熊谷組グループの価値の最大化を図るために互いに連携し、高め合い、未来へと進んでいく。
熊谷組グループでは、グループ各社が自らの力を磨くとともに、しなやかな連携によって相乗的な価値の創造を目指しています。また、グループとして持続的な成長を果たしていくためには、経営インフラを共有化し、ガバナンスを充実させることが欠かせません。昨年に引き続き、グループ会社8社の社長が集い、熊谷組グループの目指すべき姿を語り合いました。
参加者(写真左から)
テクノス株式会社 代表取締役社長 山下 文章 | 株式会社熊谷組 取締役社長 上田 真 |
株式会社ガイアート 代表取締役 石塚 周平 | 株式会社テクニカルサポート 代表取締役 志村 浩 |
華熊營造股份有限公司 董事長 新屋 忠彦 | ケーアンドイー株式会社 代表取締役社長 川村 和彦 |
株式会社ファテック 取締役社長 青野 孝行 | テクノスペース・クリエイツ株式会社 代表取締役社長 山下 直幸 |
[2023年度における印象的だった取り組み]
相乗的な価値をつくる、グループ連携による大規模プロジェクト
上田 私は、社長に就く以前から、建築事業本部長としてグループ経営推進委員会に参加するなど、グループ経営の重要さを意識してきました。今日はぜひ皆さんと率直な意見を交わしたいと思っています。まず始めに、2023年度を振り返って印象的だった取組みなどを聞かせてください。
石塚 これは前年度ではなく最近の話なのですが、熊谷組とガイアートのJVで大規模プロジェクトを受注しました。「コッター床版工法」による高速道路の橋梁リニューアル工事です。私は常々グループでの連携は1+1=2ではなく、それ以上の価値を発揮できる仕組みをつくっていくべきだと考えています。このプロジェクトを通して、グループシナジーの最大化に寄与していきたいと思っています。
上田 今日集まったメンバーでは、石塚さんが社長就任2年目、ケーアンドイーの川村さんと、テクノスの山下文章(以下、山下(文))さんが1年目ということになりますね。
川村 はい。したがって2023年度は私にとって就任前のことなのですが、ケーアンドイーは安全成績も含めて過去最高の業績を達成しました。これが当社にとって一番のトピックです。
山下(文) テクノスも業績が好調でした。社員1人あたりの営業利益も大きく伸びています。社長就任からまだ間もないのですが、社員と1 on 1で対話し、理解を深めていこうと思っています。
新屋 華熊營造(以下、華熊)では、昨年もこの席で紹介した台北駅前の超高層「台北ツインタワーC1.D1」がいよいよ着工しました。一方で、安全管理面で問題が発生するなど気を引き締めるべきこともありました。大阪・関西万博に出展する台湾系の民間パビリオンを熊谷組が受注し、貢献できることが一番嬉しいニュースですね。
山下直幸(以下、山下(直)) テクノスペース・クリエイツも近年では一番の業績を達成しました。また、厳しい環境ながら人財採用も計画通り進み、次の成長に向けて下地づくりができたと感じています。
青野 ファテックと熊谷組が共同で開発した技術商品「FCライナー」の受注が伸びました。石塚さんが話した「コッター床版工法」に関連する目地材をファテック、熊谷組、ガイアート3社で開発するなど、グループ連携ということでも成果の多かった1年でした。
志村 テクニカルサポートでは、熊谷組グループにおける事務のアウトソーシング事業などを行っています。2023年度は、DXの推進において当社にとって変化の大きい1年だったと思います。熊谷組が導入を進めている新基幹システムのワーキンググループに参加するなど、前向きにチャレンジする姿勢を社員と共有するように意識しました。
[グループ価値の最大化に向けて]
よいことばかりでなく、失敗事例も共有できる仕組みが必要
上田 これまで熊谷組グループは、建設業の川上から川下まで各社が役割を分担し、それぞれが専門性を深めることで成長を遂げてきました。しかし、グループとしての連結業績を最大化していくためには、そこからさらに踏み込んだ連携が必要です。
石塚 その意味でも先ほど話した熊谷組とのプロジェクトは、ガイアートにとって新しいチャレンジになります。実は高速道路の橋梁リニューアルは当社にとって初めての工事。熊谷組とJVという形で組むことによってこれまでにない経験を得られますし、自分たちなりに技術提案することでノウハウも蓄積できます。熊谷組グループに還元できることはもちろん、グループ会社以外の会社とJVを組む場合にも貴重な財産になるはずです。
新屋 華熊は、台湾で建築事業を展開しているため、各社との連携は限定的ですが、テクノスの建方治具「ACEUP」は多くの現場で活用しています。
