わたしたち熊谷組グループは持続可能な社会の形成に貢献し、安全と品質、生産性を向上させる技術の開発に取り組みます。同時に社員一人ひとりの個性と能力を活かし、活力のある企業を目指します。
「技術力」と「人間力」――。
人々が集い、ふれあいながら安心して心豊かにくらすことのできる場所をつくるために、わたしたちはこのふたつを掛けあわせた「独自の現場力」を高めます。

最新の医療技能が充実する新病院としてオープン

明るい陽射しが降り注ぐ1階エントランス

 宮城県仙台市において、医療機関の中核をなす「仙台徳洲会病院」。医療法人徳洲会グループ初の東北地方の病院として、1986年(昭和61年)に同市内泉区七北田に開院しました。以来36年という永きにわたり地域住民の健康と安全な暮らしに貢献。また、これまでに、同地域ばかりか国内外のさまざまな医療支援にも尽力し、多くの人びとから感謝と信頼を得ています。

 しかし、既存病院の老朽化や東日本大震災の影響、そして目覚ましい進化を遂げている医療技術への対応などから、2019年(平成31年)に新病院建設に向けて動き出しました。

 計画・実施からおよそ3年余りの歳月を経た2022年(令和4年)4月から、旧病院から地下鉄南北線中央駅を挟んで約2km離れた同区内高玉町に、新たな病院としてオープン。新病院では高性能な最新医療機器と新システムを導入し、診療科目の細分化とその専門性を活かして、患者一人ひとりに寄り添う医療体制を実現しています。

 そうした医療機能を支える建物の構造を、鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造で、延床面積は旧病院の約2倍以上。内部配置は、1~2階が主に外来・検査系部門、3階は手術系部門、4~7階は病棟、8階は介護老人保健施設、9階には総務部門や会議室となっています。また、7階の北側を感染症対策病棟として、ほかの患者と動線を分けるよう、感染外来専用入口を設けています。さらに、緊急時や火災時に対応できるよう、屋上階にヘリポートを設置。ほかにも 住友林業株式会社と連携・取り組みを図り、木造平屋建て230m2の病院職員向け保育所棟を設け、駐車場も約500台が駐車可能となりました。

 今後、医療技術の進歩や地域の人びとのニーズの高まり、社会状況の変化などで増築・建替が必要になっても、それに応え得るスペースも十分に確保して将来へ備えた設計となっています。

コロナ禍への対応に三位一体で最善を尽くす

 着工早々の2020年(令和2年)4月、コロナ禍の第一波により日本中に緊急事態宣言が発令され、医療従事者である発注者が今後のパンデミックを予見、急遽、設計見直しの協力依頼を受けることになりました。従来の病院建築を想定していたところに、病棟の一部を感染病棟や発熱外来対応に変更すべく、ゾーニングや動線計画など仕様の見直しが必要に。かつて経験したことのない状況のなか、発注者、設計者、そして施工担当者の熊谷組が三位一体となり、タイトなスケジュールを縫って設計見直しに取り組みました。

 日本中がコロナ対策に苦慮しているなかでも冷静沈着に状況を見極めて現場を指揮した、(現・経営戦略室DX推進部 DX推進グループの)青栁 謙太郎部長に当時の様子を聞きました。

 「工期内完成のため急を要する事態で、まさに根を詰めて打ち合わせに臨みましたが、いまできる最善のものは何か?(と日々頭を痛めました)」と振り返りました。しかし、三位一体の体制のおかげで、一つずつ根気よく最良の策を探るなか、具体的な対応が見えてきました。

 まず病室については、各種要望に迅速に応えられるよう、コンピューター上に作成した3次元のBIM(Building Information Modeling)モデルと棟内モデルを作成し、バーチャルとリアルを併用して提案・合意形成を図りました。

 施工では、工期に影響がでないよう、現場内の感染防止対策・資機材納期や労務の管理などに細心の注意を払いながら、工事を進めていくこととしました。その結果、感染症対策などの設計変更にも対処し、感染による工事中断や遅れもなく、工期内の無事故・無災害で竣工を迎えることができました。

 そこで、そうした状況下での施工で最も苦労した点はどこか?  と青栁部長に尋ねると、外観で最も目を惹く、建物正面に見える特徴的なファサードのエントランス部分だと言います。
「ここだけが鉄骨造で多角面の構造体なので、BIMモデルを作成して臨みました」。また、「三層吹き抜けのエントランス部分の施工にも苦労しましたが、いまは多くの患者やスタッフからも評判がいいです」とも語ります。

