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水道橋PREX新築工事

水道橋PREX新築工事プロジェクト

都心のオフィスビルに、先進の価値を。「エンボディドカーボン削減」を追求する。

カーボンニュートラルの実現に向けて、建物のライフサイクル全体でCO2削減に取り組む動きが始まっています。

住友商事(株)が開発した「後楽園PREX(プレックス)」は、そんな環境における最新の価値を追求したオフィスビル。熊谷組は、設計、施工、さらには技術開発までもが一体となったチーム力でこのビルの建築を担いました。

建築物のライフサイクル全体でCO2削減を追求する

東京都文京区、白山通り沿いに建つ「後楽園PREX(プレックス)」は、住友商事(株)が開発売却事業として展開する中規模オフィスビル「PREXシリーズ」における最新のビルです。

水道橋PREX外観

2025年5月に竣工したこの建物では、オフィスビルとしての価値を高めるために、「環境」において先進のアクションを取り入れています。それが「エンボディドカーボン」の削減です。

統括所長 梶山 和之
統括所長 梶山 和之

近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、サプライチェーン全体で発生する間接的なCO2削減に注目が集まっています。エンボディドカーボンとは、建築物の使用時の省エネ・創エネだけでなく、調達・建設から廃棄・リサイクルなどライフサイクル全体でCO2削減を目指します。

統括所長として「PREXシリーズ」全体の建築を統括する梶山和之は次のように語ります。

「熊谷組は、住友商事(株)のPREXシリーズにおいてすでに7棟の建築を請け負っており、その魅力を高めていくために日頃から情報交換を行っています。後楽園PREXでのエンボディドカーボン削減も、このような信頼関係をベースにご提案いただき実現できた新しいチャレンジです」

高い品質を確保しつつ、先進の環境配慮資材を採用する

エンボディドカーボンの中でも大きな比重を占めているのが、建築資材の製造時におけるCO2排出量です。そこで「後楽園PREX」では、先進的な環境配慮型の資材を採用しています。

その1つが、JFEスチール(株)が製造するグリーン鋼材「JGreeX(ジェイグリークス)」です。
この「JGreeX」は、製造プロセスにおけるCO2削減効果を全体でプールして任意の製品に割り当てる「マスバランス方式」によって、CO2排出量を大幅に削減した鋼材です。「後楽園PREX」では、主要鉄骨部材のおよそ400tのうち約半分に適用しています。不動産・建築業界では、今回が初めてのチャレンジとなります。

また、建築物に求められる高い品質を確保しつつ、コンクリートに由来するCO2排出量を削減する環境配慮型のコンクリートが「CELBIC(セルビック)」です。製鉄所で発生する副産物である高炉スラグ微粉末を通常のセメントに使用することによって、CO2排出量を9〜63%削減できます。

「後楽園PREX」では、構造体に用いるすべてのコンクリートに「CELBIC」を使用。高炉スラグ微粉末の使用率が異なる3タイプの「CELBIC」を部位に合わせて使い分けることによって、一般的なコンクリートと比較して28%のCO2削減を実現しています。

現場での先駆的な施工を、本社の技術部門がサポート

「JGreeXの取扱いは通常の鉄骨と同様ですが、CELBICは硬化のスピードや特性が異なるため、施工にあたっては新しい知識や工夫が必要となりました」このように語るのは、作業所長として現場を統括した北隆司です。

また、建設材料研究室におけるコンクリート技術のエキスパート、五百藏(いおろい)沙耶は次のように話します。

建設材料研究室 五百藏 沙耶
建設材料研究室 五百藏 沙耶
作業所長 北 隆司
作業所長 北 隆司

「躯体のコンクリート部分全てにCELBICを使用した施工は、今回が国内の建築物としては2例目でありノウハウの蓄積が少ない。さらにコンクリート製造工場が遠方にあるために運搬に時間がかかるなど厳しい条件が加わりました。そこで事前に社内で試験を重ね、初回のコンクリート打設に立ち合うなど、現場と一体になって施工を進めました」

コンクリート打設をスピーディーに行うためには、より緻密な工程計画と、現場での的確な対応が求められます。これこそ現場の先頭に立つ作業所長としての腕の見せどころ。

さらに、都心部に位置する狭い敷地など、「後楽園PREX」の施工にあたってはいくつもの厳しい条件をクリアしなければなりませんでした。

都心立地という困難な条件をいかにクリアするか?

