グループ会社社長座談会 ー2025年4月

「稼ぐ力」と「選ばれる力」を高め、
未来を共有できる企業グループを目指して

「稼ぐ力」と「選ばれる力」を高め、未来を共有できる企業グループを目指して

参加者(写真左から)

テクノス株式会社 代表取締役社長 山下 文章 華熊營造股份有限公司 董事長 新屋 忠彦
株式会社ファテック 取締役社長 青野 孝行 株式会社ガイアート 代表取締役 石塚 周平
株式会社熊谷組 取締役社長 上田 真 ケーアンドイー株式会社 代表取締役社長 川村 和彦
テクノスペース・クリエイツ株式会社 代表取締役社長 山下 直幸 株式会社テクニカルサポート 代表取締役 志村 浩

熊谷組グループでは、各社が自らの力を磨くとともに、強固な連携によって相乗的な価値の創造を目指しています。2024年度は、その新たなチャレンジとなる「熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)」のスタートとなる年でした。「稼ぐ力」、そして「選ばれる力」を高め、企業グループとしての価値をいかに高めていくか? グループ会社8社の社長が集い、熊谷組グループの目指すべき姿を語り合いました。

[中計の1年目を振り返って]

「稼ぐ力」の向上に取り組み、新たな成長に手応えを得た

上田 2024年度は、「熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)」(以下、中計)のスタートとなる年でした。受注高は増加したものの、資材費や労務費が高止まりするなど、グループ各社ともに「稼ぐ力」の強化に注力した1年でした。まずは1年を振り返って印象的だったことを聞かせてください。

石塚 ガイアートは、コロナ禍の影響を受けて一時業績が停滞し、現在そこから回復する途上にあります。2024年度は、その回復を加速する時期と位置づけました。さらに2025年度は足場を固め、2026年度は新たな成長をスタートさせようと考えています。2024年度は、こうした3か年による戦略を機会あるごとに社員に伝えてきました。その結果、意識の共有が進み、今までにない変化を感じています。

川村 2024年度は、私がケーアンドイーの社長に就いて1年目でした。業績を高めることはもちろん、会社への理解を深めることに注力しました。2024年度は本社管理部門の組織変更及び会議の見直しを実施しましたが、改革も着々と進んでおり、中計の2年目、3年目が楽しみです。

上田 私も2024年度が社長就任1年目だったのですが、川村さん、実際に経験してみてどうですか?

川村 実際のところ、これまでで一番充実した1年だったと思います。テクノスの山下(文)さんも同様に就任1年目でしたよね。

山下(文) 川村さんと同じく、私も会社を理解することに力を入れ、160名ほどいる全社員と1 on 1による面談を行いました。現在は事業部の再編に着手し、人財の流動性を図り、会社の活性化に取り組んでいます。

新屋 華熊營造は台湾で建築事業を展開しており、昨年、創業50周年を迎え、2025年4月に記念式典を行いました。それに加えて、大阪・関西万博に出展する台湾系の民間パビリオンも受注し、1年間で台湾・日本間を15回くらい往復して、私も充実した1年を過ごしました。業績面では、台北駅前のランドマークとなる超高層「台北ツインタワー(C1.D1)」の工事も順調に進んでおり、中計についてはよいスタートが切れました。

上田 万博の台湾系パビリオンは、華熊營造と熊谷組とのJVですよね。竣工もトップ10に入るくらい早く、お客様からもとても高い評価をいただいています。

青野 ファテックでは、技術商社として、熊谷組グループで開発した商品の販売を手がけています。2024年度は「コッター床版工法」に関連する商品が好調でした。最近、グループ外への販売の比重が増しており、2024年度はその動きがさらに強まったように思います。

山下(直) テクノスペース・クリエイツでは、業績に関しては目標を達成することができましたが、月々の変動が大きく苦労しました。働き方改革の進展などによって事業環境も変化しており、当社にとっては、次なる変化に向けて踏み出す1年だったと感じています。

志村 テクニカルサポートでは、事務代行事業と保険代理店という2つのビジネスを行っています。熊谷組グループにおけるDX推進や働き方改革などによって、事務代行事業にも従来にないスタイルが求められています。保険代理店については、弁護士保険や長期医療保障保険などこれまでにない保険商品の拡販に力を入れました。

[グループ連携の深まり]

