JAXAと共同研究契約を締結

2019年01月30日

「林業機械システムの自動化による省力化の研究(林業機械システムの月面での運用)」

株式会社熊谷組(東京都新宿区、取締役社長 櫻野 泰則)と住友林業株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 市川 晃)、光洋機械産業株式会社(大阪市中央区、代表取締役社長 直川 雅俊)、株式会社加藤製作所(東京都品川区、取締役社長 加藤 公康)、(以下、「当グループ」)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」)と「林業機械システムの自動化による省力化の研究(林業機械システムの月面での運用)」の共同研究契約を締結しました。
この共同研究は、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の研究提案募集で採択されたものです。

1. 共同研究の概要

「宇宙探査イノベーションハブ」は宇宙探査に特化、限定した開発ではなく、将来的に研究成果を宇宙探査へ応用することと、地上での事業化など実現性のある技術の創出を目的としています。

このたびの共同研究では、住友林業の「林業技術」と熊谷組の「無人化施工技術」、光洋機械産業の「プラント・仮設のエンジニアリング」ならびに加藤製作所の「ホイールクレーン国内トップシェアのウインチ技術」を融合することで、架線集材システムの無人化・自動化を図り、地上では林業分野での事業化を目指します。また月面での構造物や資材の運搬、設置等に有用な運搬システムを研究・開発します。

月面の架線集材システムの運搬イメージ

2. 共同研究の内容

(1)「架線集材」とは
架線集材とは、ロープウェイのように空中に仮設のワイヤーロープを張り、切り出した木材を安全に吊るして集積場まで運搬する方法です。
車両による集材(路網集材)に比べ、作業路を造る必要がないことや急峻な山の地形に合わせてシステムを構築できることから、自然環境にもやさしく、汎用性の高い集材システムです。また、構造が単純で故障が少なく、安定した運用ができます。

(2)「無人化施工技術」とは
無人化施工技術とは人が立ち入ることが危険な災害地などで、安全な場所から無人の建設機械を遠隔操作で動かし、工事従事者の安全を確保しながら工事を進める技術です。
近年では支援システムの開発によって、自動化運転など作業効率の向上が進められています。

(3)架線集材の無人化・自動化について
①研究の背景
架線集材は複雑な地形が多い日本の山林に適している反面、作業者の高齢化や後継者不足という課題を抱えています。また、既存の架線集材では生産性の向上にも限界があり、効率的な架線集材システムの開発が望まれています。そこで架線集材に無人化施工技術を取り入れることで、集材の省力化・自動化を行い、作業環境の改善と生産性の向上を図ります。

②研究の主な内容
現在、架線集材で使用されるウインチの動力はエンジンによる手動運転です。今回の研究ではこれに無人化施工技術を取り入れ、動力の電動化を図ることで遠隔操作を可能にし、さらに自動運転の実現を目指します。
    
③架線集材システムの月面での活用
複雑な地形に加え過酷な環境下にある月面での作業では、無人化・自動化による架線集材システムの利点を活かすことが可能です。特に地球上と異なり熱交換が困難な月面では、動力源が固定され吊り荷の移動が容易な架線集材システムを活用することで、繰り返し行われる運搬作業を安定して実施することができます。
JAXAとの共同研究では、こうした架線集材システムの無人化・自動化の利点を活かし、月面でも構造物や資材の運搬、設置等に有用な運搬システムを開発します。

   
【架線集材システムを月面で用いる主な利点】
・複雑な地形や広いエリアにも対応できること
・構造が単純で故障が少なく、修理も難しくないこと
・化石燃料を使用せず、動力源も固定された場所にあること
・過酷で危険な作業場所から離れ、安全を確保しながら操作できること

3. 林業と宇宙探査における課題解決への共通の取り組み

この共同研究は、架線集材システムの無人化・自動化を通じて、林業と宇宙探査に共通する課題の解決に取り組むものです。

宇宙探査は地球上とは異なる特殊な環境であるため、作業従事者の安全を確保するとともに、省力化による作業効率の向上が大きな課題のひとつです。さらに、月面有人拠点のような定点活動が行われるとすれば、固定式の広域運搬システムには利点があります。

日本の森林は、戦後に植林された人工林の多くが伐採期を迎えており、山林保全のためにはこれを循環利用し、間伐等の森林整備が適切に行われる必要があります。しかし、我が国の林業は、森林施業(注1)の集約化や路網(注2)の整備、効率的な作業システムの導入や運用の立ち遅れ等により、生産性が低い状況にあるとともに、林業従事者の高齢化・人手不足などの多くの課題があり、この取り組みを解決の一助としていきます。


(注1)森林を育成するために行う造林、保育、伐採等の一連の森林に対する人為的行為を実施すること。
(注2)造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うための施設で森林内にある公道や林道、作業道の総称、またそれらを組み合わせたもの。


本共同研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)イノベーションハブ構築支援事業の支援を受けたJAXA宇宙探査イノベーションハブとの共同研究です。
 
 

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