- プレスリリース
風鳴り音(振動音)の発生を低減する「振動音対策縦格子手すり」の開発
2025年09月02日
株式会社熊谷組(代表取締役社長 上田 真 本社:東京都新宿区)は、ビニフレーム工業株式会社(代表取締役社長 吉沢 伸剛 本社:富山県魚津市)と共同で、風鳴り音の発生を低減する「振動音対策縦格子手すり」を開発しましたのでお知らせします。
1. 背景
共同住宅では、バルコニーや屋上等に手すりが設置されます。設置される手すりとしては、腰壁タイプ(コンクリート)、ガラスパネルタイプ、格子タイプがあります。これらの手すりの中でも意匠性、採光、風荷重、コスト等の観点から縦格子手すりが多く用いられています。
一方、縦格子手すりは、シンプルな形状や構造であるため、手すりの設置場所、手すり子の断面形状、手すり子の間隔によっては風鳴り音が発生する場合があります。特に、建物の隅角部や屋上等では日常的に風が強い傾向にあり、手すり子背面に障害物がないため、風が手すり子の間を吹き抜けやすく、風鳴り音が発生する場合があります。
風鳴り音は、「ヒュー、ピー」などの笛吹音と「ブーン」などの振動音に分けることができます。笛吹音は空気の流れから発生する音、振動音は風が手すり子の間を吹き抜ける時に生じる剥離渦と手すり子の固有振動数が近い時に生じる共振振動です。振動音は共振振動のため日常的に発生するような比較的低風速の時にも発生しやすい現象です。さらに、振動音は手すり子の振動に伴う音なので、手すりの設置場所から離れた居室でも振動が伝搬し固体伝搬音として居室内に放射されます。
現在は多くの場合、風が吹き抜けやすい建物の隅角部や屋上などには縦格子手すりは設置せずにガラスパネルタイプの手すりが用いられています。一方、意匠性や眺望の観点から風鳴り音対策の縦格子手すりがデベロッパーや設計者から求められてきました。
これまでにも、縦格子手すりの振動音対策について、
- 手すり子に充填剤を挿入する方法
- 手すり子と笠木の間に防振材を取付ける方法
- 横桟を構造用接合テープで取付ける方法
等が提案されてきました。一方、耐候性や脱落防止などの安全性、構造・施工上の負荷が大きい、足掛かりになる等の課題がありました。
そこで、これらの課題を解決できる風鳴り音対策縦格子手すりを開発しました。
2. 概要
開発した縦格子手すりは、手すり子の中空部に樹脂製の制振部材を挿入する構成となっています。制振部材を挿入することにより、手すり子の振動を抑制し、手すり子から発生する振動音を大きく低減します。制振部材は、耐熱性の観点からABS樹脂製とし、板部とばね部により構成されています。制振部材の板部と手すり子の内壁が接触するように挿入することで大きな効果を発揮します。(図1参照)
制振部材を挿入した縦格子手すりに対し風洞実験を行った結果、手すり子の振動が大きく低減し、聴感上振動音は確認できませんでした。(図3、表1参照)



表1 聴感印象の比較
対策前

対策後

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3. 特徴
開発した縦格子手すりの特徴は以下の通りです。
- 制振部材を挿入することにより、手すり子の振動を抑制し、手すり子から発生する振動音を大きく低減しました。
- 振動音を抑制可能となったため、建物の隅角部や屋上等に設置することが可能となりました。
- 手すり子中空部に制振部材を挿入するため、意匠上変化がありません。したがって、意匠性や眺望を確保できます。
- 樹脂製の制振部材のため、非常に軽量であり、設置場所も日光の当たらない手すり子の内部のため耐候性にも優れています。
- 手すり子内部に制振部材を挿入する形式であるため、既存の縦格子手すりにも適用可能です。
- 特許は出願済み、意匠は登録済みです。
4. 製造・販売体制
製造および販売はビニフレーム工業株式会社が担当します。
芯納まりタイプ、縦格子寸法15mm×31mmの縦格子手すりから販売を開始し、持ち出しタイプや異なる寸法の縦格子に順次対応していきます。
販売開始時期は2025年10月ごろを予定しています。
販売価格に関しては、
- 設置する物件や設置個所ごとにオーダーメイドで作成。
- 制振部材のコストおよび制振部材入りの手すり子の製作コストを加味するため、汎用品の縦格子手すりに対して1.5倍程度(設計価格)になると想定しています。
5. 今後の展開
今後、建物における快適な音環境を提供するための重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提案していきます。
お問い合わせ先
本リリースに関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 経営戦略本部 広報部
電話:03-3235-8155
技術に関するお問い合わせ先
株式会社熊谷組 技術本部 技術研究所
副所長:財満 健史
担当:黒木 拓
ビニフレーム工業株式会社 建材事業本部 建材開発部
部長:吉野 貴之
担当:鷹休 将樹