気候変動における情報開示

気候変動に関する当社グループの考え方

熊谷組グループは事業戦略および「ESG取組方針」において、気候変動を含む環境問題の解決に向けた取組みが経営上の重要な課題であると位置づけています。
当社は事業活動を通じて気候変動対策を講じ、「脱炭素社会」への移行を推進することを「エコ・ファーストの約束」として公表し、2050年のカーボンニュートラル達成に向け様々な取組を進めています。

熊谷組は、2023年1月にTCFD提言への賛同を表明しており「ESG取組方針」および「中期経営計画(2024~2026年度)」において環境問題の解決に向けた取組みが経営上の重要な課題であると位置づけています。今般、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号(気候関連開示基準)を参考にした上で、コアコンテンツ(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)の開示を実施しています。

なお、環境の取組みに注力するため、これまでの「安全衛生品質環境方針」を2025年1月に「環境方針」として改定し、活動指針を掲げました。熊谷組は、社会から求められる建設サービス業の担い手として、環境法令および関連規制等を遵守することはもとより、地球的規模に及んでいる環境課題を解決しサステナブルな社会を実現すべく、事業活動において持てる技術を最大限に発揮して環境負荷の低減を図るとともに、より良い環境の創出に取り組んでいきます。

1.ガバナンス

1-1:ガバナンス体制図とサステナビリティ推進委員会の概要

サステナビリティ推進に関する熊谷組の組織体制図。取締役会から経営会議、サステナビリティ推進委員会へと続く階層構造と、人権方針専門部会・カーボンニュートラル対策部会の位置づけを示す。委員会の目的、開催回数、委員長・委員構成、事務局、活動内容(方針・制度検討、マテリアリティ管理、社外評価対応、統合報告書編集方針など)、情報開示媒体が表形式で記載されている。

1-2:ガバナンスの概要及び個別開示項目(1)

ガバナンスの概要及び監督機関・執行機関の役割

当社グループは、気候関連課題への対応を経営の重要課題の一つと認識しており、社長を議長とする経営会議で審議するほか、その補佐機関として「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。同委員会は各本部長で構成され、ESGの視点から環境目標の進捗や具体策等を検討しています。

取締役会は、これらの報告を受け、気候変動に関する識別されたリスク・機会の各項目に紐づく指標及び目標の進捗度合等を継続的に監督する体制を構築しております。

気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人

ガバナンスに関するスキルマトリクス:

コーポレートガバナンスコード上におけるESG・SDGsの項目で専門的経験・知見を有するメンバーを4名(2026年3月末)選任しています。

毎年開催する定期的な講義、研修、ステークホルダー等の意見交換を通じて、気候変動に関する社会の動向、当社グループへの期待、対応すべき課題に対する知見を深め、取締役会の監督にあたり必要な能力を確保していると考えております。

ガバナンスに対する気候関連のリスクと機会についての情報の頻度:

取締役会に対し、気候関連のリスク・機会に関する情報を次のア・イのプロセスで報告しています。

  1. サステナビリティ推進委員会からの情報提供:年5回
    カーボンニュートラル対策ワーキングからの情報提供:年2回
  2. 経営会議からの報告頻度:四半期に1回

気候変動関連のリスク・機会と企業の戦略、主要取引の決定におけるトレードオフの考え方

当社グループでは、経営会議において、気候関連のリスク・機会の特定、目標の設定及び進捗におけるモニタリングの評価や管理を実施しています。
また、経営会議により審議・決定された結果を、年4回の頻度で取締役会へ報告ています。取締役会では、経営会議により決定した事項の報告内容に基づき、リスクの低減と機会の拡大に関するバランス(トレードオフ)を考慮しながら、企業価値向上に向けた適切な監督を実施しています。

気候変動における関連業績指標と報酬制度の概要

ESG評価の達成度を役員報酬に反映させる制度を導入しています。具体的なパフォーマンス指標は次のとおりです。

中期経営計画に掲げる以下の非財務目標について、計画期間中の取組みを評価
(報酬構成全体のうち、ESG評価のパフォーマンス指標の占める割合:5%)

