- 支える
中国自動車道(特定更新等)北房IC
- 社会を支え、人々の生活を支える 高速道路をリニューアルする
- 全国で初となる大規模更新・修繕プロジェクト
- 社会のニーズを見据えて勉強会を立ち上げる
- 熊谷組ならではの総合力を発揮
- 各社の技術や知恵を連携させて
- 西日本豪雨の災害復旧工事に力を尽くす
- これからの日本の社会を支える仕事
- 【お客様からのコメント】社会を支えるインフラであり続けるために
- 【技術の紹介】画期的な効率化を実現するコッター床版工法
- 工事概要
社会を支え、人々の生活を支える 高速道路をリニューアルする
高速道路の老朽化が深刻な社会課題になっています。その課題に向けて、全国の高速道路で大規模なリニューアルプロジェクトが動き始めています。
2017年7月、中国自動車道の岡山県内の区間で異業種JV(共同企業体)による大規模更新・修繕工事が始まりました。
全国の高速道路でも初となる多様な技術やノウハウを連携させた総合プロジェクト。熊谷組は総合建設業ならではの力を存分に発揮し、このプロジェクトの中核となって社会を支えています。
全国で初となる大規模更新・修繕プロジェクト
中国自動車道は、大阪府吹田市から山口県下関市まで、中国地方の中央部を東西に貫くように走る高速道路です。全線開通したのは約36年前、総延長は500km以上。瀬戸内海沿いを走る山陽自動車道とともに、中国地方を支える大動脈となっています。2018年7月の西日本豪雨の際には、分断された山陽自動車道のバックアップとして生命線的な役割を果たしました。
2017年7月、この中国自動車道のほぼ中央部、岡山県内の北房IC~大佐スマートIC間上り線で異業種JVによる大規模なリニューアル工事がスタートしました。熊谷組は、このプロジェクトの代表企業として全体統括および土木工事を担っています。
日本における高速道路の総延長は約9,341km(2017年現在)。社会のインフラとして経済や生活を支える一方で、近年ではその老朽化が社会課題としてクローズアップされています。
中国自動車道をはじめ西日本地域の高速道路を管理運営するNEXCO西日本では、このような課題を抜本的に解決し、高速道路ネットワークの機能を永続的に維持していくために、「高速道路リニューアルプロジェクト」に着手しています。
その大規模更新・修繕事業において初弾となるのが今回のプロジェクトです。いわゆる「甲型」と呼ばれる共同施工方式による異業種JVは、全国の高速道路でも初の取組みであり、業界から注目を集めています。
社会のニーズを見据えて勉強会を立ち上げる
「今回のプロジェクトは熊谷組とオリエンタル白石、日本橋梁の3社によるJVとなっています。熊谷組はのり面補強などの土木工事を行うとともに、床板取替工事を担うオリエンタル白石、鋼製の橋梁工事に実績のある日本橋梁を取りまとめ、プロジェクト全体の中核的な役割を果たしています」
そう話すのは熊谷組 中四国支店の副支店長、山下文章です。山下は、今回のプロジェクトのキーパーソンのひとりとして、その下地づくりに取り組んできました。
「高速道路の大規模なリニューアルを支えていくためには、これまでにない総合的な体制が必要となります。私たちは、ゼネコンを中心とした専門性を持った異業種の連携が鍵になると考え、各社に声をかけて共同の勉強会を重ねてきたのです」
日本の高速道路において大規模な更新・修繕が検討され始めたのは2013年頃のこと。業界の動きに先駆けて山下たちは勉強会を立ち上げ、工事の効率化や工期短縮のための技術、さらには安全管理体制の構築などを検討し、NEXCO各社に提案を行ってきました。
このような流れの中、NEXCO西日本による今回の土木更新工事の入札が公告されたのは2016年11月のこと。この入札では、見積に加えて技術提案も評価される技術選抜見積方式が適用されました。
「勉強会で検討してきた技術や工夫を随所に反映させました。このような技術提案が高く評価された結果だと考えています。今後、全国の高速道路に広がっていくはずの異業種JVによるリニューアル工事の初弾となる入札です。熊谷組JVに落札が決まった時には身が引き締まる思いでした」
熊谷組ならではの総合力を発揮
このプロジェクトは、中国自動車道の北房IC~大佐スマートIC間上り線の約17kmにわたる区間において、7つの橋の床版取替をはじめ、鋼トラス橋の部材補修、のり面補強など複数の補修工事を並行的に実施するものです。北房IC近くにある作業事務所では、JV3社の約30名の社員がチームとなって作業に取り組んでいます。このうち熊谷組の社員は13名。さらにグループ会社であるガイアートの社員4名が加わっています。
