- プレスリリース
トンネル発破パターンをAIで全自動判定するシステムを開発「リアルタイム発破パターン自動判定システム(RAPID-BLAST)」
2026年08月28日
先に発表した「TufmoS(タフモス)」「MZ切羽AI判定」「トンネル発破AI支援システム」の要素技術を統合~
株式会社熊谷組(代表取締役社長 上田 真)は、山岳トンネル工事の発破掘削において、切羽の撮影・3次元モデル化から地山評価、最適な発破パターンの判定までを全自動・リアルタイムで行う「リアルタイム発破パターン自動判定システム(RAPID-BLAST(ラピッドブラスト):Real-time Automated Pattern Identification and Decision for BLASTing)」を開発しました。当社がさきに発表した「重機搭載カメラによる自動3次元モデル作成システム TufmoS(タフモス)-HMC」「マルチモーダル・ゼロショット切羽AI判定(MZ切羽AI判定)」「トンネル発破AI支援システム」という3つの要素技術を統合したものです。
切羽ごとに最適な発破を実現し、現場の判断を「より早く・より正確に・より安全に」行えることが期待されます。
1. 開発背景
発破パターンとは、切羽ごとに決め直すべきもの
発破パターンとは、切羽のどこに、何本、穴をあけ、それぞれにどれだけ火薬を入れるかという設計です。硬い岩なら火薬を多く、もろい岩なら少なく。とくに、仕上がり面をつくる外周孔の配置と火薬量が、掘り上がりの形を大きく左右します。
岩の性質は、数メートル進むだけで変わることがあります。したがって発破パターンは、切羽ごとに見直すべきものです。
火薬が多すぎると何が起きるか
火薬が多すぎると、設計した断面より外側まで岩が掘れてしまいます。これを余掘りといいます。余掘りは「掘りすぎた」だけでは終わりません。
・余分に掘れてしまった岩を、運び出して処分しなければならない
・空いてしまった分は、吹付けコンクリートで埋め戻さなければならない
・その運搬と材料の分だけ、費用とCO2排出量、そして重金属含有土などの処理量が増える
つまり余掘りを抑えることは、コスト・工期・環境負荷のすべてに効いてきます。
それでも切羽ごとの最適化が難しかった理由
最大の理由は時間です。切羽を観察し、地山を評価し、発破パターンを検討し直す――これを掘削サイクルの限られた合間に人手で行うのは大きな負担でした。しかも、切羽を撮影・計測するには掘削作業を止める必要があり、止めればサイクルが延びます。
加えて、切羽観察も発破パターンの選定も熟練技術者の経験と勘に依存する部分が大きく、(1)判断の主観性・個人差、(2)技術者の高齢化と人材不足に伴う技術伝承の困難さ、という課題も抱えていました。
2. 概要 ― 「止めずに終わらせる」ためのしくみ
本システムの要は、判定を作業のすきまに押し込むのではなく、もともと動いている作業の中に溶け込ませたことです。処理の流れは以下のとおりです(図1)。