【ESG評価のパフォーマンス指標】

  • CO2排出量の削減活動(スコープ1+2、スコープ3の削減率)
  • 従業員エンゲージメントの向上(エンゲージメントレーティング)
  • 安全管理水準の向上(度数率)
  • 社内外の法令違反防止体制の構築

上記のうち、気候変動に関連した指標はCO2排出量の削減活動です。

気候関連のリスク・機会をモニタリング・管理・監督するためのガバナンスプロセス、統制及び手続における経営者の役割

  1. 委任されている執行機関の名称 : 経営会議、サステナビリティ推進委員会
  2. 委任されている執行機関のモニタリングプロセス : 気候関連の施策立案、リスク・機会の評価、目標設定及び進捗管理は、経営会議の補助機関である「サステナビリティ推進委員会」で検討し、経営会議で審議しています。取締役会は、四半期に1回の頻度でこれらの重要事項について報告を受け、監督・指導を実施しています。

気候関連のリスク・機会を監督するための統制、手続及びその他の内部機能との統合

気候関連のリスク・機会のモニタリング・管理・監督によって、事業活動に伴うリスクの正確な把握とその対応に努めており、社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。

気候関連のリスクと機会のモニタリングを実施する内部統制及び評価手続は、当社グループの「内部統制システム構築の基本方針」に基づき運用されています。

2.リスク管理

2-1:気候関連のリスクの識別等及びモニタリングを行うためのプロセス及び関連する方針

リスク管理におけるインプット等に関する情報

ア.使用しているデータの情報源 リスク・機会の特定:SASB産業別基準に基づく財務データ
気候変動・排出量:社内データ、各種規程、IEA・IPCCのシナリオ、GHGプロトコル
事業・対象範囲:関係省庁などが発表している情報等
イ.気候関連のリスクを識別するためのシナリオ分析に関する情報 「気候関連のシナリオ分析」に使用した各種イニシアティブの情報に基づいてシナリオ分析を実施しています。
ウ.気候関連のリスクの優先順位付けに関する情報 財務上重要であると判断した気候関連のリスクを開示しており、気候関連のリスクと気候関連以外のリスクとの間に個別の優先順位を付けていません。
エ.気候関連のリスクのモニタリングに関する情報 サステナビリティ推進委員会や各本部からの情報、社内外の環境の分析に基づき、「財務影響額」と「発生可能性」の両面から評価し、経営会議にて重要な項目を特定しています。
取締役会では、経営会議において少なくとも四半期に一度以上の頻度で審議・決定した内容について、報告を受けた上で、気候関連のリスクをモニタリングする体制を構築しています。
オ.気候関連のリスクをモニタリングするプロセス リスク管理におけるガバナンスプロセスは、過去の事業年度からの変更はありません。
カ.気候関連のリスクの影響の性質、発生可能性及び規模の評価方法に関する情報

識別されたリスク・機会の項目について財務影響額の閾値及び発生可能性を、リスクの性質及び財務的影響額の評価を実施しています。
財務影響額の閾値及び発生可能性については、次のとおりです。

財務影響額の閾値の定義
リスク・機会
100億円以上
10億円以上100億円未満
10億円以下
発生可能性の定義
頻度の定義 当該事業年度
及び短期
中期における
頻度
長期における
頻度
ほぼ確実
(99-100%)
毎年1回事象が必ず発生。
可能性が非常に高い
(90-100%)
1事業年度の期間において、記載されている発生可能性で1回事象が発生。 3年間で毎年1回の頻度でほぼ事象が発生。 9年間で毎年1回の頻度でほぼ事象が発生
可能性が高い
(66-100%)
3年間で2回以上の頻度で事象が発生。 9年間6回以上の頻度で毎年1回の頻度で事象が発生。
5割を超える確率
(50-100%)
3年間で毎年1回の頻度で50%以上の確率で事象が発生。 9年間で毎年1回の頻度で50%以上の確率で事象が発生。
可能性がおよそ5割
(33%-66%)
3年間で1回から2回の頻度で事象が発生。 9年間で約3回以上約6回未満の頻度で事象が発生。
可能性が低い
(0-33%)
3年間で1回未満の頻度で事象が発生。 9年間で約3回未満の頻度で事象が発生。
可能性が非常に低い
(0-10%)
3年間で記載の確率の頻度で事象が発生。 9年間で約0回以上約1回以下の頻度で事象が発生。
可能性が並外れて低い
(0-1%)
9年間でほぼ1度も事象が発生しない。

