Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)の開発-地質の状態に応じて正確に地山掘削-

2024年08月28日

株式会社熊谷組(代表取締役社長 上田 真)は、地質の状態に応じて地山掘削を正確に行うシステムとして、3次元の地質・土質モデルにとマシンガイダンスシステムを組み合わせた「Geo-MG®(ジオマシンガイダンス®)」を開発しました。
このシステムでは、マシンガイダンスシステムに3次元地質・土質モデルを組み込むことにより重機を適切な地山へ誘導し、正確かつ合理的に掘削作業を行うことができます。

当社では熊本県発注の大切畑地区県営農地等災害復旧事業第1号(大切畑ダム)でこのシステムを適用し、その有効性を確認しています。

1. 開発の背景

建設工事に伴い副次的に発生する土砂(建設発生土)は、新たに土質材料を採取することに伴う自然環境への影響が課題とされており、建設発生土の有効活用が求められています。
建設発生土の有効利用率を高めるためには、建設発生土の質を向上させること(盛土材料の質の向上)、および需要と供給のタイミングを合わせることが重要と言われています。そして、盛土材料の質を向上させるためには、地質の状況に応じて正確に地山を掘削し、適合材料への不適合材料の混入を防ぐことが重要と考えられます。しかしながら、目視できない地中のことであることから、地質の状態の判断についてはオペレーターの感覚に頼っている状況です。
こういった背景から、掘削中に地質境界へ重機を誘導し、効率的に建設発生土の分別を行うことができるシステムを開発しました(図1)。このシステムを利用することにより、地質の状態に応じて正確に地山掘削することが可能となるため、掘削地山の地質ごとの分別が容易となり、盛土材料の質の向上や建設発生土の有効利用率が高まることが期待されます。

2. Geo-MG®の概要

地山掘削では、位置情報と3次元の設計形状から重機の操作を補助するマシンガイダンスシステムが広く用いられています。通常、マシンガイダンスに用いるデータには、地山の性状についての情報は含まれていません。
今回開発したシステムは、3次元地質・土質モデルと設計掘削形状の3次元モデルとを合成させた掘削形状(合成掘削形状)を生成し(図1)、マシンガイダンスシステムに合成掘削形状を取り込むことによって、地中の地質境界面を可視化し、重機を地質境界へ誘導することにより、のり面整形を行いながら地質ごとの土石材料の分別を行うことができるシステムです(図2)。
また、掘削範囲内の地質・土質モデルからボクセルを作成し,地質別に掘削土量を算出することが可能となっており、施工計画と組み合わせることにより、いつ頃、どこで、どの土石材料が、どの位の量で産出するかを把握することが可能となっています(図3)。

図1 合成掘削形状の生成イメージ
図1 合成掘削形状の生成イメージ
図2 Geo-MG®の概念図
図2 Geo-MG®の概念図
図3 ボクセルモデルと体積計算例
図3 ボクセルモデルと体積計算例

3. 大切畑ダム堤体復旧工事における活用(検証)

大切畑ダム堤体復旧工事では、ダムの貯水池容量を確保するために地山の掘削を行うとともに、発生した建設発生土を有効活用して堤体を構築する計画となっています。このため開発したGeo-MG®を用いて地質境界へ重機を誘導し、地質ごとの分別を行いながら掘削を行いました(図4)。
地質境界面付近で慎重な掘削を行うことで異なる材料の混入を防ぐことができ、手戻り作業をなくしたことや地質変化に伴う材料採取の段取り替えの準備を事前に行えたことにより、地質境界面データを利用しない掘削と比較して、平均で15%程度掘削効率を向上させることができました(図5)。なお、この場合の1日1台あたりのCO2削減量は88.9kgとなります。
また、3次元地質・土質モデルを利用していることから、任意の場所で地質状況の確認が可能となっているため、掘削が完了した箇所から迅速に地質状況を確認し、地質境界面データを更新して3次元地質・土質モデルの精度向上を図りながら施工を進めることができます(図6)。

図4 Geo-MG®を用いた掘削状況
図4 Geo-MG®を用いた掘削状況
図5 Geo-MG®による掘削作業効率化の実証結果
図5 Geo-MG®による掘削作業効率化の実証結果
※「Geo-MG®無」と「Geo-MG®有」を同じ地層に対して同時並行で作業を実施し、運搬台数を比較
図6 Geo-MG®の運用方法
図6 Geo-MG®の運用方法

4. 今後の展開

今後は、Geo-MG®を使用し、かつ3次元地質・土質モデルがある現場へ積極的に展開する予定です。特にダム原石山での効率的な材料採取が可能となることが期待されます。
また、今回のシステムを自動化させ、より効率的なシステムとすることを計画しています。

【お問い合わせ先】

本リリースに関するお問い合わせ先

株式会社熊谷組
経営戦略本部 広報部
電話:03-3235-8155

技術に関するお問い合わせ先

株式会社熊谷組
土木事業本部土木技術統括部 地質技術部
電話:03-3235-8622

株式会社熊谷組
土木事業本部土木技術統括部 土木DX推進部
電話:03-3235-8627