薬品工場エンジニアリング
医薬品工場は、日本のPIC/S加盟により、従来以上に製造工程の管理、製造環境を、GMP基準に基づき厳格に評価できる工場、設備が求められています。
お客様のご要望事項と施設計画のポイントをふまえ、基本構想の具現化から構築に至るまでのお手伝いをさせていただきます。製造工程と各室の機能、施設計画の諸条件とGMPにもとづいて、人為的な誤りを防ぎ、製品に対する汚染や品質低下を防止する信頼ある工場を計画します。
食品工場の構築技術
食品業界では、食品の安全、安心に対する消費者の期待をふまえ、食品安全認証(HACCP、ISO22000、FSSC22000等)の取得が検討、実施されています。
また、これまで以上に食の安全確保を図るため、平成30年6月 食品衛生法の改正公布により食品衛生管理の国際基準であるHACCPの国内での制度化が決定しています。
室内空間の清浄度評価技術
室内空間には肉眼で確認することができない様々な粒子が浮遊してます。また、床面にはそれらの粒子が降り積もり、汚れとして蓄積してます。そのなかでも微生物(カビやバクテリア)に由来する粒子および汚れに着目し、それらをリアルタイムで測定し室内空間の清浄度・汚染度を評価する技術を開発しました。室内空間の汚染状況の確認、清掃作業の効果の確認に有効な手段です。解体工事中の衛生管理やAI清掃ロボ(ソフトバンクロボティクス社)の効果検証に使用されています。
維持管理
高速道路、橋梁、トンネルなど社会インフラの多くは経年劣化により更新や大規模な修繕が必要な時期にきています。
これらの社会インフラを安全・正確、そして効率的に点検する技術は、今最も開発が求められている分野です。
「維持管理」のポイント
インフラ構造物の点検を人間に代わって安全、正確、効率的に行う技術開発が行われています。例えば、最新のセンサー技術やロボット技術を取り入れた点検技術は実用化の段階にあります。
また、供用中の路線の橋梁床版を急速施工で交換する技術など、社会の要請に応える技術開発が行われています。
橋梁用「コッター床版工法」
コッター床版工法は、橋梁用プレキャスト床版を高速かつ簡単につなぎ合わせる技術です。
これまでは、床版と床版を現場打ちコンクリートでつなぎ合わせていましたが、これをコッター式継手と呼ばれる機械式継手でつなぎ合わせる、まったく新しい発想の工法です。
現在、NEXCO各社が実施している高速道路リニューアルプロジェクトで活躍しています。
インフラ点検ロボット
鋼桁道路橋の橋梁床版ひび割れ検出点検において、橋下からアクセスして点検部位の撮影を可能にしたシステムです。磁石および吸着補助装置(ローター)で鋼桁に吸着し、磁石車輪で移動するロボットにより、はく落防止ネット越しでも高精細カメラによる床版の詳細ひび割れ画像を取得できます。本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の結果えられたものです。
健全度確認センサー(インフラ点検センサー)
鋼板巻立て補強された高架橋柱等は、強震動を受けた後の既設部材の損傷状況については鋼板で巻立てられているが故に確認が困難です。
「健全度確認センサー」は、圧縮力により不可逆的に着色する圧力測定用のフィルムを用いて、例えば列車の運行の可否の判断基準になりうる、既設部材の降伏点や最大耐力点を可視的に判断するものです。センサーは補強鋼板に接着剤等で貼付け、地震後の緊急時に専門的な知識を必要とせず、早急に鋼板巻立て補強済みの既設部材の損傷状況が把握できます。
なお、本センサーは株式会社ジェイアール総研エンジニアリングとテクノス株式会社の3社で特許を出願しているものです。
磁石走行式ロボット等を活用した橋梁点検システム
高度経済成長期に建設された膨大なインフラの老朽化に伴い、それらの定期点検や維持管理が喫緊の社会課題になっています。また、点検作業の省力化や安全性の向上が強く求められています。
本システムは鋼桁橋梁を対象とし、開発した磁石走行式ロボットを使用して橋梁床版下面の画像を確実に取得することにより、橋梁の目視点検を補助するものです。
点検手順は、1. 現地にてロボットにより画像を取得する、2. 取得した画像からひび割れ等不具合を抽出する、3. 床版面の支障となる横構等を除去した展開図を作成し点検調書を作成、となります。
開発したロボットの主な特徴は、1. 磁石車輪およびローターにより鋼桁に安定して吸着、2. 大径磁石車輪により添接板等のボルト頭部やはく落防止ネット部も安定して走行、3. 有線による給電および通信による長時間行動と安定した通信、4. ローターによる飛翔着脱、5. 少人数での現地運用、があります。
本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の結果えられたものです。
マネジメント
熊谷組は、日本の企業の中で、いち早く海外BOT事業(build, operate and transfer)を手掛け、香港、シドニー、バンコクで道路、鉄道を整備しています。
この豊富な海外での実績を我が国のPFI事業(Private Finance Initiative/民間資金等活用事業)でも活かしています。
「マネジメント」のポイント
熊谷組が1980年代に香港初のBOT事業として建設した東部海底トンネルが、2016年8月に30年間の事業期間を終了し香港政府に返還されました。当社はこれに引き続き、返還後の道路の管理・運営・保守事業(Management, Operation, and Maintenance:MOM)に参画することになりました。 MOM事業への参画は、単なる建設工事だけではなく、インフラ維持・更新の面からも社会貢献を可能とするものです。
香港において、こうした事業参画は日本企業として初めての試みであり、海外における新ビジネスモデルへの取り組みとして大いに期待されています。
MOM事業
熊谷組はBOT(建設・運営・譲渡)方式で運営事業を手掛けていた「香港東部海底トンネル(EHC)」、「大老山トンネル」の管理・運営・保守事業(MOM事業)に参画しています。
海外においては、様々な社会インフラのMOM事業の増加が見込まれており、今後も香港を中心として、アジア地域の事業に積極的に参画していきます。
PFI事業
熊谷組は、日本の企業の中で、いち早く海外BOT事業を手掛け、香港、シドニー、バンコクで道路、鉄道を整備しています。この豊富な海外での実績と総合エンジニアリング力で我が国のPFI事業にも取組んでいます。
コンセッション事業
近年注目されているコンセッション(公共施設等運営権制度)は、高速道路、空港、上下水道などの料金徴収を伴う公共施設などの所有権を公共に残したまま、運営を特別目的会社として設立される民間事業者が運営を行うスキームです。
熊谷組はゼネコングループとして初めて道路運営事業に参入しており、コンセッション等の新たな事業領域にも取組んでいきます。