- プレスリリース
EVワイヤレス給電に対応したプレキャストコンクリート版の実証実験を開始しました
2025年05月23日
株式会社熊谷組(取締役社長:上田真)は、学校法人東京理科大学、株式会社ガイアート、ジオスター株式会社と共同で、つくば技術研究所内の道路に試作ワイヤレス給電対応プレキャストコンクリート版を敷設し、電気自動車へ取り付けた受電システムへのワイヤレス給電実験を実施しました。
1. 背景
脱炭素社会の実現は持続可能な社会を築くための喫緊の課題であり、特に電気自動車(EV)の普及は二酸化炭素排出量の大きな低減が期待できます。しかしながら、航続距離(バッテリーの大型化)や十分な充電設備(時間)の確保などの課題がEV普及の大きな壁となっています。このような課題に対してEVへワイヤレス給電する技術研究が注目されています。
EVへの走行中ワイヤレス給電(DWPT:Dynamic Wireless Power Transfer)により、小型のバッテリーでも十分な航続距離で走行することが期待できます。EVワイヤレス給電では、一般的に道路(舗装体)からの給電が想定されています。これに対応するような舗装体などのインフラ整備はワイヤレス給電の実用化に欠かせない技術の一つとなります。
当社は2022年度より、学校法人東京理科大学(居村研究室)、株式会社ガイアート、ジオスター株式会社と共同で、コイルの磁界共振結合を利用したワイヤレス給電のための舗装体を想定したプレキャストコンクリート(PRC)版の研究開発に取り組んでいます。
2. ワイヤレス給電対応PRC版
本研究開発では高耐久、高効率で施工性、メンテナンス性に優れたワイヤレス給電用舗装体の実用を目指しています。
舗装材としてはアスファルトとコンクリートが一般的で、アスファルト舗装は工事期間が短く安価ですが、熱変形やひび割れによる給電効率への影響、舗装の劣化が考えられます。一方で、一般的なコンクリート舗装は比較的に高耐久で変形しにくいものの、コンクリート中の水分による給電効率の低下や工事期間などの施工性が課題となります。
当社は株式会社ガイアート、ジオスター株式会社と共に開発したコッター式継手技術を活かし、ワイヤレス給電に対応したPRC版を提案し、耐久性の高い樹脂材を利用した送電コイルの設置を試みています(特許出願中)。
この舗装体は高耐久で変形しにくいこと、高効率な給電を特徴としています。加えて、施工性に優れ、即日交通開放も可能となります。また、送電装置の故障・経年劣化を想定して交換できるように設計することで、容易なメンテナンスも可能となります。

3. 実験
試作ワイヤレス給電対応PRC版をつくば技術研究所内の道路へ敷設してEVへ取り付けた受電システムへの給電実験を実施しました。
初期的な確認実験でありましたが、給電効率が90%を超える結果も得られました。また、本実験ではPRC版の中の鉄筋の代替品としてアラミド繊維を用い、給電効率のさらなる向上を検証しています(特許出願中)。


4. 今後の展開
実用を想定した大電力実験や製品化を想定した設計の見直しを進めつつ、つくば技術研究所の送迎車を利用した停車中ワイヤレス給電の試験運用を目指しています。
将来的なDWPTの実用化に向けて、段階的に研究開発を進めます。
お問い合わせ先
株式会社熊谷組 広報部広報グループ
電話:03-3235-8155
株式会社熊谷組 技術本部新技術創造センターロボットIT開発グループ
電話:029-847-7505