AIによる車両走路侵入者検知システムの開発

2022年02月04日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長 櫻野 泰則)は、建設現場内の車両走路に侵入した人をリアルタイムに検知する AI システムを開発しました。場内のカメラ映像から車両走路に人が侵入したことをAIが正確に検知し、警報装置(回転灯)を動作させます。瞬時に走路内の侵入者を車両運転手に知らせることで、侵入者との接触を防止することができます。

1. 背景

 建設現場内は、車両走路と安全通路を区分することが望ましいですが、作業環境によっては区分できない場合があります。その場合、車両が一般道から現場内に入場する際には、走路の幅員変化等周辺環境の変化により人の見落としや接近・接触等のヒューマンエラーが発生する可能性が高くなります。そこで車両走路内に人が侵入している場合には、車両運転手に直ちに侵入者がいることを知らせ、危険予知ができるシステムが必要だと考えました。

2. 概要

 一般道から建設現場内に進入した車両は、場内を反時計回りに走行し、バックホウで土砂を積み、一般道へ退場します。
 今回、AI検知エリアをAREA01~04と設定しました。(図-1)
 安全通路が設置困難なAREA01~04毎に、ネットワークカメラと回転灯を設け、車両走路内の侵入者をAIにて検知した場合、瞬時に回転灯を動作させ、車両運転者に侵入者の存在を知らせるAIシステムです。
 車道監視員なしでも車両走路上の侵入者との接触事故を未然に防ぐことが可能となり、生産性の向上も期待できます。

図-1 AI検知エリア図

3. システム基本構成

 基本構成は、ネットワークカメラの映像をAIが搭載されている推論マシーンに送信し、AIがその危険判定を行います。その判定結果をシグナルとして電源制御装置へ送信し、警報装置(回転灯)の動作を制御します。(図-2)

図-2 AIによる車両走路進入者検知システムの構成

4. AIによる人物検知アルゴリズム

 本AIシステムは、事前に収集した現場内の映像から独自に作成した教師データを用いることで、検知エリアに関わらず、映像中の建設現場作業員の姿勢・服装の変化や現場環境の変化にも柔軟に対応し、正確かつリアルタイムに人物を検知し、矩形(バウンディングボックス)で囲うことが可能です。また、その人物の特徴から個人を特定し追跡することも可能です。
(図-3)

図-3 AIによる人物検知および追跡モデル

5. 車両走路侵入者検知アルゴリズム

 車両走路内への侵入者検知は、AIによる人物検知アルゴリズムにより人物に囲った矩形と人物検知エリアとの重なり度合いで判定を行います。その際、矩形の足元に対して判定の重きを置くことで人物検知エリア境界線付近における侵入者の検知漏れを防いでいます。映像のコマ落ちに対しては時系列的に人物を追従することで検知漏れを防ぐことができます。この人物検知エリアは容易に設定することができ、様々なシーンへの対応が可能です。(図-4)

図-4 人物検知エリアの設定

6. 実施工検証

 熊谷組・大豊建設中央新幹線東雪谷非常口新設工事共同企業体 東雪谷工事所にてダンプトラック走路による土砂運搬の実施工に本AIシステムを導入し、その効果を確認しました。

表-1 実施工検証概要

現場名 熊谷組・大豊建設中央新幹線東雪谷非常口新設工事共同企業体
東雪谷工事所
検証期間 令和3年8月〜令和3年12月
検証場所 建設現場内のダンプトラック走路
検証方法

AIが搭載されている推論マシーンがネットワークカメラの映像を受信し、
危険判定を行う。その判定結果をシグナルとして電源制御装置に送信
し、警報装置(回転灯)の動作を制御する。

検証結果 車両走路への侵入者検知が可能

今後の展開

今後は AI による人物・物体検知技術を応用して以下のようなシステムの開発を目指します。
1. 検知エリア侵入の人物検知と個人情報をリンクさせて画像監視を行います
 (例:高齢者の高所作業、建設機械のオペレータ監視等)
2. 安全通路の歩行状況(例:遵守者の検知、バリケード整備状況の監視)
3. 出面管理(例:現場の入退場管理、トンネルの入坑管理)
4. 場内機械等の稼働状況監視によるCO2削減システム
 (例:建設機械の稼働状況、照明の不用な点灯状況)

お問い合わせ先

[本リリースについてのお問い合わせ先]
 株式会社熊谷組経営戦略室コーポレートコミュニケーション部
 広報グループ 電話 03-3235-8155

[技術に関するお問い合わせ先]
 株式会社熊谷組 土木事業本部
 ICT推進室 電話 03-3235-8653