山下(文) 新屋さんにはそう言ってもらえますが、実はテクノスの場合、売上の中でグループ外が占める比率が意外なほど高いのです。先日、同じようなポジションにある同業他社を調べてみたのですが、比較すると、テクノスはグループ会社への依存率が圧倒的に低い。これは、グループ内での開拓の余地を意味しています。グループ各社への情報発信の大切さを痛感しました。
青野 山下(文)さんが言う情報の共有では、よいことばかりでなく失敗事例なども共有できる仕組みがほしいと考えています。ファテックでは、熊谷組をはじめグループ各社と共同で素晴らしい技術商品を開発していますが、その一方で日の目を見なかった事例もあります。こうした課題なども共有できれば、当社グループにとって重要な財産になるのではないでしょうか。
[相互理解を深める]
互いの理解を深め合い、グループ各社が現場レベルで協働する風土を築く
川村 私はこれまで、熊谷組ばかりでなくグループ各社にも出向し、様々な部署を経験してきました。そこで得た知識や人脈が現在も大いに役立っています。それぞれの理解を深めていくためには、人財の交流がとても有効な手段になると思います。
新屋 それは私も同感です。今年は、華熊のナショナルスタッフに日本の現場をぜひ体験させたいと思っています。施工技術や安全管理など学べることはたくさんあるはずです。
山下(直) テクノスペース・クリエイツでは、3DCADやBIMなど多くの技術者を熊谷組に派遣しています。こうした業務を通じて技術の共有化にも貢献できていると思います。
石塚 確かに人財交流はとても有効ですが、その一歩手前として、グループ各社の社員が会社の枠組みを超えてお互いに理解し合える仕組みが必要ではないでしょうか。社員は自分が所属している部署以外でどんな仕事をしているか理解していないことが多い。ましてグループ会社となると、なかなか知るチャンスがないと思うのです。
上田 石塚さんの言うとおりですね。熊谷組とガイアートにしても、現場で一緒に仕事をしている社員同士は理解し合っていても、他の部署の社員は互いに知らないことも多いと思います。
山下(文) グループ全体でのイントラネットを整備しており、情報共有のツールとして活用していますが、お互いの理解を深めるに至らないというのが現状ではないでしょうか。
志村 テクニカルサポートは保険代理店として工事保険以外に福利厚生面でもメリットのあるサービスをグループ会社の社員向けに提供しています。ところが、こうした情報に気付いてもらえない時があります。
新屋 グループ各社が連携してグループ外へと事業を拡大していくためには、まずお互いに深く理解し合わなければなりません。改めてそこから検討することは重要だと思いますね。
上田 今期からスタートした新中期経営計画では「周辺事業の加速」を事業戦略に掲げています。それを推進していくためには、グループ各社で理解を深め合うことが大事になります。どのような体制が有効なのか、早急に取り組むべき課題としてこれからも積極的に話し合っていきましょう。
[経営インフラの共有化]
管理部門のインフラを共有化し、業務改革を加速する
上田 熊谷組グループが持続的な成長を遂げていくためには、グループ各社が自らの力を磨くとともに、DX推進や人財育成など共有できるインフラは共通化し、グループとして経営を効率化していくことも重要になります。
川村 ケーアンドイーでは、マンパワーの多くを技術部門に投入しており、管理部門の人財がどうしても手薄になりがちです。一方で最近では、DX推進や働き方改革など管理業務に求められるニーズも高度化しています。このような部分をグループで共通化できれば、効率が格段に高まるはずです。
山下(文) テクノスもまったく同じ状況で、数十名いる社員のほとんどが技術系です。熊谷組が導入を進めている新しい基幹システムをグループ各社共通で活用できるようになれば、管理業務の効率化が一気に進むと考えています。
上田 テクニカルサポートは、こうした管理業務のスペシャリストですよね。
志村 はい。現在、熊谷組の管理本部の業務をサポートしていますが、実際、このような改革を各社で進めようとすると大きなパワーが必要になります。それを考えると、テクニカルサポートがグループの基盤づくりにおいて能力を発揮できる場面はいろいろあるはずです。当社にとってビジネスチャンスだと考えています。
[グループとしてのガバナンス]
コンプライアンス、安全、そして社員たちの健康も重要なテーマ
石塚 DXもそうですが、最近ではESGのE、「環境」についても膨大な投資と研究開発力が必要となります。これら環境課題への取組みについても、グループ基盤として共有化できるものは積極的に進めていくべきだと思っています。
