社外取締役鼎談

サステナビリティと一体化した経営を推進し、 社会から信頼される“よい会社”を目指してほしい。

熊谷組では、客観的な視点を経営に取り入れ、コーポレートガバナンスの充実を図るために社外取締役を選任しています。吉田栄氏、岡田茂氏、桜木君枝氏の3人の社外取締役に話を伺いました。

  • 吉田 栄
    吉田 栄
  • 岡田 茂
    岡田 茂
  • 桜木 君枝
    桜木 君枝

取締役会では異なる視点からの発言を意識している

吉田
桜木さんと岡田さんが熊谷組の社外取締役に就いて1年余りが過ぎました。改めてお聞きしますが、熊谷組の印象はどうですか?

桜木
人と人のつながりをとても大切にしている会社という印象が強いですね。それは取締役会の雰囲気にもよく表れていると思います。議長の櫻野社長が気を配ってくれることもあり、取締役会では私たち社外取締役の声を真摯に聞こうという姿勢が感じられます。そこは素晴らしいところだと思います。

岡田
それは私も同感です。とてもオープンな雰囲気の会社ですね。私は建設業とは異なる業界で経験を積んできたこともあり、取締役会ではあえて違う視点からの発言を心がけています。多少耳障りなこともあると思うのですが、執行側・事務局の皆さんは常にきちんと対応してくれています。
吉田さんは社外取締役になられて2年目ですが、取締役会の議論などで変化を感じていますか?

吉田
私も1年目は、議論の引き金になるようにあえて煙たがられるような発言を意識していました。2年目に入り、更に突っ込んだ質問や意見を発言するように心がけていますが、お二人がおっしゃるように、常に真っ正面から受け止めてくれる雰囲気がありますね。私たち3人の社外取締役のバックボーンも多様で、その発言が反映されて取締役会の議論も活性化したように感じています。

建設業界だけにとどまらない、もっと広い視野に立って

岡田
取締役会にあたっては事前資料の準備や説明も非常に丁寧だと感じています。取締役会の議論について一つ課題をあげるなら、一部の案件で、取締役会議題に上がる前までのプロセス、たとえば経営会議で十分な議論が交わされたのかなど、わかりにくい場合があります。このあたりは改善の余地があると思います。

桜木
執行に関わる個別の議案が中心になっており、取締役会で本来議論すべき事項が十分に議論されていないと感じます。取締役会が本来果たすべき主な役割のひとつは経営のモニタリングです。そのためには熊谷組の経営戦略といった、もっと高い視点での議論に時間を割くべきだと思います。また、議論が建設業界だけで完結してしまっていることも気になります。先日も、再生可能エネルギーに関わる事業が議案にあがりましたが、このような新しい事業についてはもっと広い視野に立って議論すべきではないでしょうか。

吉田
熊谷組が持続的な成長を果たしていくためには何に取り組んでいくべきなのか?それこそが取締役会で交わすべき大切な議論だと考えます。私たち社外取締役が担う役割は、第三者的な視点を交えてその議論をより一層深めていくことだと思っています。

第三者的な視点を交えて取締役会の議論を深めていく

吉田
社外取締役間では、空いた時間でフリートーキングをしています。その時にしばしば話題になるのが売上高や営業利益など予算・実績管理方法です。

桜木
この問題については、私も就任当時から違和感がありました。熊谷組ばかりでなく、建設業界全体に共通する課題なのかもしれません。

岡田
一般的な企業の感覚では、年間計画・月次計画があり、月次進捗状況により戦略を修正していきます。それを繰り返しながら四半期、年間の事業を管理していきます。ところが、このあたりの管理が曖昧に感じることがあります。おそらく各事業部門では把握しているのだろうと思うのですが、それが社外取締役の立場では見えにくい状況にあります。

