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世界初の音速自動補正機能を有する高精度水中測位システムAquaMarionette®の精度を水中マルチパス環境下で実証-水中デジタルツインを実現―

2025年01月15日

株式会社熊谷組(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:上田 真)は、水中の無人化施工に向け当社開発の独自のアルゴリズムにより(特許申請中)、世界初の音速自動補正機能を有する高精度水中測位システムAquaMarionette®(アクアマリオネット)の精度検証試験を国立研究開発法人 土木研究所の円形水槽で実施し、音波が多重反射しやすい激しい水中マルチパス環境下、水深20mでも計測可能である事を実証しました。

また目視する事ができない施工機械などの水中移動体の位置・姿勢を、サイバー空間上にリアルタイムかつ高精度に再現する事で、水中デジタルツインを実現しました。

1. 目的

河川・海洋・港湾・ダムでの施工は、安全性確保・効率化のため、高水圧・視界不良の水中作業を避けた施工を実施するのが一般的です。しかしながら近年ではダム放水口の堆積土砂撤去などといった老朽化インフラの更新や災害による被災施設の復旧など、水中での精密な施工が必要なケースが増加しています。

これらの精密水中施工を実現するためには、小型水中バックホウをはじめとした水中施工機械での施工が不可欠となりますが、目視が不可能な水中での施工では、施工機械の絶対位置を高精度に取得できるシステムと、リアルタイムに位置・姿勢を描画しオペレータへ情報提供する水中デジタルツイン技術が必要となります。

  • デジタルツインとは、フィジカル空間(現実世界)に存在する実物のデジタルコピーをサイバー空間(仮想世界)で作成する技術です。
図-1-1 水中デジタルツイン
図-1-1 水中デジタルツイン
図-1-2 水中デジタルツイン
図-1-2 水中デジタルツイン
図-1-3 水中デジタルツイン
図-1-3 水中デジタルツイン
図-2-1 陸上からの目視状況(写真)
図-2-1 陸上からの目視状況(写真)
図-2-2 陸上からの目視状況(写真)
図-2-2 陸上からの目視状況(写真)
図-3 水中施工機械の遠隔操作
図-3 水中施工機械の遠隔操作

2. 実証試験

熊谷組保有の高精度水中測位システム「アクアマリオネット」により計測した位置・姿勢を、サイバー空間上にリアルタイムで再現させる水中デジタルツイン技術の検証のため、国立研究開発法人 土木研究所の円形水槽(直径20m、水深20m)にて検証試験を実施しました。

試験では、円形水槽の水上側にSONARセンサーを固定し、水中移動体を模擬したフレームをクレーンにて水槽内へ投入しました。水中移動体模擬フレームの4隅にもSONARセンサーを取り付け、水中と水上側の複数のSONARセンサー間の音波到達時間により水中移動体の位置・姿勢を算出します。

一般的なSONARによる計測は、水温・塩分濃度・水深により変化する水中の音速を異なるシステムで計測し、後処理で補正する事で水中の距離を算出しています。一方「アクアマリオネット」では当社開発の独自のアルゴリズムにより、世界初の音速自動補正機能を実現しています。これにより時間を要する音速計測が不要となり、リアルタイムかつ高精度の測位が可能となっています。

音波を利用する水中計測は、円形水槽のように円筒状壁面・水底・水面に囲まれた音波の多重反射が発生しやすいマルチパス環境下での計測は不向きですが、高い距離検知能力とロバスト性(頑強性)の高い計測方式の「アクアマリオネット」では、位置・姿勢をリアルタイムにサイバー空間上に再現でき、激しいマルチパス環境下において、水深20mでの計測可能である事を実証しました。

図-4 円筒水槽(マルチパスのイメージ図)
図-4 円筒水槽(マルチパスのイメージ図)

3. 今後の展開

今回、ダムや護岸のコンクリート構造物の近接地でのマルチパス環境下でも、安定した位置計測を実現できました。これにより水中でのリニューアル工事などへロボット技術を高精度に活用できることを示すことができました。今後は、水中施工機械の遠隔操作に関するハードウェア・ソフトウェアを充実させ、水中測位システムと連動させる事により、水中の無人化施工の実用化を進めます。

高水圧・視界不良の水中での施工を潜水士無しで実施する事が可能となるため、河川・海洋・港湾・ダムでの水象条件によらずに利用可能な高精度の遠隔操作・自動化水中施工システムの実現が可能となります。

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