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ホテル コレクティブ
- 那覇市国際通りに本格的なフルスペックシティホテル誕生
- 台湾の大手セメント会社が沖縄に大型フルスペックホテルを開業
- 施工実績の少ないPC採用と厳しい施工環境への対応
- 通訳を介しての意見交換が作業進行にも影響
- 新たな観光拠点として国際通りに新風を
- 工事概要
那覇市国際通りに本格的なフルスペックシティホテル誕生
2020年1月6日、沖縄県那覇市の国際通りにソフトオープンした「ホテル コレクティブ」。
地上13階・地下1階、総客室数260室を有し、館内には大・中の宴会場をはじめレストランやバーなどの飲食店からスパ、フィットネス、さらに屋外プール、ウエディングチャペルまで完備した、本格的なフルスペックシティホテルです。
発注は、台湾の大手セメントメーカーである嘉新水泥グループを率いる張剛綸董事長が2013年に日本でのホテル事業を展開するにあたり沖縄に設立した嘉新琉球開発合同会社及び、2019年に新たに設立した嘉新琉球COLLECTIVE株式会社(松本龍之代表取締役)です。施工を担当した熊谷組は、多くの課題や困難にも見舞われましたが、予定通り完成度の高いホテルとして竣工しました。今回、施工を終えたばかりの現地をレポートします。
台湾の大手セメント会社が沖縄に大型フルスペックホテルを開業
2020年1月6日、沖縄県那覇市の観光スポットとしても人気の高い国際通りにソフトオープンした「ホテル コレクティブ」。ゆいレール(沖縄都市モノレール線)の県庁前駅から徒歩約7分、国際通りのほぼ中央部に位置しています。かつては娯楽の花形だった國映館という映画館の跡地に建設されました。
ホテルの構造は鉄骨造一部鉄筋コンクリート造で、その規模は敷地面積約4805㎡、延床面積約26588㎡、地下1階、地上13階、塔屋1階。またタワーパーキングに車108台、ほかホテル棟内と合わせて154台収納可能なスペースを確保しています。人と車で終日混み合う国際通りの妨げにならないよう、車寄せは正面エントランス部分とは反対側に設けているのも特徴です。
これだけのホテル事業を計画、 推進したのは、 台湾大手セメントメーカーである嘉新水泥グループを率いる張剛綸董事長です。氏は2013年、日本でのホテル事業を展開するにあたり沖縄に嘉新琉球開発合同会社を設立。そして2019年、嘉新琉球COLLECTIVE株式会社を設立し、台湾はもとより国内外のホテル業界で手腕を発揮してきた松本龍之を代表取締役に抜擢して、さらなる沖縄開発へと邁進しています。
受注に至った背景には、 熊谷組グループの台湾現地法人・華熊營造股扮有限公司が台湾で手がけたTAIPEI 101や陶朱隠園など、これまでの多くの実績が認められての事があります。そうしたことから、今回は華熊營造股分有限公司の協力を得ながら熊谷組が施工を行いました。
また建物の設計は、 ホテル建築にも定評のある浅井謙建築研究所株式会社が担当し、 室内のインテリアデザインは上海のStudioMHが請け負いました。
施工実績の少ないPC採用と厳しい施工環境への対応
施工に携わったCHC(ChiaHsin Cement : 嘉新水泥)那覇ホテル工事所の友広健工事所長と、同作業所の上石和広作業所長のお二人に話しを聞きました。
工事で最も苦労したのは「沖縄では施工実績の少ないPC(プレキャストコンクリート)カーテンウォールを外壁に採用したことですね」と口火を切ったのは友広工事長。
PCの配列(1068ピース)をデザイン上ランダムに配置したディテールが、当ホテルの外観の特徴でもあります。ところが肝心のPCを製作する工場が県内に無く、本土からの搬入ではまずコスト面で論外です。そこで専門の技術者を招き、試行錯誤を繰り返しながら地元沖縄での生産を実現化し、なんとか完成に至りました。
また、現場が国際通り(県道93号)に接道しているので、搬入計画には頭を痛めたといいます。沖縄での移動手段は主に車であることから、慢性的な交通渋滞が各所で発生します。特に国際通りは県内で最も多い交通量であり、それに加えて沖縄最大のショッピングストリートであることから人の流れも絶えることがありません。そうした状況下で工事用の大型車両を頻繁に、効率よく、かつ安全に出入りさせるのだから、その苦労の程は誰にでも容易に想像がつきます。
