耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手 帝人の高機能繊維強化集成材と熊谷組の木造耐火技術の融合によるイノベーションを目指す

2023年07月13日

株式会社 熊 谷 組 
帝 人 株式会社 

 株式会社熊谷組(代表取締役社長:櫻野 泰則、以下 熊谷組)と、帝人株式会社(代表取締役社長:内川 哲茂、以下 帝人)は、耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手しました。
 本集成材は、帝人が保有する高機能繊維強化集成材「LIVELY WOOD(ライブリーウッド)」と、熊谷組が保有する木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ(ラムダウッドツー)」の技術を融合して実現を目指すものです。一般財団法人建材試験センターで梁の耐火試験を行い、2時間耐火が必要な建築物に適用するための基準を満足する性能を有することを確認しました。
 両社は本集成材を通して中大規模木造建築物の普及を促進し、持続可能な社会の実現を目指します。

1.開発の背景

 近年、環境配慮や国産材活用などの観点から、戸建て住宅以外の住宅や非住宅でも木造が選択されるようになってきており、木造の大スパン化や高層化などが期待されることで、木造建築を構成する部材に求められる性能が高まっています。また、建築基準法により一定の規模以上の建築物は耐火建築物とする必要があり、定められた耐火性能を有した木質部材を使用する必要があります。
 帝人は、「LIVELY WOODⓇ※1」という高機能繊維強化集成材を保有しています。これは、既存の集成材を炭素繊維※2で補強することにより、剛性や強度を高めた集成材で、木造建築物の用途の拡大に寄与できます。一方で、「LIVELY WOOD」は耐火性能を有しておらず、耐火性能が必要な木造建築物に用いることができませんでした。
 熊谷組は、「環境配慮型λ-WOODⅡ※3」という技術を保有しています。これは、芯材を木材として、周囲に耐火被覆層を施すことで耐火性能を確保した木質耐火部材の技術で、耐火建築物を木造で実現できます。一方で、「環境配慮型λ-WOODⅡ」は、芯材の木材は既存の集成材等を基本としており、建築物の大スパン化には木材の部材性能が不足する場合がありました。
 このたび両社は、帝人の「LIVELY WOOD」と熊谷組の「環境配慮型λ-WOODⅡ」を掛け合わせ、お互いの得手不得手を補うことにより、耐火建築物にも利用可能な新しい高機能繊維強化集成材の開発に着手しました。


※1 「LIVELY WOOD」の特徴
  「LIVELY WOOD」は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を集成材の間に挟むことで、木材が持つ軽量性、断
   熱性といった長所を維持したまま、高い剛性や強度を実現した木質複合材料です。梁として用いることで、木
   造建築物の大スパン化などに貢献します。また、国産材として豊富にありながら強度の低さ故に建築材料として
   十分な活用が進んでいない杉の活用に貢献します。
※2 炭素繊維:剛性が高く、熱膨張率が低いため寸法安定性に優れた材料で、鉄の10倍の強度を持ちながら重量は
   鉄の4分の1で、高強度と軽量性の両立を実現しています。
※3 「環境配慮型λ-WOODⅡ」の特徴
  「環境配慮型λ-WOODⅡ」は、木材を芯材とし、周囲に石膏ボードからなる耐火被覆層を施した木質耐火部材で
  す。耐火被覆層と芯材の木材の解体分離が可能な仕様とすることで、建物解体時の産業廃棄物の低減や資源のリ
  サイクルに寄与します。

     LIVELY WOOD                    環境配慮型λ-WOODⅡの構成

2.耐火性能確認試験

 本技術は、「LIVELY WOOD」を芯材の構造部材とし、「環境配慮型λ-WOODⅡ」の仕様の耐火被覆層を施すことを基本とします。このたび一般財団法人建材試験センターで梁の耐火試験を行い、梁の2時間耐火性能を有することを確認しました※4

※4 梁の2時間耐火性能:耐火建築物の最上階から数えて10以上14以内の階の梁に求められる耐火性能です。今回、
  荷重を加えながら2時間の火災を模擬した加熱を与え、火災が自然に鎮火するまでの間に、加熱を受けても構造
  安全性が確保されていること、荷重支持部が炭化しないことなどを確認しました。

耐火試験を実施した試験体のイメージ

3.今後の展開

 本件は、熊谷組と帝人が保有する技術を融合した「耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材」の開発に着手したものです。今後両社は、本集成材の実用化に向けて検討を重ね、本集成材の実物件採用と多様な木造建築物の実現を目指します。また、木材の有効利用を通じた持続可能な社会の実現のために、更なる研究開発を進めてまいります。

お問い合わせ先

[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社熊谷組
経営戦略室 広報部 (電話 03-3235-8155)
帝人株式会社
広報・IR部 (電話 03-3506-4055)

[本製品に関するお問い合わせ先]
株式会社熊谷組 技術本部 新技術創造センター 木材利用開発グループ
担当 : 三宅 朗彦 (電話 03-3235-8617)
帝人株式会社 コーポレート新事業本部 環境ソリューション部門 アライアンスマネジメント部
担当 : 佐藤 嘉弘 (電話 089-965-0915)