グループ内の連携を深化させ、外へと事業を広げていく

石塚 昨年もこの場でお話ししたのですが、熊谷組とガイアートのJVで受注した大規模プロジェクトが2024年度にいよいよ着工しました。「コッター床版工法」による高速道路の橋梁リニューアル工事です。
その他にも両社に他社と大学も加えて、電気自動車(EV)へのワイヤレス給電をする舗装体の研究開発が加速化するなど、時代のニーズに応える研究で熊谷組グループとしての連携がより深まったことも中計1年目の大きなトピックだと感じています。

青野 熊谷組グループでは、この「コッター床版工法」に関連する継手や目地材を共同開発しており、ファテックにとって主力商品の一つになっています。当社の社員が技術指導などで現場に出向く機会も多く、そこで見つけた課題などを熊谷組の開発部門にフィードバックするというサイクルが出来上がりつつあります。

上田 この橋梁リニューアル工事では、熊谷組とテクノスが開発した工法の採用も計画されていますよね。

山下(文) ええ。通行止め期間を短縮できる床版切断工法「切り方じょうず」です。本格的な実用化は今回のプロジェクトが初めて。これをチャンスに、グループ外の建設会社にも拡大していこうと考えています。

青野 ファテックの商品でも、熊谷組の工事での採用がきっかけとなって販売が広がったものがいくつかあります。熊谷組グループならではの信頼力、ブランド力を活かして、「内」から「外」へという展開を図れることはグループ連携の大きな強みでしょうね。

川村 それは私も感じています。建築リニューアル業界では、ケーアンドイーのようなゼネコン系の独立会社は数少ない存在。熊谷組グループというバックボーンがさまざまな場面で活きています。

山下(直) テクノスペース・クリエイツでも最近グループ外からの問い合わせが増えており、すでにいくつか受注につながっています。それも2024年度の新しい動きですね。

志村 テクニカルサポートでは、業務サポートの一環として、熊谷組の社員を対象に異動サポート業務を開始しました。当社が窓口となって引っ越しに関する手続きを代行するサービスです。このように事業の枠を広げて実施する、当社にとって初めての事業スキームです。まだ始まったばかりですが、これをきっかけに新しいチャレンジをしていこうと考えています。

[“選ばれる力”を高める]

多様なステークホルダーから“選ばれる”企業グループを目指す

上田 今回の中計では、「稼ぐ力」に加えて、「選ばれる力」を強化することを方針として掲げています。

石塚 グループとして「選ばれる力」を高めていくためには、サステナビリティの取組みが欠かせません。環境関連の技術開発にはコストのかかるものも多い。それをグループで開発し共有することができれば経営の効率化が図れます。社会に向けた情報発信にしても、熊谷組グループとして発信した方がよりインパクトが大きい場合もあると思います。

上田 まさにそのとおりですね。この「選ばれる力」というと、まずお客様のことが頭に浮かびますが、株主の皆様や、さらに採用という視点を含めると学生などから選ばれることも大切です。熊谷組グループが持続的な成長をとげていくためには、各社で取り組むだけでなく、グループとして「選ばれる力」を鍛え、社会に積極的に発信していくことが重要だと考えています。

川村 採用については、やはりどの会社でも今最も注力していることのひとつではないでしょうか?

山下(文) テクノスではシンガポールや台湾など海外でも事業を進めていて、最近、台湾での人財採用を進めようと現地の大学を訪問しました。その時思ったのは、華熊營造の台湾でのブランド力を活かして共同で採用活動を進められないかということ。今度、ぜひ新屋さんに相談してみたいと思っています。

新屋 人財不足は台湾の企業でも深刻です。熊谷組グループとして、一緒に取り組みたいと思います。

上田 グループとしてのブランド力を活かした採用活動ということですよね。たとえば熊谷組グループという窓口のもとに採用を進め、各人の特性や希望に応じて各社に振り分ける。検討すべき課題も多くありますが、これからグループとして話し合っていくべきテーマだと思います。

[経営資源の共有化]

“人”を育てていくために、グループとして取り組むべきこと

上田 人財に関しては、育成についてもグループとして取り組むべきことが多くあると考えています。教育研修なども専門的なところは各社に任せるとして、共通できる部分はグループ全体で行うことで経営資源を共有化できます。