3.戦略

3-1:戦略の概要及び開示に対する考え方

熊谷組が気候変動に関連するリスクと機会を特定し、事業戦略やレジリエンス評価に反映するまでの流れを示すフローチャート。シナリオ分析による環境分析、重要なリスク・機会の確定、ビジネスモデルとバリューチェーンへの影響整理、気候適応・緩和を踏まえた戦略策定、重要な不確実性を含むレジリエンス評価の情報開示までの5ステップが番号付きで示されている。

3-2:戦略と指標及び目標の関係性

熊谷組の気候関連情報開示に関する戦略項目と指標・目標を示す表。左側に気候変動・人的資本・企業行動のリスク・機会が並び、右側には温室効果ガス排出、移行リスク、物理的リスク、機会、資本投下、内部炭素価格、報酬などの産業横断的指標が記載されている。さらに、産業別指標の開示要求や、温室効果ガス排出目標を含む戦略的目標の設定・進捗管理に関する要件が整理されている。

3-3:気候変動における識別されたリスク・機会(1)

 当社グループでは、気候変動における1.5℃から2℃及び4℃のシナリオ分析に基づき、SSBJ開示基準 S2号(気候変動)を参考にした上で、短期・中期・長期のリスク・機会の抽出及び財務インパクトに対して、分析・開示を実施しております。
 (1)短期・中期・長期の識別されたリスク・機会及び財務インパクトの詳細
 1.5℃から2℃及び4℃シナリオに基づく、当社グループの識別されたリスク・機会と財務的影響額等の概要は、以下のとおりです。

要因 内容 バリューチェーン 発生
可能性
2025
年度
短期 中期
3年
長期
9年
移行リスク 政策・法規制
  • GHG排出に関する
    規制の強化
  • 社会からのカーボンニュートラルへの要請拡大
カーボンニュートラル達成のための移行コストと実行の難しさ 直接操業 可能性が高い
(66-100%)
-
物理リスク 急性
  • 自然災害の頻発・激甚化
台風・豪雨等の自然災害による建設現場や現場従業員の被災、サプライチェーンの寸断に起因する工事遅延などの対応コストの増加 直接操業 可能性が
非常に低い
(0-10%)
- 1.5℃シナリオ
約0.16億円

4℃シナリオ
約1.37億円
1.5℃シナリオ
約0.32億円

4℃シナリオ
約2.74億円
1.5℃シナリオ
約0.95億円

4℃シナリオ
約8.21億円
自然災害による保有および投資資産の価値減少、復旧費用の発生 - 約0.21億円 約0.61億円 約1.81億円
慢性
  • 降雨、気象パターンの変化
  • 平均気温の上昇
  • 海面上昇の進行
建設現場における作業効率低下に起因する労務コストの増加 上流
直接操業
可能性が高い
(66-100%)
- - 労務費22%の場合
約80億円

