- つくる
Dタワー豊洲新築工事
- 世界でも類を見ない複合施設を オリンピック開催を控えた東京の湾岸エリアに出現させる
- 東京湾岸エリアで進む建設プロジェクト
- 世界初と言える大規模トレーニング施設
- いかに困難な課題を乗り越えるか?
- 現場力は細部に宿る
- 東京オリンピック・パラリンピックの、その先に向けて
- 工事概要
世界でも類を見ない複合施設を オリンピック開催を控えた東京の湾岸エリアに出現させる
大規模な低酸素環境下トレーニング施設とホテル、商業という3つを融合させた「Dタワー豊洲」。
そのプロジェクトを推し進めるエネルギーは、技術力と人間力をかけあわせた、熊谷組ならではの現場力です。
東京湾岸エリアで進む建設プロジェクト
東京オリンピック・パラリンピックに向けて大きく変貌を遂げつつある東京湾岸エリア。なかでも発展が著しく注目を集めるのが豊洲地区です。
その豊洲駅から新交通ゆりかもめに乗って2つ目、市場前駅に差しかかると右手に洗練された建物が見えてきます。大和ハウス工業が開発する「Dタワー豊洲」です。
1階にレストランや店舗、2~3階にトレーニング施設、そして6~16階に330室のホテルが入る、地上17階・地下1階の高層複合ビル。熊谷組は、商業、トレーニング、ホテルという異なる現場を管理するために3つのチームを作り、日々打ち合わせをして綿密な連携を図っています。この建設プロジェクトで作業所長を務める山田正温は次のように話します。
「商業とトレーニング、ホテルという、それぞれ異なる3つの建物を同時に、しかも積み重ねて施工しているようなもので、それらを無理なくひとつの建物として融合させ施工するところに難しさがあります」
山田は、熊谷組の中でも先駆的な困難なプロジェクトを多く手がけてきたベテラン所長です。
「このDタワー豊洲では、“初”と言えるものが2つあります。ひとつは、東京オリンピック・パラリンピックの強化選手を見据えたトレーニング施設。これほど大規模な施設はおそらく世界でも類を見ないと思います。もうひとつは、建物の外壁ECP(押出成形セメント板)に高層専用工法を採用した最初の物件となりました」
世界初と言える大規模トレーニング施設
低酸素環境下トレーニングとは、標高2,000m以上の高地に相当する酸素濃度の環境で行うトレーニングのこと。短時間で効率よく持久力の向上などが見込めると言われ、マラソンや競泳などの競技で「高地トレーニング」が取り入れられています。しかし、海外の高地に遠征するには費用や時間などの負担が大きく、一部のトップアスリート向けの方法と考えられていました。最近では低地でも同様の環境を実現する施設が現れていますが、いずれも小規模で機能も限られます。
Dタワー豊洲では、この低酸素環境を2・3階合わせて総面積約2,500㎡という空間で実現します。しかも3階には、50mと25mの屋内競泳プールが設置されます。これほど大規模な低酸素環境下トレーニング施設を都市の中心部で実現するのは世界初の試みと言えます。
「地下に窒素ガス発生装置などを設置し、所定の酸素濃度にミキシングした低酸素空気(O2濃度14~17%)を作り、半密閉状態にある施設へと供給します。プールの水面上などさまざまな環境で均一な酸素濃度を実現しなければならず、試行錯誤しながら細かな改良を積み重ねています」
試行錯誤ということでは、これも初となるECPの施工でも同様です。実物の外壁と模型により、建具の形状や各部位の寸法を決め、外部から浸水した場合の排水ルートや実際の手順を確認し施工に反映しました。
いかに困難な課題を乗り越えるか?
