- つくる
KiGi AKIHABARA

- 江戸時代から続く街にふさわしい、サステナブルなオフィスビルを創出する
- 設計と施工が連携したチャレンジにより、CO2排出量を大幅に削減
- 緻密な現場力が、効率的、そして安全な施工を支える
- 現場の技術者たちがワンチームとなり、困難な施工に挑む
- 木造建築の次代へ、現場で蓄積した知見を水平展開していく
- 熊谷組と住友林業(株)がワンチームとなって
- 工事概要
先進の木造建築技術と、経験に裏打ちされた現場力。
温もりのある循環型社会づくりに貢献する。
デジタルとサブカル文化が融合した街、秋葉原駅の東側に位置し、神田川沿いに広がる江戸時代から続く商業地域に2026年5月、近代的でありながら温もりのある風情を醸し出す、新しい街のサステナブルな一棟が竣工しました。
限られた立地という都心部ならではの難条件のもと、最新の木造建築技術を採用。豊富な経験に裏打ちされた現場力と、先進の技術が融合した、熊谷組ならではの強みが凝縮されています。
江戸時代から続く街にふさわしい、サステナブルなオフィスビルを創出する
秋葉原駅の東側に位置する千代田区東神田は、古くからあるオフィス街です。東西に神田川が流れ、街に独特の雰囲気を醸し出しています。2026年5月、その神田川にかかる美倉橋のたもとに、洗練されたデザインのオフィスビルが竣工しました。サンケイビルにおける初の木造中高層建築物「KiGi AKIHABARA」(キギ アキハバラ)です。熊谷組は住友林業(株)とのJVによる施工、さらに設計も手がけています。
「木造と鉄骨造のハイブリッド構造による9階建のオフィスビルです。敷地面積約170㎡という限られた立地のビルですが、この建物には熊谷組における最新の木造建築技術が結集されています」
このように話すのは、現場で作業所長を担った塩飽(しわく)陽光です。塩飽は、これまで建築分野ひと筋に経験を積んできた熟練の技術者。作業所長としても多様な建築物に携わってきました。その塩飽にとっても、木造建築物の施工は初めてのチャレンジです。熊谷組の技術者たちが培ってきた現場力に、本社の設計本部や技術研究所などの先進の知見が融合され、工事は進められました。
設計と施工が連携したチャレンジにより、CO2排出量を大幅に削減
この「KiGi AKIHABARA」では、サステナブルなオフィスを実現するために設計段階において構造的に大幅な変更を実施しています。その理由について、設計を統括した設計第3部プロジェクトグループ部長の浜田晶子は、次のように語ります。
「木造建築の大きな特徴として、CO2削減をはじめとする環境価値が挙げられます。その価値を最大限に追求しようとお客様と検討を重ね、熊谷組が持つ木造建築技術や電炉鋼材をフルに採用することにしたのです。その結果、CO2の排出量を、設計時の躯体検討で379t削減しています」
木は、生長する過程で空気中のCO2を取り込み炭素として固定します。木を建築に用いることで、炭素を長期間固定でき、施工時のCO2排出量も抑えることで地球温暖化防止に貢献するのです。熊谷組では、住友林業(株)との協業のもと、中大規模木造建築を推進しており、多様な技術を開発しています。
今回の「KiGi AKIHABARA」で初めて実用化した「ドレスウッド®」もその一つです。鉄骨部材を断熱材と木材の燃えしろ層で被覆し、優れた耐火性能を追求しつつ、木の温もりが感じられるスリムな柱を実現しています。また、新たに改良を加えた木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」(ラムダウッド・ツー)を、柱や梁に加えて、床にも採用。「λ-WOODⅡ®」は、接着剤を使用しないことで分別廃棄が可能です。産業廃棄物の削減や木材のリサイクルにも貢献し、サーキュラーエコノミーに寄与します。このほか、設計の自由度が高い「木ぐるみHB(有孔梁)」は、住友林業(株)の木質耐火技術。2階に設置した耐震ブレースは住友林業(株)との共同開発であり、意匠性にも配慮した「KS木質座屈拘束ブレース」を採用しています。

「たとえば、柱と梁の接合部における耐火性能の確保や、床の構造材に木材を用いたことによる遮音性の向上など、新技術の導入では細部にわたって検討を重ねました。現場と本社、技術研究所がワンチームになった体制があったからこそ実現できた建物だと思います」(浜田)

緻密な現場力が、効率的、そして安全な施工を支える
最新の木造建築技術の導入に加え、都市部ならではの立地条件により施工には高度な対応が求められました。塩飽は次のように話します。
「河川に隣接する土地のため、地盤をゆるめないように、以前の建築物の既存杭をあえて残置したまま、新築の杭を施工しています。また、木造と鉄骨造を組み合わせたハイブリッドな施工を限られた立地で実現するために、工法にも独自の工夫を取り入れています」