青野 「環境」への取組みは、グループとしての社会的価値を高めるばかりでなく、新しい経済的価値を創出していくチャンスでもあります。実際、ファテックが提供する技術商品でも、「環境」が欠かせない付加価値になっています。
川村 それを考えると、「環境」については、先ほどから課題にあげられている情報の共有も重要になりますね。熊谷組グループとして多様な知見を共有できれば、お客様の環境ニーズに応じた的確な提案が可能になり、そこからグループ各社のビジネスが広がっていくはずです。
上田 グループ共通の取組みとしてなによりも重要になるのは、やはりコンプライアンスです。熊谷組グループのガバナンスにおいては、グルーブ各社の意志を尊重しつつも、熊谷組がリーダーシップを発揮して取り組んでいくべきだと考えています。
山下(文) 知的財産の管理、さらには社員の健康管理に向けた体制なども共有化を図ってほしい分野です。
石塚 もう一つ加えるならば、安全管理もグループとして継続して高めていくべきテーマでしょうね。これらガバナンスにおいても、熊谷組グループ全体で1+1=2を超える成果を目指していくべきだと思います。
[グループ一丸で目指す未来]
社員が誇りを持って働いていけるグループにしていきたい
上田 最後に、熊谷組グループあるいは各社の未来に向けたメッセージを聞かせてください。
石塚 ガイアートも業績は回復基調なのですが、人手不足ということもあって、社員の表情に少し疲れが見えることもあるようです。忙しいなかでも活き活きと働くことができるように、みんなで夢を語り合える環境やリフレッシュできる制度を実現していきたい。そのためには先頭に立つ私が率先して夢を語り、仕事を楽しんでいる姿を見せていこうと思っています。
川村 私はケーアンドイーの社長就任にあたって、大切にしたい心構えを3つ考えて社員に伝えました。そのなかでも、私が一番重要だと考えているのが「プロセスを売る」ということ。施工の品質や安全を守ることは私たちの仕事にとって当たり前のことであり、お客様の満足を高めていくためには、そのプロセスをどこまでも磨き上げていかなければなりません。これは、熊谷組グループ全体にも言えることではないでしょうか。
山下(文) 今日はグループの連携についてとても良い議論ができたと思います。熊谷組グループの力を最大化していくために、重要となるのはやはりグループ各社の力を高めることだと思います。テクノスの技術力、コスト競争力をさらに磨いていきたいと考えています。
新屋 華熊では、前年度はナショナルスタッフの処遇改善を行いました。今年度は日系社員の処遇もさらに向上させていこうと考えています。また、最近、経営者として意識しているのは、どんな時でも社員と笑顔で向き合うこと。社員があまり深刻にならないように、あえて「なんとかなるさ」という言葉をかけるようにしています。
青野 どんなに売れる技術も寿命があります。そのためファテックが技術商社として成長していくためには、新しい商品開発に挑み続ける姿勢が大切です。今後は、売上の3割くらいを新商品・新技術で占めるように、社員と知恵を出し合いながらチャレンジを続けていきます。
山下(直) 熊谷組グループの現場をこれまで以上にサポートしていけるように、最新の技術に目を配りながら社員のスキルを継続的に高めていきたいと思っています。また、工務の合理化も熊谷組グループの現場にとって共通の課題。これらの業務をサポートできる人財の育成に力を入れていきます。
志村 テクニカルサポートは、女性がとても多い会社で7割近くを占めています。多様な社員が気持ちよく意欲を持って仕事に向き合える環境を整えていきます。いつの日か、テクニカルサポートに女性の役員を誕生させることが私の目標です。
上田 熊谷組グループは、ビジョンとして「社会から求められる建設サービス業の担い手」を掲げています。今日、改めて感じたのですが、この「担い手」という言葉は、グループ経営として目指すべき方向を示しているのではないでしょうか。建設業という枠組みにとどまるのではなく、その建設を通じてさまざまな価値をステークホルダーに届けていく。それは、グループ会社の社長全員が担うべき使命なのだと思います。
今日、皆さんと意見を交わしていて感じたことがもう一つあります。それは、熊谷組グループにとってかけがえのないステークホルダーである社員のこと。誰もがやりがいと誇りを持って働いていけるグループにしていきたいと強く思いました。お互いに理解し合い、高め支え合う企業グループを目指して、これからも議論を重ねていきたいと考えています。
- 所属・役職・内容は取材当時のものです。