労務費30%の場合
約164億円
労務費22%の場合
約240億円

労務費30%の場合
約493億円
機会 エネルギー源
  • 再生可能エネルギー
    関連事業の需要増加
再生可能エネルギー関連の投資増加に起因する、建設需要・売上の増加 上流
直接操業
下流
可能性が高い
(66-100%)
- -
製品・サービス
  • 社会からのカーボン
    ニュートラルへの要請拡大
  • 中大規模木造建築の需要増加
  • 省エネルギー建築物の需要増加
GHG排出が少ないCO2の固定化も可能な中大規模木造建築物の売上増加 上流
直接操業
下流
可能性が高い
(66-100%)
-
ZEB等のエネルギー効率が高い建築物やBEI値が低い環境配慮型建築物の売上増加 上流
直接操業
下流
ほぼ確実
(99-100%)
-
市場
  • 国土強靱化市場の拡大
  • 木造建築市場の拡大
  • 木材輸出国での森林資源の減少、国産木材市場の拡大
  • 不動産価値の構成要素の変化
  • ESG投資、ESGファイナンス
国土強靭化計画による防災・減災・復旧工事の売上機会の増加 上流
直接操業
可能性が非常に高い
(90-100%)
- -
気候変動への対応の取組み促進によりESG投資の増加 上流
直接操業
下流
可能性が
およそ5割
(33%-66%)
- - 約119.4億円

約238.8億円
-

3-4:気候関連のリスク及び機会における時間軸

当社グループでは、気候関連のリスク及び機会における時間軸(時間軸の定義を含む)を次のように定義しています。

時間軸 期間 定義
短期 2026年度 当連結会計年度の翌連結会計年度
中期 2027年度から2029年度 現在の中期経営計画の長さに整合
長期 2027年度から2035年度(※) 長期構想の事業計画に整合
  • (注)中期の時間軸は、長期の時間軸に包含している

3-5:ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響

当社グループは、気候変動が各事業のビジネス・モデル、バリュー・チェーンに与える重大な影響について、以下のように認識しています。

項目 ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
購買活動
  • 建設資材や施工時のGHG排出量への賦課金、排出権取引制度導入による調達コストの増加
製造
  • 建設現場における夏季の労働生産性の低下
  • 台風や豪雨による建設現場の一時停止等
調達活動・出荷活動
  • サプライチェーン上の輸送コストの増加
  • 建築物の設計から竣工までの資材・燃料価格高騰
  • 台風や豪雨によるサプライチェーン寸断による資材調達等の遅延の発生
販売・サービス活動
  • 再生可能エネルギー関連の投資増加に起因する売上増加
  • 中大規模木造建築の売上増加
  • ZEB等のエネルギー効率が高い建築物やBEI値が低い環境配慮型建築物の売上増加
  • 国土強靱計画による防災・減災・復旧対策事業の売上増加
ビジネス・モデル、バリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会が集中している部分
事業 国内土木事業・国内建築事業、海外建設事業、その他の事業
地理的地域 日本、台湾
施設・資産の種類 自社における所有資産(固定資産)、建設現場
調達・販売及び流通チャネル バリュー・チェーン全体(直接操業及び上流・下流)

3-6:気候移行計画の概要

当社グループは、カーボンニュートラルの実現を事業戦略の核に据え、環境配慮型技術の開発・普及に取り組んでいます。 中期経営計画(2024~2026年度)では、再生可能エネルギー事業、中大規模木造建築、防災・減災関連を重点成長領域として特定しております。
これら戦略分野の目標達成に向け、執行体制を強化し、研究開発及び人財への投資を拡充することで、経営基盤の更なる充実を図っております。
また、今後における具体的な計画については、以下のとおりです