地上躯体の施工にあたっては、敷地を2つの工区に分け、中央の鉄骨部をそれぞれ先行して建てました。次に、両翼にあたる木造部分を順次組み上げ、その進捗に合わせて各階の梁や床を施工していきました。
「資材などの仮置き場所を十分に確保できないことも大きな課題でした。工事の進捗に合わせて各階に効率よく資材を配置するなどの工夫のほか、資材の搬入にあたっても1回の量を制限するなど、近隣の通行にも配慮して綿密な計画を立てました」(塩飽)
このような困難さを乗り越えるために力を発揮したのが、長年にわたり多様な現場で培ってきた経験と知識でした。塩飽は、工事全体を見据えて何度も施工計画を練り直しました。緻密な現場力が、効率的で、そして何よりも安全な施工を支えているのです。
現場の技術者たちがワンチームとなり、困難な施工に挑む
塩飽は、作業所のマネジメントについても、豊富な経験に裏打ちされた独自のスタイルを取り入れています。
「チームのワーク・ライフ・バランス向上を最優先課題と位置づけ、週末前の作業負荷を最小限に抑える緻密な工程管理を徹底しました。結果として、完全週休2日制(土日休み)を現場に定着させ、目標である『4週8閉所以上』の確実な達成を実現しました。」(塩飽)
今回の工事は住友林業(株)とのJVであり、同社の技術者が作業所のメンバーに加わって若手の取りまとめ役を担うなど、一体となって工事を進めました。また、ワンチームということでは、最前線を支える協力会社との連携も重要。各社の職長と全体の安全管理を徹底し、熊谷組ならではの総合力を発揮して工事に取り組みました。
木造建築の次代へ、現場で蓄積した知見を水平展開していく
このようにして竣工した「KiGi AKIHABARA」は、社会からも高い評価を集めています。国土交通省の「優良木造建築物等整備推進事業」に選定され、省エネ性能に優れた「ZEB Ready」認証も取得。特に前者は、より要求水準が高い「先導枠」に採択されました。
「KiGi AKIHABARA」がある外神田は、江戸時代から商業の街として栄えてきたエリア。近代的でありながらも木造ならではの風情を醸し出すその存在は、街の新しいランドマークになるはずです。設計・施工を統括した2人は次のように振り返ります。
「最新の木造建築技術を導入したため、施工でも前例のない場面が数多く、現場での創意工夫が求められました。自分のキャリアの中では規模こそ小さめの建物ですが、チャレンジングということでは一番思い入れの強いプロジェクトだと思います。この経験を活かして、また木造建築にチャレンジしたいですね」(塩飽)
「サステナブルな木造建築は、社会にとっても、そして熊谷組の未来にとってもとても重要な存在です。今回のプロジェクトで得た経験は、その取組みを加速していくための貴重な財産となるはず。今後は、熊谷組の中でこうした知見を蓄積し水平展開していく仕組みづくりを進めていきたいと考えています」(浜田)
日本の国土の約3分の2を占める森林は、自然を循環させる多機能インフラです。そして木造建築物も、これからの循環型社会において大切な役割を担っていきます。熊谷組は、木造建築技術を高めることで、サステナブルな社会づくりを目指します。

熊谷組と住友林業(株)がワンチームとなって
住友林業(株)担当者コメント
(住友林業(株)建築事業部 建築部 工事グループ 工事チーム)
係長 野中 祥伍
私は住友林業(株)に入社して以来、ずっと木造建築の現場に携わり、ゼネコンとのJVも何度か経験しています。このような経験も踏まえて今回の現場で感じたのは、熊谷組の組織力の強さです。たとえば安全管理の徹底など、社員だけでなく、協力会社の人たちも一緒になって取り組んでいく姿勢が印象的でした。また、設計部門の人たちも含めて若手が多く、活気のある現場でした。私は中堅的な立場だったので、こうした若手技術者と作業所長のつなぎ役となることを意識していました。
木造と鉄骨造のハイブリッド施工をはじめ、私にとっても初めて学ぶことがたくさんあり、自分自身の新たな成長につながったという実感があります。建物の施工において一から最後まで携わることができたのも初めての経験でした。一方、木造における耐火被覆や工程面での提案など、住友林業(株)が培ってきた木造技術などについては、積極的に発信するように心がけました。私は、木造高層建築に憧れて住友(株)林業に入社しました。いつの日か、そんな大規模プロジェクトにチャレンジするためにも、今回の現場はかけがえのない経験になったと思っています。

工事概要
| 物件名 | KiGi AKIHABARA(キギ アキハバラ) |
|---|---|
| 事業者 | (株)サンケイビル |
| 所在地 | 東京都千代田区東神田二丁目8-16 |
| 工期 | 2025年3月24日~2026年5月29日 |
| 構造/規模 | 鉄骨造一部木造/地上9階建 |
| 敷地面積/延床面積 | 168.48㎡/1072.04㎡ |
| 施工 | 熊谷組・住友林業特定建設工事共同企業体 |
| 用途 | 1階/飲食店、2~9階/事務所 |