プロジェクトの現場を統括する作業所長の的場重道は次のように話します。
「作業の中でもメインとなるのが、7つの橋梁での床版取替工事です。2018年度に2橋梁が完了しており、今年度は3橋梁を施工します。現在がまさに工事の山場というわけです」
高速道路などの橋梁は、橋桁の上にコンクリート製の床版を敷き、その上にアスファルトを舗装するというのが基本的な構造となっています。今回の工事では、古くなった床版をより強度の高いプレキャストPC床版に取り替えます。大型クレーンを使って1枚約12tという床版を約680枚も架設する大規模工事です。
工事期間はその区間となる上り線を通行止めとするため、あらかじめ下り線を対面通行とした迂回路を確保しなければなりません。迂回路の確保にあたっては、ガイアートのノウハウが発揮されました。
さらに現場は標高の高い山間部に位置し、氷雪の影響のため、11月中旬~3月の冬期は対面通行規制ができないという条件の下で施工を行わなければなりません。
「大規模な更新工事ならではの難しさもあります。たとえば新設の工事であれば基本的に設計図の通りに進めていけばよいのですが、リニューアル工事では作業の途中で新たな補修箇所が見つかることもあり、臨機応変に対応していかなければならないのです」
そう話すのは工務課長の桑田聖久です。桑田は、作業所長の的場を補佐して現場を管理し、お客様であるNEXCO西日本との調整などを担当しています。困難な環境の中で、複数の異なる工事を連携させて効率よく迅速にプロジェクトを進めていく。そこに、さまざまな現場で鍛えられてきた熊谷組の経験とノウハウが活かされているのです。
各社の技術や知恵を連携させて
「皆さんにはそれぞれの会社を代表して参加し、技術者としてのプライドがありますから、最初の頃は本音の意思疎通が難しかったかもしれませんね」
プロジェクトの雰囲気について、全体をマネジメントする立場にある的場はこのように話します。そこでコミュニケーションを密にするためにさまざまな工夫を凝らしました。
タブレット端末の活用もそのひとつです。JV3社の全社員に加え協力会社の職長にも端末を配り、毎日行われている打合せの効率化を図りました。現場から往復すれば1時間ほどかかる作業所事務所まで戻らなくても、端末を利用して会議を行うことができ、とても好評です。プロジェクト専用のポータルサイトを立ち上げ、掲示板機能などを利用して情報の共有も行っています。また、作業所内の敷地でバーベキューを行ったりゴルフコンペを開催したり、コミュニケーションの充実を図り、さまざまなイベントを開催しています。
「最近ではひとつのチームとして一体感が出てきたように思います。先ほど話したようにリニューアル工事の現場では想定外の補修が発生することが多くあります。このような場合でも各社のノウハウと技術を持ち寄ることで柔軟に対応でき、効率的かつ迅速な作業が可能になるのです」と桑田は話します。
NEXCO西日本では、今回の工事期間中に新たに4つのトンネルにおける補修工事を発注しています。このような追加工事の受注も、異業種JVのメリットが評価された結果といえるかもしれません。
西日本豪雨の災害復旧工事に力を尽くす
後に「西日本豪雨」と呼ばれることになった激しい豪雨が中国地方を襲った2018年7月7日、工事現場のパトロール中の的場のスマートフォンに着信がありました。NEXCO西日本の事務所長からの電話でした。
「工事区間の近隣にある上熊谷地区で盛土が崩落し中国自動車道が通行不能になっている、熊谷組で応急復旧工事ができないかという打診でした。突然の、しかも直接の電話で驚きましたが、すぐにその場で責任を持って対応しますと返答をしました」そう語る的場の言葉を引き継いで、桑田は次のように話します。
「私たちの現場の近くでの災害ですし、熊谷組を信頼いただいて要請を受けたわけですから、これは自分たちがやり遂げるべきだと。現場にいた社員たちはみんな同じ気持ちだったと思います」
熊谷組の行動は迅速でした。翌8日には本社および中四国支店から応援の社員が駆けつけ、熊谷組グループの総力をあげて復旧にとりかかりました。災害発生から2日後の9日には2車線による応急的な通行を実現させ、約1カ月後には4車線による通行を再開させました。
これからの日本の社会を支える仕事