オリンピック・パラリンピック関連の建設が相次ぐこの時期、国内の現場では資材や作業員の不足が深刻な課題になっています。特に豊洲地区は激戦区と呼ばれる地域であり、工程管理をいっそう難しくしています。
「通常の建設であれば、工程表を作成し、それに合わせて資材や作業員を手配していきます。ところが、現在の状況ではそれだけでは工程を進めることができません。モノやヒトの状況に合わせて柔軟に工程を組み立てていかなければならないのです」
たとえば外壁の施工は、下層部から上へと積み上げていくのが一般的です。しかし、山田は、不足がちな資材を効率よく利用するために、建物の外観上の特徴に目をつけ、6階から上のホテル部分から先に作業を進める工法を選択しました。
Dタワー豊洲の3つの施設の中でも、ホテルはもっとも天候の影響を受けやすい部分。その作業を迅速に進めるためには、まず外壁を施工して外からの雨風を防ぐことがポイントとなります。山田は、工程や資材などの状況を俯瞰して、ホテル階の外壁工事を優先することが最終的な効率化に結びつくと判断したのです。
「高い品質を大前提としながら、限られた条件の中でいかに効率よく柔軟に施工を進めていくか?」そんな困難なプロジェクトを統括する作業所長に求められる資質は、「知識の蓄積とその活用力」と山田は語ります。
現場力は細部に宿る
「今回のDタワー豊洲では、3階に大型プールや大浴場が入ることもあって、特に防水や外部からの止水を含め、総合的に気を配っています。気になる箇所については若手社員を連れて現場で直接工事の指示をしています」
山田が現場で話し合うのは社員ばかりではありません。職長から若手まで作業員にも気さくに声をかけています。現場での問題点の有無、資材や人手の調整などについても、作業員たちから仕入れるさりげない情報がヒントになることが多くあるためです。
「安全管理についても指示を出すというスタイルではなく、朝礼などで語りかけることで身近な問題として意識させるようにしています。この現場は多い時で500人を越える作業員が作業をします。現場で働く全員の目で安全や品質をチェックすることでプロジェクト全体の品質が高まるのです」
作業所長自ら気になる部位は納得できる形になるまで何度でも足を運ぶスタイルの理由を、山田は「自分は臆病だから」と言います。この言葉は「こだわり」と置き換えることができます。現場で若手社員と一緒になって考え、その技術や姿勢を伝える。作業員と同じ目線で安全を確認する。熊谷組の現場力はこのような細部にこそ宿っています。
東京オリンピック・パラリンピックの、その先に向けて
Dタワー豊洲は、東京駅から4km圏内にあり交通アクセスにも恵まれ、東京オリンピック・パラリンピックに向けてインバウンド需要が期待されています。また、晴海地区にある選手村と各競技場の中間に位置し、今後は各競技のトレーニングに利用されアスリートたちの活躍を支えることになります。
低酸素環境は、持久力ばかりでなく、基礎体力の向上といった機能でも注目され始めており、東京オリンピック・パラリンピック後は広く一般の人たちにも利用されることになると考えられています。同時に、このようなトレーニング施設とホテルを複合させた機能にも新しい可能性があると考えます。
「Dタワー豊洲では、2階のトレーニング施設の下階にレストランが入居する計画です。そのため、下階に対する防音・防振も重要となり、鍛えられた技術力は熊谷組にとってまた新しい蓄積となるはずです」
熊谷組は、これからも世界初の試みへ恐れず、独自の現場力を鍛え続けていきます。
工事概要
(仮称)Dタワー豊洲新築工事
事業主 | 大和ハウス工業株式会社 |
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発注者 | 豊洲6丁目4-1B開発特定目的会社 |
設計者 | 株式会社伊藤喜三郎建築研究所 |
施工者 | 熊谷組 |
所在地 | 東京都江東区豊洲6-4 |
工期 | 2017年10月5日~2019年9月30日 |
面積 | 構造:鉄骨造 規模:地上17階 地下1階 塔屋1階 用途:低酸素(高所トレーニング)・運動施設(HAT)・ホテル・店舗 高さ:70.75m 建築面積:3,753.65 m3 延べ床面積:27,605.99 m2 |