全景:南東面(手前駐車場側より)
青栁 謙太郎部長

「STH Challenge 48!」への取組みで “みらいのげんば” 実現に挑戦

 当現場では、もうひとつ特筆すべき点があります。それは、青栁部長自らが率先して行った作業所オリジナルの取組み「STH(Sendai Tokushukai Hospital)Challenge 48!」で、「働き方改革」「生産性向上」および「建設業の魅力発信」の3テーマで48項目に挑戦し、作業所が目指す“みらいのげんば(未来の現場)”実現にチャレンジすることを提言したものです。

 「働き方改革」とは<働きやすさ>と<やりがい>のある現場づくりを目指すための16項目、「生産性向上」とは<生産性を高く>するための19項目、そして「建設業の魅力発信」は<ハーモニー>をキーワードに、すべての取り組みの先に人がいると思い、人と人とのつながりを大切にするための13項目で、3テーマそれぞれに具体的な48の項目が盛り込まれています。つまり、働きやすさややりがい、従来の制限にとらわれない自由な施工方法の発想、そのための環境づくりが最も重要となり、そうした先には建設業の<未来>の姿がある、ということです。

 青栁部長が当現場に就く以前、本社で全国の建設現場の支援を行う部署に所属し、また、日本建設業連合会本部の委員を務めていたこともあり、全国の現場を視て学んだ経験から「自らも現場を変えなければ!」という思いに至ったと言います。そこで、当現場では着工前に「働き方改革」「生産性向上」「建設業の魅力発信」の3テーマ48項目の挑戦を明確に掲げ、ここに携わる社員や協力会社の作業員全員で徹底して、これに取り組みました。
 
 例えば、「働き方改革」のひとつである<現場モードのON/OFF>の切り替えラインとして、「ハーモニーゲート」と称する作業現場への出入り口を一つだけ設け、朝礼後、着工から竣工まで当番の職長とそこに立ち、一人ひとりに声がけを実施。時には、飴などを配りました。

 その声がけが、全工期、無事故・無災害120万時間達成にもつながったのです。

 また、見通しがよく心地よい空間を具現化した「ハーモニーオフィス」は、明るく調和が生まれるオフィス環境づくりとして、現場の運営にも大きく貢献しました。

 さらに、熊谷組及び協力会社の女性社員・女性作業員で「STH小町」というグループを結成。定期的に意見交換会を行って、女性が働きやすい現場となるように、女性作業員の更衣室・休憩室の整備からシャワールームを設置や現場の洋式トイレ化を実現させるなど、女性が積極的に働きやすく且つ、働き続けたいと思われる環境づくりにも取り組みました。ほかにも、現場近隣の小学校へ通う児童らの安全な通学路を確保するという理由から、その歩道を「ハーモニーロード」と名付けて整備し、仮囲いには季節ごとの展示スペースや、児童らの絵を掲示するスペースを設置。展示物作りは、若手社員が愉しみながら制作を担当しました。

 しかし、青栁部長にこの一連のチャレンジの自己評価を問うと、辛口の60点。「その先につながるための自分を鼓舞する採点」と、この採点の理由も併せて語りました。

ハーモニーゲート
STH小町によるハーモニーゲート前での声がけ

貴重な体験と実績を糧に未来の建設業務を担ってほしい

 いま医療施設のあり方が時代と共に変化し、さまざまな点で見直されています。特に、 コロナ禍のように経験したことのない感染症への迅速で適切な対応、そして、 ここ数年にみる自然災害などに対しても、いかに地域の支援拠点として活動できるか? このことが大きな課題となっています。

 それだけに、病院移転新築工事のような、地域住民の命を預かる大切な施設作りを通して得た貴重な今回の経験・実績は、後々の大きな糧となります。また、この現場に携わった多くの若い社員や作業員たちにとっても、これからの熊谷組、または未来の建設業を担っていくための大きなステップになったに違いありません。

 青栁部長は「がむしゃらにハード面に取り組むことも技術的には必要だが、若い人材にはソフトマネージメントの部分も大事。ソフトの面をもっと充実させていかないと、建設業の未来にはつながっていかない」と言います。そして「若い人たちには、自分の未来をしっかり思い描いて、明るい “みらいのげんば” 」の実現を目指してほしいと続けました。
 
 最後に「当院がこれからも地域住民の健康と安全な暮らしを護り、日進月歩で進化する医療の発展に寄与し続けることを願っている」と締めくくりました。

当現場のメンバー、コロナ禍という混乱期をチームワークで乗り切りました!
安全朝礼の様子
外面北面夜景

工 事 概 要

工事場所 宮城県仙台市泉区高玉町9-8
発 注 者 医療法人徳洲会
設計監理 株式会社 伊藤喜三郎建築研究所
施  工 株式会社 熊谷組東北支店
構造·規模 敷地面積:35,055.42㎡
建築面積:8,134.34㎡
延床面積:34,441.94㎡
地上9階、地下なし 塔屋1階建て
実施工期 2020年4月1日~2022年2月28日
用  途 病院(347床)、介護老人保健施設(68床)、保育所