グループ会社社長座談会
社会にとって価値ある存在であるために、
熊谷組グループとしての未来の姿を語り合う
熊谷組グループでは、各社の自主独立性を尊重することをグループ経営の基本方針としています。一方、社会に求められる企業グループとしてさらに成長していくためには、その強みを活かしつつ、各社の連携を深めてグループとしてのガバナンスを充実させていくことが欠かせません。グループ会社8社の社長が集い、熊谷組グループのこれからのあり方について率直な議論を行いました。
写真前列左から
テクノスペース・クリエイツ株式会社 代表取締役社長 山下 直幸
株式会社熊谷組 取締役社長 櫻野 泰則
ケーアンドイー株式会社 代表取締役社長 北川 宏幸
後列左から
華熊營造股份有限公司 董事長 新屋 忠彦
株式会社テクニカルサポート 代表取締役 志村 浩
株式会社ガイアート 代表取締役 石塚 周平
テクノス株式会社 代表取締役社長 森田 栄治
株式会社ファテック 取締役社長 青野 孝行
[2022年度における印象的だった取組み]
JV工事などに加え、社内の制度改革などでも熊谷組と連携する
櫻野
今日は、熊谷組グループのこれからのあるべき姿について、皆さんと率直な意見を交わしたいと思っています。まず始めに、2022年度を振り返って印象的だった取組みなどを聞かせてください。
石塚
ガイアートではJVでの施工など熊谷組との協業に力を入れています。2022年度も橋梁工事などをJVで受注しました。また、社員の処遇面などでも熊谷組のプロジェクトに社員を参加させるなど連携を深めています。これらが実を結ぶのはもう少し先のことですが、様々な成果のあった1年だったと感じています。
北川
ケーアンドイーでも熊谷組とのJV組成を進め、2023年度は3つのプロジェクトが立ち上がりました。また、当社独自の取組みとしては、東京ビッグサイトで開催された展示会に単独で出展しました。この大きな狙いは、当社の認知度アップ。今年度は関西や九州での展示会への出展も計画しています。
新屋
華熊營造(以下、華熊)にとって一番のニュースは、台湾・台北駅前に建設される超高層ツインタワー「台北ツインタワーC1.D1」を受注したことです。当社はこれまでにも台北のランドマークとなる大型案件を次々と手がけており、台湾における当社の評価が揺るぎないものになりつつあることを実感しています。
森田
テクノスでは新しい職務制度を策定しました。この新職務制度は、完全ジェンダーフリーやパート職の廃止など、公平性・透明性のある評価体系を基盤としています。当社では、社員の和とやりがいを第一に考えており、早くも社員の意識に変化が表れているように思います。
青野
ファテックと熊谷組が共同で開発した技術商品の一つに「FCライナー工法」があります。2022年度はこの商品の受注が伸び、お客様からの評価も高く、将来の柱となる商品に成長すると手応えを感じています。また、熊谷組をはじめ当社やガイアートなどが携わった高速道路リニューアル工事が日建連表彰「土木賞」を受賞しました。これも印象的なニュースです。
山下
テクノスペース・クリエイツでは、2022年度に売上高が近年例を見ないほどに伸びました。グループ内外から受注が集中し、社員は大忙しでした。その分、数多くの課題にも直面しましたが、新たな成長に向けて足がかりとなる1年だったと思います。
志村
テクニカルサポートでは、熊谷組グループにおける事務のアウトソーシング事業などを行っています。2022年度は熊谷組で新しい業務システムが導入され、当社の社員もワーキンググループに参加して立ち上げを支援しました。社員にとっても新しい経験を積むことができたと感じています。
[サステナビリティへの貢献]
SDGsへの取組みは熊谷組グループにとって重要な経営課題
櫻野
ガイアートの石塚さんとケーアンドイーの北川さんは、この春に社長に就任したばかりですよね。このように集まってみると、皆さん、キャリアも個性も多様で、それがグループの推進力になっていると感じます。事業内容も各社で多様ですが、最近、特に意識するような事業環境の変化はありましたか?
