熊谷組無人化施工技術
無人化施工における高機能遠隔操作室の開発
~災害時の緊急対応を可能にする移動式遠隔操作室~
株式会社熊谷組(取締役社長 樋口靖)は、無人化施工技術における災害対応用高機能遠隔操作室を開発し、実際の災害現場へ試験導入を行いました。高機能遠隔操作室は、実績豊富なネットワーク対応型無人化施工機械に適用する遠隔操作機能をユニットハウスに装備したもので、緊急を要する災害対応において、従来に比べて短い準備日数で工事に着手することが可能となります。
(平成28年3月25日)
1.開発の背景
人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、高度な現場施工であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなります。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、この設備構築の時間をいかに短縮して、迅速に工事に着手するかが課題となっていました。
また複雑化した通信システムは、設営時の誤配線や機器の損傷などのトラブルを招きやすく、緊急時の対応には大きな障害となります。最近の情報化施工やこれからの災害現場で活用が期待されるi-Constructionでは、通信機器の果たす役割が特に重要となっており、できるだけ障害を少なくすることが災害対応の基本となります。
2.設備の概要
当社では、初期の無人化施工で導入していた移動式遠隔操作室を改良し、新たにICTを搭載した高機能型の移動式遠隔操作室を開発しました。操作室にはデジタル伝送対応機器を搭載し、無線LANによる第4世代の無人化施工に対応しています。
【高機能型移動式遠隔操作室の特徴】
- 遠隔操作室は10tトラック等で迅速に移動することが可能です。
- モニタ等の機材は室内に設置したまま移動することが可能です。
- アンテナ設置用ステージは組立て式で、現地で簡単に設置することができます。
- 映像はすべてデジタル化し、オペレーターが操作卓で自在に切替できます。
- 建設機械にカメラ・無線機器等を簡便に搭載、運用できるシステムです。
- 建設機械の自律走行システムを容易に導入できます。
災害現場に導入する場合、従来であれば準備に5~10日を要していましたが、この移動式操作室であれば、屋上に無線基地局を設置して運用するなら1日で、有線LANや光ファイバケーブルを使用して、別途無線基地局の設置が必要となる場合でも3日程度で稼動させることが可能です。
システムは全てLANで構築されているため、「低容量型デジタル高精細画像伝送システム」※の導入が可能です。車載カメラにHDカメラを使用することで、従来よりもモニタ映像が鮮明になったことに加え、モニタ映像のタイムラグが少なくなり、オペレーターの負担も軽減されました。
- 熊谷組、青木あすなろ建設、大本組、西松建設、フジタ、(一財)先端建設技術センターで共同開発。
北原成郎・坂西孝仁・野末晃・吉田貴:無人化施工における低遅延高精細画像伝送システムの開発―無人化施工システムの作業環境改善―,第15回建設ロボットシンポジウム,2015
3.今後の展開
近年は災害の発生頻度や規模も拡大傾向にあり、二次災害を防ぐうえでも無人化施工の需要は高まっています。こうした突発的な災害に迅速に対応し、速やかに被害の拡大を防止して復旧するためには、平時から建設機械やオペレーターの準備が重要です。
当社では、この移動式遠隔操作室を実際の災害現場に用いるだけでなく、無人化施工機械の操作訓練に使用したり、ICT建設技術の開発に活用したりするなど、広く社会貢献に役立ててまいります。
<砂防緊急除石工事(深港川(2)1工区)工事概要>
発注者 | 鹿児島県 大隅地域振興局 |
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工事場所 | 鹿児島県垂水市二川深港地内 |
工期 | 平成27年9月18日~平成28年3月25日 |
工事内容 |
平成27年の梅雨前線豪雨により、鹿児島県垂水市の深港川で6月末から7月末までの期間にかけて斜面崩壊に伴う6回の土石流が発生し、国道の一時通行止め及び周辺住民への避難勧告が発令されました。 本工事はその土石流により閉塞した深港川の河道上流部を復旧するための除石工事で、上部の崩落や土石流が発生する恐れがあるため、無人化施工が採用されました。 |
- 本記事中の役職名称はリリース当時のものです。
お問い合わせ先
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組 広報部
部長:五十川 宏文
担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)
[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組 機材部
部長 北原 成郎
担当 飛鳥馬 翼 (電話03-3235-8627)