(1)切羽の自動撮影・3次元モデル化(TufmoS-HMC)― 撮影のために作業を止めない
切羽を3次元で記録するには、これまで人が機材を持って切羽の前に立つ必要があり、その間、掘削作業は止まっていました。
本システムでは、バックホウやホイールローダーなど、ズリ出しに使う建設重機そのものに360度カメラを搭載しました。重機はもともとズリ出しのために切羽と後方を往復します。その動きをそのまま撮影に使うため、撮影のための時間はかかりません(撮影時間実質ゼロ)。
さらに、得られた3次元モデルから、前回の発破でどれだけ余掘りが出たかを定量的に評価します。設計した断面の形と、実際に掘れた形を重ね合わせれば、その差が余掘り量です。
(2)AIによる切羽評価(MZ切羽AI判定)※第1弾で発表済み
ズリ出し中に取得した切羽写真を生成AI(大規模言語モデル)が解析し、地山評価点・地山等級を即時に判定します。削孔データやオノマトペ(作業員の感覚情報)、3D Gaussian Splattingによる不連続面の走向・傾斜解析も統合し、多角的な地山評価を実現します(特許出願中)。
AIの判定結果には技術者の知見が介在するヒューマン・イン・ザ・ループ型のワークフローを採用し、AIと人間が協働して判断品質と最前線の安全を担保します。
(3)発破パターンの判定(トンネル発破AI支援システム)
AIは、地山評価の結果と、目標とする余掘り量から、次の発破パターンを算出します。硬いと判定されれば火薬量を増やし外周孔の間隔を詰める、もろければその逆にする――といった調整を、切羽ごとに行い、火薬量・穿孔本数・外周孔の配置として提示します(図2)。
そして、実際に発破したあとにもう一度切羽を撮影すれば、狙いどおりの形に掘れたかが分かります。この施工結果をシステムに戻すことで、AIはその現場の岩のクセを学び、発破パターンの精度が上がっていきます。

3. 特長
(1)全自動・リアルタイム ― なぜサイクルが延びないのか
撮影から発破パターン予測までを自動化し、ズリ出しおよび支保作業中に次切羽の発破設計が完了します。次の削孔を始める時点で、「どこに、何本、どれだけ」がすでに決まっているため、作業を待たせることがありません。判定のために新たな時間を確保する必要がなく、掘削サイクルを止めずに済みます(図3)。

(2)要素技術を統合した一連の自動化システム
「TufmoS-HMCによる自動撮影・3次元モデル化」「MZ切羽AI判定による地山評価」「トンネル発破AI支援システムによる発破パターン決定」という個別に開発した3つの要素技術を、一つの系として連結しました。地山評価で完結していた従来の枠を超え、発破設計という施工上の意思決定まで一気通貫で自動化する点は、RAPID-BLASTならではの特長です。
(3)発破パターンそのものを自動出力
地山評価の結果と設定余掘り量から、AIが火薬量・穿孔本数・外周孔の配置までを自動算出し、次の発破にそのまま用いる具体的な発破パターンとして提示します。「地山を評価して終わり」ではなく、その先の意思決定そのものを自動化する点は、既存の切羽AI判定システムには見られない特長です。
(4)切羽近傍への作業員接近が不要
重機搭載カメラによる自動撮影から発破パターン決定までの全工程を通じて、技術者が切羽近傍に立ち入って計測・観察を行う必要がありません。落石・肌落ちなどのリスクにさらされる時間を大幅に削減します。
(5)施工結果のフィードバックによる継続的最適化
実際の発破後に得られる余掘り量等の施工結果をシステムにフィードバックし、AIが発破パターンの精度を継続的に学習・向上させます。使い続けるほど、その現場の地質に合った発破に近づいていきます。
従来の方法と本システムの対比を表1に示します。

4. 効果
切羽ごとの最適な発破パターンの選定により、余掘り量の低減と施工品質の向上が期待されます。余掘りが減れば、運び出すズリが減って運搬にともなうCO2が減り、埋め戻す吹付けコンクリートも減り、重金属含有土が発生する現場では処理量そのものが減ります。
また、どの切羽にどのパターンを用い、その結果どうであったかがデータとして残ります。これまで個人の経験として蓄えられてきたものが、現場の資産として引き継げるようになり、経験の浅い技術者の早期育成が見込まれます。
5. 今後の展望
現在、地質や断面積の異なる複数のトンネル現場で検証を進めており、熟練技術者の判断との比較によりシステムの有効性を確認しています。今後は、複数断面の3次元モデルを時系列で解析し、切羽前方の地山状態を予測する機能などの拡張を図り、将来的なトンネル掘削作業の自動化につなげていく予定です。
お問い合わせ先
本リリースについてのお問い合わせ先
株式会社熊谷組 経営戦略本部広報部
電話:03-3235-8155
技術に関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 土木事業本部土木技術統括部トンネル技術部・地質技術部
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