石塚
やはり大きな動きとしては、カーボンニュートラルをはじめとする環境課題への対応だと思います。ガイアートの主力事業である道路舗装では、材料の製造や道路での施工に熱となるエネルギーを用い、多くのCO2を排出します。これらの削減は業界全体での課題でもあり、他社と共同での技術開発も考えています。
北川
ケーアンドイーは、カーボンニュートラルの取組みについては社員の意識改革に取り組んでいます。現場の小さな活動から広げていこうと考えています。同時に環境に配慮したリニューアルに注力すべく提案力を強化したいと考えています。
青野
ファテックは技術商社ですので直接施工に携わることはないのですが、扱い商品の中には改善すべきものが少なくありません。プラスチック製型枠「プラモールド」もその一つであり、リサイクル素材への転換を検討しているところです。
森田
テクノスでは主力の豊川工場で再生可能エネルギーの利用拡大を進めています。再生可能エネルギーについては、熊谷組と共同でPPA※事業の参画なども検討しており、環境課題への対応ばかりでなく、次なるビジネスチャンスにつなげていきたいと考えています。また、本社では、熊谷組の取組みも参考にしながら、SDGsの目標と紐付けた様々な活動を進めています。
- PPA「Power Purchase Agreement(電力販売契約)」の略
[DXの推進]
働き方改革を推進するとともに、次なるビジネスチャンスにつなげる
北川
これは働き方改革にも関連してくると思うのですが、DXの推進も重要な経営課題ではないでしょうか。ケーアンドイーでは、施工管理にデジタルツールを導入し、映像を使ってお客様に遠隔から施工を確認してもらったり、リモート会議を行ったり、業務の効率化を推進しています。
山下
最近、建設業界におけるデジタル化の大きな流れにBIMがあげられますよね。施工図作成を主な事業とする当社では、このBIMの利用拡大に向けて人財育成や設備導入を積極的に進めています。
櫻野
このBIMの導入にあたっては、熊谷組もテクノスペース・クリエイツにいろいろ支援してもらっています。
山下
当社では、施工図作成に加えて、教育研修などの事業も行っています。BIMの広がりは、当社にとってビジネスチャンスと考えています。
志村
それはテクニカルサポートにとっても同様だと思います。デジタル化の動きは当社の事業にとって大きな環境の変化ですが、そこから次のビジネスチャンスを見出していきたいと考えています。
森田
BIMによるビジネスについては、テクノスでも新しいプロジェクトを立ち上げてチャレンジしています。熊谷組グループとして各社で連携を進めていきたいですね。
[働きがいのある風土]
グループ力をフルに発揮させて「人」を育てていく
櫻野
先ほど森田さんから新しい職務制度を立ち上げたという話がありました。このような働き方改革や人財育成はグループ共通の課題だと思いますが、皆さん、どう考えていますか?
志村
テクノスの新職務制度は完全ジェンダーフリーということですが、そこが素晴らしいと思います。当社では女性が社員の約7割を占めているので、テクノスの制度も参考にして、社員がいきいきと働き意欲的にキャリアアップを目指せる環境づくりに取り組んでいきたいですね。
山下
テクノスペース・クリエイツでも年々女性の比率が高まり、現在は約半数が女性社員です。最近では、男性社員をいかに採用するかが課題になっています。
北川
ケーアンドイーでは最近、施工現場の所長も女性社員が担うようになってきました。女性の所長と若手の男性社員を組み合わせるなど、適材適所で人財の育成を図っています。
櫻野
先日、台湾に出張して華熊の現場をいくつか訪れましたが、台湾でも女性の活躍が目立っているようですね。
新屋
華熊でも現場の副所長を担う女性社員がいます。私が社長のうちに、ぜひ女性所長を誕生させたいと考えています。 いずれにしても女性活躍をはじめとしたダイバーシティの推進は、熊谷組グループにとってこれからの重要な課題でしょうね。今日、こうしてグループ会社の社長が集まってみても全員が男性なのですから。
櫻野
そのとおりですね。将来的には、このようなメンバーの中にも何人かの女性が加わることが理想でしょう。
石塚
人財採用では、熊谷組の知名度の高さがメリットになっていることは確かです。そのイメージを活かしつつも、私はグループ各社がそれぞれの魅力を高め、その魅力を地道に伝えていくことも大切だと考えています。
[グループとしての連携]
社会に求められる企業グループとして存在価値を発揮するために
櫻野
熊谷組グループは、建設業界の中でも、連結売上高でグループ各社が占める割合が高いという特色があります。このような特徴を活かしながら、企業グループとしての価値を高めていくためには今後どのような戦略が重要でしょうか?