志村 テクニカルサポートでは、熊谷組が実施している研修に社員たちを積極的に参加させるとともに、独自にオンライントレーニングシステムも新たに導入しました。

山下(文) ちょうど今日行われているのですが、熊谷組の新入社員研修の一環でCAD研修にテクノスの新入社員、2年目社員も参加させてもらっています。

山下(直) その研修で講師を務めているのがテクノスペース・クリエイツの社員というわけです。

新屋 グローバルな人財交流もぜひ実現したいテーマです。華熊營造の技術者からは、日本の現場を見学して品質管理や木造建築といった新しい技術を学びたいという声があがっています。

上田 熊谷組の技術者が華熊營造に行く研修はすでに始まっています。しかし、双方向の交流はまだですよね。ぜひ早々に実現したいと考えています。

[相互理解を深める]

サステナビリティからコンプイアンスまで、意識を共有するために

石塚 今日の雰囲気からも伝わると思うのですが、熊谷組グループは社長同士の連携がとても円滑。どんなことでもざっくばらんに相談し合える関係にあります。このような風通しのよい関係を、管理職、さらには第一線の社員同士でも持てるようになれば、お互いの理解度も深まり、おのずとグループとしての「選ばれる力」も高まっていくはずです。

志村 今後は、熊谷組グループにも新しい企業が加わってくることになると思います。業務などの連携がスムーズにとれるようにするためにも、そうした風土づくりは大事だと思いますね。

川村 ケーアンドイーと熊谷組では、支店レベルでも日頃から管理職同士で情報交換を行っています。年々風通しがよくなっているように感じます。

上田 たとえば熊谷組の営業担当がガイアートの技術やファテックの商品をお客様に紹介したり、現場の技術者がケーアンドイーを協力会社に進めたり、そんな連携が自然に生まれるようなステップにまで高めていきたいですよね。
サステナビリティの視点で言うならば、グループとしてのガバナンスも非常に重要です。コンプライアンスの意識を徹底していくためにも、熊谷組グループとしてベクトルを合わせて継続的な取組みを進めていくべきです。

[想いを一つにして、未来へ]

社員が夢を抱き、夢を語り合える企業グループを目指して

新屋 「選ばれる力」ということでは、社員から「選ばれ続ける」会社であることも大切だと感じています。最近、社員と話をしていて気づいたのですが、若手社員が会社に求めているのは、処遇のよさばかりではないのですよね。この会社で働く意義とか、自身の成長とか……。私は、華熊營造の社員にはみんなの「幸福度」を高めたいとよく話をしています。

上田 つまり、エンゲージメントですよね。熊谷組では毎年エンゲージメント調査を実施していますが、結果や寄せられた意見を見て初めて気づくことがたくさんあります。社員の想いを経営に活かすサイクルをつくっていくことも、グループ共通で取り組むべきテーマだと思います。

山下(直) 社員との1 on 1面談でよく出た要望に、「自分たちが描いた施工図の現場を見てみたい」というものがあります。仕事の達成感も高まるので、ぜひ実現させたいと思っています。

上田 テクノスペース・クリエイツの社員ばかりでなく、熊谷組の技術者も学び合うことができ、グループとしての一体感も高まると思います。ぜひ実現させましょう。

青野 能登半島地震の復興工事では、ファテックと熊谷組の技術者がそれこそ寝食を共にする現場がありました。とても貴重な経験だったと思います。

川村 これは人財採用にも関係の深いことだと思うのですが、最近、そうした建設業ならではのやりがいや魅力が若い人たちに上手く伝わっていないような気がするのです。

青野 若い社員が夢を抱いて、お互いに夢を語り合えるようなグループにしていきたいですよね。そうすれば、「選ばれる力」も自然に高まっていくと思います。

新屋 華熊營造の今年の経営テーマは「笑いのたえない会社」です。

川村 ケーアンドイーでは最近、「笑って勝ちにいこう」という話をよくしています。

上田 私は、若い頃から「仕事は明るく前向きに」をモットーにしていて、社長になった今も社員によく伝えています。熊谷組グループの社員が夢を抱いてともに成長していける会社を目指すためには、先頭に立つ社長が難しい顔ばかりしていては困ります。今日はとてもよい話し合いができたと思います。「選ばれる力」を強化し、夢を実現できる熊谷組グループを目指してこれからも連携を深めていきましょう。

  • 所属・役職・内容は取材当時のものです。