移行計画の各項目 内容
移行計画が依拠する主要な前提と依存関係の概要 気候変動における1.5℃から2℃および4℃のシナリオ分析に基づき、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号等を参考にし、移行計画に対して、将来の市場動向、規制の変更、技術の進歩について次のように予測をしています。
将来の市場動向 IEAのWEO2025が公表している日本のマクロ経済におけるGDP成長率は、2024年~2035年:年率0.6%の成長が見込まれており、こちらを前提としています。
規制の変更 2030年までに予測されている化石燃料賦課金約1,000円/t-CO2を踏まえ、こくないにおける炭素税の本格導入や地球温暖化対策税の大幅な増税を想定しています。
技術の進歩 クリーンエネルギーの使用割合増加と化石燃料の低下を想定。
1:戦略の整合性 2035年度までに温室効果ガスの削減目標達成するために、以下の活動に取り組んでいます。
  1. スコープ1+2:再エネ電気の導入、非化石証書の導入、バイオ燃料の導入、脱炭素建機の導入
  2. スコープ3:事業リスクの軽減や建築事業におけるサプライチェーンと連携した調達から廃棄までのカテゴリー1における削減施策の遂行
  3. 「産業横断的指標カテゴリー」の指標と目標に基づく開示
2:計画の前提 気候変動における1.5℃から2℃、4℃シナリオのリスク・機会の抽出、リスクの低減・機会の拡大を目的としたアクションプラン、移行計画をサポートする財務計画・予算および関連する投資計画の実施
3:リスク項目に対する影響の低減・優先順位の高い機会項目
  1. カーボンニュートラル達成のための移行コストと実行の難しさ
  2. 再生可能エネルギー関連の投資増加に起因する建設需要の拡大による売上増加
  3. GHG排出が少ないCO2の固定化も可能な中大規模木造建築物の売上増加
  4. ZEB等のエネルギー効率が高い建築物やBEI値が低い環境配慮型建築物の売上増加
  5. 国土強靭化計画による防災・減災・復旧事業の売上機会の増加
4:アクションプラン 移行計画の中期的なアクションプランは、リスク項目に対する影響額の軽減、優先順位の高い機会の拡大を目的としています。
カーボンニュートラル達成のための主なコストと対応策として、(1)炭素排出エネルギーから水素化バイオ燃料へのエネルギー構成の転換・GHG削減に対する取組み、(2)GHG削減に関する技術開発促進による事業拡大(機会項目)などがあります。
気候レジリエンスの対応策及び「5:財務計画」による投資の実行を計画しています。
5:財務計画 中期までの取組みとして、中期経営計画期間(2024~2026年度)中に再生可能エネルギー事業に100億円の投資を行う予定です。
6:シナリオ分析 1.5℃から2℃シナリオ及び4℃シナリオにおいて複数のシナリオを定め、リスク・機会の分析結果に基づいて、短期から長期の時間軸を定めています。

3-7:気候レジリエンス

シナリオ分析

当社グループでは、気候変動リスクへの対応を重要課題と位置付け、気候変動に関するリスク、機会を特定・評価し、事業活動に与える中長期的はインパクトを把握するためシナリオ分析を実施しています。

関連するシナリオ 各シナリオの概要
1.5℃シナリオから2℃未満シナリオ 移行シナリオ
  1. NZE(Net Zero Emissions by 2050 scenario):50%の確率で1.5℃未満に抑制。 2050年までに世界全体で温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにする、最も厳格な移行規制を想定したシナリオ
  2. APS(Announced Pledges Scenario):50%の確率で1.7℃に抑制、世界各国が表明している国別の削減公約やネットゼロ目標が、期限通りにすべて達成されると仮定したシナリオ
物理シナリオ
  1. RCP1.9/SSP1-1.9: 1.0〜1.8℃上昇(平均1.4℃)。
    パリ協定の「1.5℃目標」達成に重点を置いた、最も意欲的な持続可能シナリオ
  2. RCP2.6/SSP1-2.6: 1.3〜2.4℃上昇(平均1.8℃)
    21世紀末までに気温上昇を2℃未満に抑えることを目指す地球温暖化対策シナリオ
4℃シナリオ 移行シナリオ STEPS(Stated Policies Scenario): 50%の確率で2.4℃上昇。世界各国が現在すでに実施している政策や、公表済みの具体的な施策のみが継続すると仮定した、現状趨勢シナリオ
物理シナリオ
  1. IPCC RCP8.5:基準年(1986〜2005年)比 2.6〜4.8℃上昇 (平均3.7℃)。 IPCC第5次評価報告書(AR5)における最高位の排出シナリオ。有効な温暖化対策をとらなかった場合の推移を想定。
  2. SSP5-8.5: 3.3〜5.7℃上昇 (平均4.4℃)
    産業革命前比IPCC第6次評価報告書(AR6)における最高位の排出シナリオ。化石燃料依存型の経済発展が続いた最悪のケースを想定。