今回のプロジェクトでは、交通規制を行いながら高速道路を走る自動車のすぐ近くで工事を行います。そのため、安全・安心な通行を支えることがなによりも重大な使命となります。加えて周辺地域にも配慮し、環境保全などについても万全の対策を行っています。この近隣地域での災害復旧工事も、このような社会や地域を支えるという熊谷組の姿勢のもとに進められたものです。
熊谷組は、プロジェクト全体を統括するとともに、のり面の補強など土木工事も担当しています。これは、盛土のり面の水抜きボーリングやグラウンドアンカーの設置などによって盛土切土のり面を補強するものであり合計25か所で施工します。さらに4つのトンネルの補強工事も追加され、今年度からスタートしています。プロジェクトは、約3年半の歳月をかけて2021年2月に完了の予定です。
そのプロジェクトを担当している的場と桑田は口を揃えて次のように話します。
「これまで私たちが多く経験してきた新設の工事と比べれば、リニューアル工事は地味かもしれません。しかし、これからの日本の社会の変化を考えれば、非常に重要となる技術であり経験です。現場では社員の誰もが誇りを持って仕事に取り組んでいます。ここで得た経験や知識を今後は若い社員たちに伝えていきたいと思っています」
高速道路ばかりでなく、一般の道路や橋、トンネル、さらに公共施設など、いま日本では社会インフラの老朽化が深刻な社会問題となっています。このような社会のニーズに的確にこたえていくとともに、ビジネスチャンスに結びつけていくために、熊谷組では新たに橋梁イノベーション事業部を立ち上げました。このプロジェクトをはじめさまざまな現場で蓄積する経験を礎に、熊谷組はこれからも日本の社会を支えていきます。
【お客様からのコメント】社会を支えるインフラであり続けるために
NEXCO西日本では、大規模な更新・修繕工事を実施する「高速道路リニューアルプロジェクト」に取り組んでいます。中国自動車道を例にあげても、建設から三十数年が経過し、従来までのような応急的な改修ではすでに対応できなくなっています。その課題を抜本的に解決していくためには、異業種JVによる複数の工種を同時に施工することも有効と考えています。事業の円滑な実施には、ユーザーへの影響を最小限に抑えることも求められており、ゼネコンの総合力が欠かせません。
今回のプロジェクトに加えて、上熊谷地区での応急復旧工事でも力を発揮してくれ、熊谷組には大きな信頼を寄せています。信頼できるパートナーが身近にいることは、私たちの事業を推進する上でとても重要なことです。プロジェクトでは毎週ミーティングを重ね、私たちの最重要の命題である「安全・安心」についても密接に情報の共有を図り、万全の体制のもとに工事を進めています。
大規模な更新・修繕、激甚災害への対策などばかりでなく、サービスエリアの活用や地域との連携など、これから高速道路にはさらに新しい機能や価値が求められてきます。熊谷組をはじめ多くの企業との連携を深め、社会を支えるインフラとして革新に取り組んでいきたいと考えています。
中国支社 津山高速道路事務所
副所長 西山 晶造 様
中国支社 津山高速道路事務所
改築課長 安野 克彦 様
【技術の紹介】画期的な効率化を実現するコッター床版工法
熊谷組とグループ会社のガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社は、道路橋の床版施工を大幅に効率化する新工法「コッター床版工法」を開発しました。コッター式といわれる継手を使うことで、従来の工法に比べて作業日数を約50%短縮。床版面積の99%をプレキャスト化でき、さらに熟練工が不要などさまざまな特長を持っています。今後は、高速道路での床版取替をはじめ、社会インフラの更新・修繕への拡大に取り組んでいきます。
工事概要
中国自動車道(特定更新等)北房IC~大佐スマートIC間(上り線)土木更新工事
工事場所 | 岡山県真庭市~岡山県新見市 |
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工期 | 2017年7月~2021年2月 |
発注者 | 西日本高速道路株式会社 |
施工者 | (株)熊谷組・オリエンタル白石(株)・日本橋梁(株)特定建設工事共同企業体 |
工事概要 | 橋梁床版取替(7橋、延長1,416m)、鋼トラス橋部材補修(2橋)、 床版取替工 約15,000m2 (プレキャストPC床板約680本) 水抜きボーリング工 約7,600m かご枠工 約10箇所 グラウンドアンカー工 8本 トンネル覆工補強工 1式 |