北川
私たち熊谷組グループがつくるものは、長年にわたって社会やお客様を支え続けます。熊谷組がつくった建物をケーアンドイーがリニューアルするといったように、グループ各社が連携して建物のライフサイクル全般を網羅できるようになれば、社会への貢献度も高まりますし、ビジネスとしてもさらに広がっていくと思います。
石塚
事業における連携はもちろんですが、先ほどから話題に出ているカーボンニュートラルの取組みや働き方改革、人財育成など、企業の基盤となる部分でも一緒に取り組むべきテーマは多いはずです。各社の社員が誇りを持って仕事に向き合えるような企業グループを目指していきたいですね。
青野
グループとしての付加価値を高めていくためには、各社が開発した独自技術を「商品」として広く販売していくことも必要になります。その役割を担うのが当社だと考えています。
森田
事業での連携ということでは、今後は国内ばかりでなく海外での展開でも重要になると思います。当社ではアジアでの事業展開を推進しており、台湾では華熊との協業を推進しています。
新屋
人財交流なども積極的に進めていきたいですね。熊谷組をはじめ各社の社員を台湾の当社に派遣してグローバルな施工管理や技術を学ぶ。そうすれば、グループとしてのグローバルな経験値を高めていくことができるのではないでしょうか。
[将来に向けてのメッセージ]
誰もがやりがいを持って働き続けられる企業グループを目指して
櫻野
最後に、熊谷組グループあるいは各社の未来に向けたメッセージを聞かせてください。
石塚
私はこの4月に社長に就任して以来、ガイアートがどのような会社を目指すべきかずっと考え続けています。何よりも大切なのはやはり社員。誇りを持って楽しく働ける環境づくりに全力を注いでいきます。
北川
日本には古くから伝わる「三方よし」という経営哲学がありますよね。ケーアンドイーでは、社員が委員会をつくって当社版「三方よし」の実践を進めています。熊谷組グループに、さらには社会にもっと貢献できる企業を目指しています。
新屋
華熊は来年に創立50周年を迎えます。日系ゼネコンとして培ってきた謙虚で誠実な姿勢を大切にしながら、台湾の社会にとってなくてはならない建設会社に成長していきたいと思っています。
森田
私は、「企業は社長の器以上にならない」と思っています。私自身がさらに成長することで、社員も成長する。このことを常に意識しながら、テクノスを社会にとってより魅力的な会社に成長させていきたいですね。
青野
私も、社員にとって理想の会社を目指したいと常々考えています。企業として安定的に利益を生み出すことはもちろんですが、風通しがよく働きがいのある風土づくりに取り組んでいきます。
山下
当社の主力事業である施工図作成では、専門技術を身につけるまでに長い時間がかかります。社員が意欲を持っていつまでも働き続けたいと思うような会社を目指したいですね。
志村
当社にとっても、働きがいのある組織をつくることは最優先で取り組むべき経営課題です。それを当社の次なる成長に結びつけ、熊谷組グループに貢献していきたいと考えています。
櫻野
熊谷組グループは、これまで各社の自主独立を尊重することをグループ経営の基本方針としてきました。しかし、グループのビジョンとしても掲げる「社会から求められる建設サービス業の担い手」を目指すためには、各社の連携を深めて企業グループとして存在感を発揮していくことも重要です。その意味でも、今日のミーティングはとても意義のあるものだったと思います。今後もこのような議論を機会あるごとに重ね、熊谷組グループとしての成長につなげていきたいと考えています。
- 本座談会は2023年4月24日に実施し、情報はその当時のものです。