シナリオ分析に使用した時間軸

時間軸 期間と概要
短期・中期
  • 2030年まで(現在の経営計画や事業戦略の影響を反映する期間)
長期
  • 2040年~2050年まで(脱炭素社会への移行など、長期的なリスク・機会を評価する期間)

シナリオ分析に使用した事業の範囲

事業 対象地域
国内土木事業・国内建築事業・その他の事業 日本
海外建設事業 台湾

事業法域における気候関連の政策

シナリオ 期間と概要
The Current Policies Scenario:
現行政策シナリオ
日本の具体的な省エネ規制の強化内容
  • 2025年〜2027年の「トップランナー制度」の見直しに伴い、エアコン、給湯器、窓ガラス、テレビに対して、「最低エネルギー性能基準(MEPS)」が設定される。
  • 2022年に改正された「建築物省エネ法」に基づき、今後はすべての新築の建物に対して、新しく改定された省エネ基準を満たすことが完全に義務化される。
The Stated Policies Scenario:
表明された政策シナリオ
日本が表明している普及促進策
  • 「住宅省エネキャンペーン」(2024年)の一環として、断熱改修工事及び高効率給湯器に対する補助金が導入される。
  • 家電製品及び建築物に関する既存の効率規制の延長及び強化される。

気候レジリエンスの評価

気候関連のシナリオ分析の結果が企業の戦略及びビジネス・モデルに対する評価へ与える影響とその対応
識別されたリスク・機会のビジネス・モデルへの影響:

2025年度、短期から長期における財務影響を踏まえ、気候変動のリスクの軽減、機会の拡大に向けた対応策を気候移行計画等に基づき実施。

気候変動における識別されたリスク・機会の項目についての再評価:

定性・定量の両面から実施する予定です。

気候レジリエンスの評価において考慮された重大な不確実性の領域
気候レジリエンス評価における重大な不確実性の領域:
日本および台湾
気候変動に対して、短期、中期及び長期にわたり戦略及びビジネス・モデルを調整する能力
気候関連のシナリオ分析において識別された影響に対応するための、既存の金融資源の利用可能性及び柔軟性:

リスク・機会の項目についての再評価を定性・定量の両面から毎年実施し、気候変動のリスクの軽減、機会の拡大に向けた投資計画及び対応策を気候移行計画と合わせて変更していきます。
レジリエンス対応策と機会の拡大に向けたアクションプランの概要については、前項「戦略及び意思決定に与える影響」に記載しています。

自社グループにおける既存の資産を再配置、別の目的へ再利用、性能向上又は廃棄する企業の能力:

再評価の結果に基づき、顕在化したリスクに対する対応策として、既存の固定資産等の再配置、除却、廃棄等を実施する可能性があります。(※)

  • 2025年度、短期においては、顕在化したリスクに対する対応策として、既存の固定資産等の再配置、除却、廃棄等を実施する計画はありません。
気候関連の緩和・適応・機会に対する投資とその影響:

再評価の結果に基づき、気候レジリエンス強化に向けた投資や計画の柔軟な見直しを継続していく。こうした取り組みを通じて、リスクに伴う財務的影響の最小化と、機会獲得による財務的効果の最大化が、今後段階的に顕在化していくものと見込んでいます。

4.指標と目標

当社グループでは、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号を参考にして、気候変動における指標と目標の設定・開示を実施しています。

産業横断別
開示指標
(a)GHG排出、(b)気候関連の移行リスク、(c)気候関連の物理リスク、(d)気候関連の機会、(e)資本投下、(f)内部炭素価格、(g)報酬