吉田
業界特有の性格などによるところが大きいのではと感じます。社員と接していてひしひしと伝わってくるのは、建設業は社会の基盤を支える大きな責任を負っているという強い自負です。これは大変崇高なスピリットであり絶対に尊重すべきものです。その反面、優先順位として予算や実績の管理といった数字へのこだわりが他業種より弱いのではと社外取締役は感じるのかもしれません。コミットした数字をどう達成していくのかPDCAにこだわった議論を取締役会で行っていきたいと思います。

岡田
私たち社外取締役は、株主の代表として経営をモニタリングする立場にあります。その役割を果たすためにも、第三者的な目線で見て改革すべきと感じることについては、会社に明確に伝えてくべきだと思います。

サステナビリティは経営戦略そのものである

岡田
これからの熊谷組の経営を議論する上で欠かせないテーマとなるのがサステナビリティです。

桜木
熊谷組の場合、事業そのものが社会インフラ構築に深く関わっているだけに、サステナビリティを意識した経営の下地はずっと以前から存在していると感じています。しかし、これからの社会が企業に求めるサステナビリティとは、経営戦略そのものです。それを考えると、さらに高い意識をもって、中長期的な経営戦略としてサステナビリティを考えていくこと、すなわちサステナブル経営が必要だと思います。

岡田
先日、サステナビリティに関わる社員アンケートが実施されました。その結果によると、SDGsへの認知度は80%を超えており、日本の企業の平均を大きく上回っています。これは素晴らしいことです。ところが、SDGsの17の目標やさらに詳細なターゲットなどになると、大きく認知度が低下する。このあたりにも課題が浮き彫りにされているように思います。
実際、取締役会で用意される資料などを見ても、一部のグループ会社では、事業の目標とSDGsへの紐付けが必ずしも明確ではありません。最近、だいぶ変化しつつあると感じますが、グループ全体にまで視野を広げ、さらなる意識の浸透が必要なように思います。サステナビリティを、会社としての活動ではなく、社員一人ひとりが自分ごととして捉えられるような環境を整えていくべきです。

吉田
サステナビリティは本来、企業経営と事業活動を一体化させていくべき課題です。それを考えると、SDGsについても17の目標にすべて平均的に取り組むのではなく、熊谷組の事業に関連が深い分野にフォーカスを当て、そこをさらに深堀することで新たな事業チャンスを切り開いていくといった姿勢が重要だと考えます。

桜木
社会との関わりということでは、コンプライアンスをはじめコーポレート・ガバナンスの充実も非常に重要なテーマです。コンプライアンスの問題については、建設業界ではこれまでもしばしば取り上げられてきました。だからこそ、常に意識して取り組んでいくべき課題であるはずです。

社員が誇りを持って働ける“よい会社”を目指してほしい

社員が誇りを持って働ける“よい会社”を目指してほしい

吉田
私は、熊谷組が持続的な成長を果たしていくために業界内で「これだけは負けない」という自他ともに認める“強み”を見出し、鍛え上げていってほしいと考えています。それは技術でも人財でも、バリューチェーン上で何でもよいです。ぜひその“強み”を社員の皆さん全員が認識し、大きな幹に育ててほしいと思います。

桜木
私は、熊谷組には「良い会社」を目指してほしいと思っています。顧客、取引先、社員、株主、そして社会など、あらゆるステークホルダーと確かな信頼関係を築くことができる会社。それが、私が思い描く「良い会社」です。熊谷組は、その「良い会社」へと成長できる素晴らしい力を持っています。それを顕在化させるために、社外取締役としての役割を果たしていきます。

岡田
社外取締役についてまだ1年ほどですが、私は熊谷組が大好きです。なによりも「人」がよい。豊富な人材が揃っており、これからさらに成長する可能性を秘めている会社だと感じています。社員の皆さんの子どもが成長して、就職活動などを通じて改めて熊谷組を知ったとき、「私の家族は“よい会社”に勤めているのだな」と思えるような会社に発展できるように力を尽くしていきたいと思っています。

  • 所属・役職・内容は取材当時のものです。