解体分離を可能とする木質耐火部材「環境配慮型λ-WOOD」の開発 ~ 中大規模木造建築における持続可能な資源活用を視野 ~

2022年03月04日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、木造建築の解体に際して、主要構造部の分離を可能とする「環境配慮型λ-WOOD」を開発しましたのでお知らせします。なお、中大規模木造建築の主要構造部への適用に向け、木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD®」の耐火構造の国土交通大臣認定(1~3時間)を取得しています。

 建築物への木材の活用は、ESGやSDGsの観点から注目されています。特に、長期間にわたりCOの固定化が可能となる中大規模木造建築は、脱炭素社会への大きな貢献が期待されています。当社が開発の方向性を確認した「環境配慮型λ-WOOD」は、芯材である木材とその周囲を耐火被覆する石膏ボードとの間に接着剤を一切使用しない仕様とすることにより、建設時と同様な状況で木材と石膏ボードの解体分離を容易にする耐火部材です。本開発では、中大規模木造建築における持続可能な資源活用を視野に入れ、将来の解体・廃棄時に木材を再利用することが可能となります。

1.開発の背景

 当社では、環境重視の観点から、今後需要が高まると想定される中大規模木造建築の実現に向けて技術開発を進めています。ESGやSDGsの観点から注目を集めている中大規模木造建築は、環境に優しい構造であり、建築時のCO排出量が少なく完成後も多くの炭素を固定します。

 2021年6月17日、「断熱耐火λ-WOOD」の中大規模木造建築への導入に向けて、当社では主要構造部(柱・梁・床・壁)における1~3時間の耐火構造での国土交通大臣認定の取得を公表しました。この「断熱耐火λ-WOOD」は、芯材(木材)と耐火被覆材(石膏ボード)の接合に接着剤等を利用することから、木材と石膏ボードを再利用可能な状態で解体分離することが困難でした。木材に石膏ボードが付着した状態では、木材も石膏ボードの、どちらも再生利用することが難しくなります。近年建設が拡大傾向にある中大規模木造建築において、数十年後の建物の解体時に木材をどのように活用するのかは、これから議論されるべき課題となります。他方、使用済みの石膏ボードは、2012年3月国土交通省から「廃石膏ボード現場分別解体マニュアル」が示され、最終処分場へ持ち込まないように分別の徹底等から再資源化が促進されています。


 当社では、現在建設されている中大規模木造建築が解体される数十年後の未来を見据えて、芯材(木材)と耐火被覆材(石膏ボード)とを容易に再利用可能な状態で分離できる「環境配慮型λ-WOOD」の開発を進めてきました。

2.開発の概要

 解体分離ができる「環境配慮型λ-WOOD」の2時間耐火を想定した柱(集成材)の仕様を写真1に示します。写真1は、2時間耐火試験後に解体分離した600mm角の柱芯材を再利用し、新たに耐火被覆材を設置したものです。この写真からも「環境配慮型λ-WOOD」は、火災の初期消火後に柱部材の耐火被覆材のみを剥がし、柱芯材を再利用する施工の可能性も示しています。なお、柱供試体の2時間耐火性能は、一般財団法人建材試験センターにおける耐火実験により確認しています。

 今回報告する「環境配慮型λ-WOOD」は、既に大臣認定を取得している「断熱耐火λ-WOOD(柱2時間仕様)」と比較して、以下のような特徴を有しています。

解体分離が可能な仕様
芯材(木材)とその周囲を耐火被覆する石膏ボードとの間には、接着剤を一切使用しない仕様とすること等により、解体時には容易に木材と石膏ボードを分離することを可能にしました。木材と石膏ボードを分離できることは、再資源化を可能にするとともに、廃棄にかかるコスト低減にも寄与します。

耐火被覆層のスリム化
「環境配慮型λ-WOOD」の耐火被覆層の厚さは、「断熱耐火λ-WOOD」と比較して8mm薄くすることができました。

耐火被覆層のコスト低減
「環境配慮型λ-WOOD」の耐火被覆層は、「断熱耐火λ-WOOD」に比較して材工費で30%以上のコスト低減を達成することができました(当社試算)。

3.今後の展開

 本件は、芯材(木材)と耐火被覆材(石膏ボード)の解体分離を可能とする「環境配慮型λ-WOOD」を開発し、一般財団法人建材試験センターで柱(集成材)の2時間耐火性能について確認したものです。

 今後は、中大規模木造建築が解体される数十年後の未来を見据えて、解体分離ができる「環境配慮型λ-WOOD」の実用化に向けた更なる実験を進めるとともに大臣認定取得を進めていく予定です。

写真1 環境配慮型λ-WOODの仕様(柱2時間)
(※本写真は、2時間耐火試験後に解体分離し、下部に再度、耐火被覆材を設置したものです。)

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