(1)気候関連の指標

温室効果ガス排出の測定方法

  • スコープ1
    主に工事現場の重機で使用する軽油、都市ガス、プロパンガス、ガソリン、灯油等による直接排出
  • スコープ2
    他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴う間接排出
  • スコープ3
    スコープ1、2以外の事業活動(資材調達、建造物の運用、排気等)に関連するサプライチェーン
    全体の排出

排出量は、次の基準に基づき算出している。

拠点 排出量の算定に使用する排出係数
国内拠点
  • 温対法の規定に基づき、環境省公表の最新の排出係数を使用
  • GHGプロトコルに基づき、年間の活動量に業界団体が公表している最新の係数を使用
海外拠点
  • GHGプロトコルに基づき、原則として各国の固有係数を使用
  • 把握が困難な場合はIEAの国別係数を使用

【GHGプロトコル(2004年)に基づく温室効果ガス排出の測定の概要】

当社グループでは、「GHGプロトコル(2004年)」に基づき、以下の温室効果ガス排出量の測定アプローチとして、財務支配力アプローチを選択しております。

【温室効果ガス排出の絶対総量について】
当社グループのスコープ1からスコープ3の排出量は、以下のページに開示しています。

脱炭素の取組み 環境データ

(2)内部炭素価格

  • 内部炭素価格の適用方法
    J-クレジット・非化石証書等の取引価格からGX-ETS1トン当たりのクレジットの想定価格を踏まえ、内部炭素価格を決定しています。
  • 内部炭素価格
    温室効果ガス排出のメートル・トン当たりの価格:約4,000円から10,000円程度

(3)報酬

  • 気候関連の評価項目を役員報酬に組み込む方法
    具体的な気候変動に関連するパフォーマンス指標と報酬制度については、ガバナンスの項目に記載しています。
  • 役員報酬総額に占める気候関連評価の割合
    役員報酬のうち、ESG関連の評価項目の割合は5%で、気候関連の評価項目は、当該ESG関連の評価項目の一部に含まれています。

(4)産業別指標

  • 気候関連の各リスク・機会項目のモニタリングに使用している指標
    ISSB「産業別ガイダンス」の開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮した結果、以下の指標を気候関連の各リスク・機会項目のモニタリングに使用している。
    • スコープ1・2の削減率
    • スコープ3の削減率

(5)その他気候関連指標

  • 企業の見通しに影響を与えると見込まれる気候関連のリスク及び機会を測定し、モニタリングに使用している指標
    識別した気候関連のリスク又は機会と関連するパフォーマンスについては「戦略」のページに記載しています。

(6)気候関連目標(気候関連の目標の特定)

目標を設定するために用いる指標 ISSBが公表する「産業別ガイダンス」に記述されている開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮して設定しています。以下の指標を気候関連の各リスク・機会項目のモニタリングに使用している。
  • スコープ1・2の削減率
  • スコープ3の削減率
指標に対して設定している定量的目標
  • スコープ1・2の削減目標:42%(基準年度:2019年、達成目標:2029年)
  • スコープ3の削減目標:25%(基準年度:2019年、達成目標:2029年)
指標に対する目標の目的 パリ協定を始めとする国際的方針、日本のNDC(国が決定する貢献)や気候変動に関連する法規制(省エネ法や地球温暖化対策推進法等)や様々な政策を支持し、気候変動による事業環境の変化への適応を更なる成長機会と捉えた上で、指標に対する目標を定めています。
指標に対する目標が適用される企業の部分(バウンダリー) 事業:当社及び連結子会社の国内土木事業、国内建築事業、海外事業、その他の事業
地域:日本、台湾
指標に対する目標が適用される基準年度から目標年度までの期間 2019年度から2029年度
  • 指標に対する定量的目標は、絶対量目標として定義しています。
  • パリ協定第2条における「世界全体の平均気温を工業化以前に比べ2℃高い水準を十分に下回るものに抑えること、1.5℃高い水準までに制限するための努力を継続する」という記載を気候変動の指標に対する目標に反映しています。
Sustainability

サステナビリティ