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熊谷組は「中期経営計画(2024~2026年度)」および「ESG取組方針」において、環境問題の解決に向けた取組みが経営上の重要な課題であると位置づけており、生物多様性に配慮した取組みを「エコ・ファーストの約束」として公表しています。

2022年12月に開催された第15回国連生物多様性条約締約国会議(COP15)において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年ミッション、2050年ビジョンが定められました。

国際的に自然損失の阻止・回復の重要性の認識が高まる中、熊谷組は、2024年5月にESG取組方針の重要課題(マテリアリティ)の改定を行い、個別課題に「ネイチャーポジティブの実現」を加えました。

これまで工事施工時に、全ての作業所において生物多様性についての評価を行い、生物多様性の保全および持続可能な利用に配慮してまいりましたが、さらに当社の事業における自然資本への依存、インパクト、リスクと機会を把握するために、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(以下、TNFD)に沿った情報開示に取り組むことといたしました。

なお、この度の情報開示ではTNFD v1.0を参照し、TNFDの枠組みであるLEAPアプローチを実施しました。

一般要件

1. マテリアリティへのアプローチ

自然が事業活動に与える影響と事業活動が自然に与える影響をダブルマテリアリティの考え方で分析・評価しました。

2. 開示のスコープ

当社の主要事業である国内土木事業、国内建築事業のうち直接操業5拠点を対象にL(Locate)E(Evaluate)、A(Assess)分析を実施し、結果を開示します。
拠点数及び地域、バリューチェーン全般にわたり今後の分析対象として拡充を検討します。

3. 自然関連課題のある地域

自然関連課題がある地域を特定するために、日本国内において、地域に偏りが無く、且つ周辺の自然環境が異なると考えられる5拠点を選定し、分析しました。

4. 他のサステナビリティ関連の課題の開示との統合

気候変動をはじめとしたサステナビリティ関連の情報(TCFD、エコ・ファーストの約束等)とともに統合報告書に記載しています。

5. 対象期間

今回の分析・評価においては対象となる期間の設定はしておりません。今後、TCFD提言に沿った情報開示と同様に、短期(概ね3年以内)・中期(概ね3年超~10年以内)・長期(概ね10年超)の3つを時間軸として設定することを検討しています。

6. ステークホルダーエンゲージメント

当社の事業活動をご理解いただくため、お客様、地域の皆様、従業員、株主・投資家などのステークホルダーとの対話を実施しています。

ガバナンス

当社は、自然関連課題を含む経営上の重要事項や先住民族等に関する人権方針、ステークホルダーとのエンゲージメントについて取締役会で審議しています。
TNFDのガバナンスに関しては、下記の取組みをもって対応しています。
詳細については以下をご参照ください。

戦略 Locate(発見)

国内土木事業と国内建築事業を対象に、LEAPアプローチにより評価を実施しました。
Locateのフェーズでは、地理的に偏りのない直接操業の5拠点を選定し、TNFDの推奨ツールであるIBATとAqueductを使用し、各拠点周辺の自然との接点や水ストレスを把握しました。

IBAT及びAqueductを用いた分析結果
IBAT及びAqueductを用いた分析結果
Aqueductを用いた拠点周辺の水リスクの把握
Aqueductを用いた拠点周辺の水リスクの把握
(出典:Aqueduct)
  • IBATでは、半径50km以内のIUCNレッドリスト種数、半径2km以内保護区(PA)の数、生物多様性の保全上重要な地域(KBA)の数を把握しました。その結果、拠点1(東京都内)、拠点4(京都府内)において、半径2km以内の近隣で「保護区(PA)」が確認されました。一方、「生物多様性の保全上重要な地域(KBA)」は、5つの対象拠点のいずれについても、半径2kmには確認されませんでした。
  • Aqueductにて拠点周辺の水リスクを確認の結果、拠点2(北海道内)が「低」、拠点1(東京都内)、3(愛知県内)、4(京都府内)は「低~中」であり、高い水リスクのある拠点は確認されませんでした。拠点5(沖縄県内)はデータ取得できず、現地の情報収集を行うなどの対応を検討します。
  • 今後、他の直接操業拠点についても、IBATとAqueductを使用した調査を実施し、事業活動を行う際の知見やリスク管理等として活用します。

戦略 Evaluate(診断)

EvaluateのフェーズではENCOREを用いて、主要事業のバリューチェーンのプロセスにおける自然への依存とインパクト(影響)を分析、評価しました。

依存またはインパクト(影響)が高いと評価されたバリューチェーンプロセスと生態系サービスへの依存/インパクト要因
(ENCOREによる分析結果)
依存またはインパクト(影響)が高いと評価されたバリューチェーンプロセスと生態系サービスへの依存/インパクト要因(ENCOREによる分析結果)
  • 国内土木事業、国内建築事業のバリューチェーンについてENCORE を使用し、自然への依存とインパクトを把握しました。
  • その結果、建築事業では、川上の木材の採取のプロセスが、依存度が高いことが確認されました。建築事業、土木事業共に、直接操業の施工プロセスにが、インパクト(影響)が大きいことが確認されました。

戦略 Assess(評価)

LEAPのAssess(評価)フェーズでは、Locate(発見)フェーズで分析した5拠点について、TNFD推奨ツールであるWWF Risk Filterを使用し、各拠点周辺の生物多様性及び水関連のリスクを把握しました。WWF Risk Filterの結果とLocateで把握した自然との接点、Evaluate(診断)で特定した依存・インパクト(影響)も踏まえて定性的にリスクを検討しました。

特定されたリスク、機会、対応策(1)
特定されたリスク、機会、対応策(2)

リスクとインパクトの管理

当社は、事業活動に伴うリスクの把握・低減および機会の最大化に努めることが企業価値の向上につながると考えています。重要な事項については、個別案件ごとにリスク・機会を抽出・評価のうえ、経営会議・取締役会にて意思決定を行っています。

各部門においては、業務プロセスに内在するリスク・機会について抽出・評価のうえ、必要な対応策を検討し年度計画に反映しています。この取組みの状況については四半期ごとにモニタリングを実施し、経営会議体にて報告しています。

気候変動や生物多様性を含む環境リスク・機会に関しては、「サステナビリティ推進委員会」における報告・議論を経て、必要に応じ経営会議・取締役会にて報告・審議しています。

指標と目標

当社は「エコ・ファーストの約束」において、自然共生の取組みを明確にしています。「経団連生物多様性イニシアチブ」に賛同し、自然共生に積極的に取り組んでいます。
事業活動とSDGsの関連付けを行う「ESG・SDGsマトリクス」を作成し、様々な個別課題に対する指標・目標・実績を開示しています。

個別課題「ネイチャーポジティブの実現」

具体的な取組み

  1. 生態系の回復に関する事業
  2. 品質環境マネジメントシステムの運用と改善

指標

  1. 脱炭素燃料開発、販売事業の拠点整備件数
  2. 施工中の重大な環境事故件数

目標

  1. 2件以上 中期経営計画期間中(2024~2026)
  2. 0件(各年度) 中期経営計画期間中(2024~2026)