施工現場は、前面を白山通りに、後面を幅4mの生活道路に接しています。両側には既存の建物があり、限られた敷地を最大限に活用し、地上10階建のオフィスビルを建設しています。

「その点でも困難な施工だった」と作業所長である北は語ります。
「敷地接道条件だけでなく敷地が傾斜していて、敷地内に約2mの高低差があることも工事を困難にした条件でした。建設機械や資材の搬入はすべて後面の生活道路から行わなければなりませんでした。搬入に使う車両の大きさも限定され、通学など常時人通りの多い環境のため、交通の誘導・警備などさまざまな配慮が求められたのです」

設計第1部 課長 佐藤 正彦
設計第1部 課長 佐藤 正彦

また、「後楽園PREX」では、設計から施工まで一貫して熊谷組が請け負っています。

意匠設計を担当した設計第1部の佐藤正彦は次のように話します。
「洗練されたデザインやワークプレイスとしての快適さも“後楽園PREX”の特徴です。各フロアの前面に専用のバルコニーを設置し、東京ドームを目前に眺められる屋上には緑豊かな共用スペースをつくりました。建物のエッジを際立たせる外壁デザイン、バルコニーの手すりに使用した木材や塗料は耐久性も考慮し、細部にまでこだわっています」

後楽園PREX外観1
後楽園PREX外観2

お客様に「しあわせ品質」を届けるために、チーム力で挑んでいく

「後楽園PREX」の施工は、最盛期でも現場の技術者は若手を中心に2~3名という少数精鋭体制でした。それを可能にしたのも、卓越した現場力と、それを全社でサポートする熊谷組ならではのチーム力があったからこそといえるでしょう。

「計画段階から竣工まで作業所長としてすべてのプロセスに携わることができ、私にとっても思い入れの深い建物でした。現場では、“お客様に喜んでいただくためにはどうすべきか?”を常に考えるように若手たちにアドバイスをしていました。設計部門や技術部門とも密接に連携し、熊谷組らしい高品質な施工が実現できたと思います」(北)

「住友商事(株)の理解を得て、遮熱効果の高いLow-E複層ガラスや高性能な省エネ室外機を採用するなど、高品質なデザインと省エネの両立を図り、“ZEB Ready(ゼブ・レディ)”認証を取得することができました。“CELBIC”の実用化はもちろん、この建物で得た知見は熊谷組にとって貴重な財産となるはずです」(佐藤)

後楽園PREX内観1
後楽園PREX内観2
  • 「ZEB Ready」とは従来の建物に必要なエネルギー消費量から50%以上のエネルギー消費削減に適合した建物

「CELBICで得たノウハウは、熊谷組だけでなく、今後の建築業界での普及にも貢献できる蓄積だと思います。試験ばかりでなく施工にも立ち合い、私たちが開発した技術が現場で役立っているのを実感できたことも、自分的には大きなやりがいでした」(五百藏

もちろん、このような高品質な施工を追求できたことは、お客様との確かな信頼関係があったからこそであることは言うまでもありません。適正な工期の設定など、計画段階から深い理解をいただくことができました。お客様の評価も高く、この「PREXシリーズ」ではさらに複数の新規案件を受注しています。

最後に、統括所長の梶山がプロジェクトを振り返ります。
「後楽園PREXは、エンボディドカーボン削減に加え、敷地接道条件が厳しいなど困難なプロジェクトで、ひょっとすると他社では尻込みするような工事だったかもしれません。それを完遂できたのは、熊谷組の技術力と総合力が発揮されたからであり、どんな時でもお客様のためにベストを尽くそうという社員の想いが結集されたからこそだと思います」

お客様に喜んでいただくために「難所難物」にひるむことなく挑んでいく。この姿勢は、熊谷組が創業時から受け継いできた大切なDNAです。
お客様に、そして社会に「しあわせ品質」を届けていくために、これからもチーム力でチャレンジしていきます。

後楽園PREXプロジェクト

工事概要

水道橋PREX新築工事

事業者 住友商事(株)
所在地 東京都文京区本郷1丁目4-5(住所)
工期 2023年10月16日~2025年5月16日
(地下解体工事+新築工事)
用途 事務所、駐車場
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