さらに周囲が住宅街だったことから、 騒音などに考慮して夜間作業を控えたこと、また地下掘削中に不発弾が発見され除去までに2か月近くを要したこと、それに、度重なる台風直撃の影響により工事及び海上輸送関係の資機材遅延等が多々発生したことなど、施工現場の環境に苦慮した点は枚挙にいとまがありません。
通訳を介しての意見交換が作業進行にも影響
友広工事所長は続けて「今回の仕事で難しかったといえば、発注者側との意見交換もその―つだった」と振り返りました。互いに共通の言語がないことがその最大の理由ですが、通訳を介す事で手間も時間もかかるし、作業に関わる専門的な説明や細かなニュアンスは伝わりにくいため、作業の進行にも影響を及ぼしてしまうのです。
上石作業所長もこれに同調し「内装を手がけたデザイナーが台湾系カナダ人で、さらに言語も環境も異なるのでかなり苦労した」といいます。
しかし、立ち上がりから協力体制にあった華熊營造股分有限公司が通訳としても、発注者側やインテリアデザイナー氏との間に入ったことで、起こり得たであろうトラブルも幾度となく回避することができました。主に通訳を担当した同社のエ務担当・温凱悪氏は、細かな事柄も誤解のないよう丁寧に、時に辛抱強く双方の意見を伝えました。そうしたことでコミュニケーションが円滑になり、無事に工事を進めることができたと、改めて両所長共に感謝の意を表しました。
内装の仕上げは、 和琉洋中融合(Collective)のデザインコンセプトに基づいて行いました。ホテル館内に入ると、まず天井の高さも相まって、ゆったりとした空間を創出した1階ロビーがお客様の心を和ませ、洗練された調度品やオブジェ、そして上石作業所長が内装では一番自慢だという2階へ続く階段とその頭上にあるシャンデリアの輝きに目がいきます。2階は300インチの大型LEDディスプレイなどが装備された大宴会場などと会議室があり、3階には中華レストラン、フィットネス、サウナ&バスルームなど、4階はブッフェ、夜の和・洋食やバーの他、国際通り唯一の屋外プールからウエディングチャペルまで完備されています。5階から13階までが客室で、総客室数260室・最大宿泊人数632名、さらに最上階には眺望のいいテラス付きのエグゼクティブラウンジがあり、まさに本格的なフルスペックシティホテルです。
新たな観光拠点として国際通りに新風を
「ホテルコレクティブ 」は、沖縄琉球および日本や周辺諸国の文化や伝統を融合させ、広く国内外から訪れる観光客に贅沢な癒やしの空間を提供します。そして、それはまた沖縄という国際色豊かな土地にあって、新たな観光拠点としても注目を集めるでしょう。
厳しいエ期や工事状況、さらにはコミュニケーションの難しさに疲弊した日々を乗り切って、無事に引き渡しを終えたばかりの両所長は口を揃えてこう話します。「これからは、当施工のように国際的な関係の中で仕事をしていくことが増えるでしょうね」。そして今回の経験を得たことで「そうなると言語も然りですが、互いの異なる国の環境を知ること、理解することに努めて、地道に作業を進めていくことが肝要だと思います」と話しました。
ホテルの完成を祝った祝賀会で、嘉新琉球COLLECTIVE株式会社の松本社長が「パーフェクトに近い理想のホテルが出来上がりました。日本トップクラスのホテルにしたいと思います」と意気込みを語りました。
「ホテル コレクティブ」は、いま2020年4月42日のグランドオー プンを目指し、スタッフ一同準備に余念がありません。これから観光シーズンを迎えて、初めてその真価は問われることになりますが、長い歴史を持つ国際通りにも新風を吹き込み、観光地のホテルとしての在り方にも一石を投じたのではないでしょうか。それはまた、熊谷組にとっても次世代への見本となる布石となったに違いありません。
工事概要
ホテル コレクティブ
所在地 | 沖縄県那覇市松尾2-5-7 |
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発注者 | 嘉新琉球COLLECTIVE株式会社 |
工期 | 2017年11月1日~2019年10月31日 |
設計者 | 浅井謙建築研究所株式会社 インテリアデザイン:Studio MH(上海) |
構造・規模 | S造一部RC造 地下1階 地上13階 塔屋1階 敷地面積:4,805㎡ 建築面積:2,934㎡ 延床面積:26,588㎡ |