河川内の橋梁更新工事で橋梁の撤去・更新と桟橋の構築に同じガーダーを用いる工法 「KPYダブルユースガーダー工法™」を開発  ~ 環境にやさしい橋梁更新工法で、しかも工期短縮や工事費の縮減を実現 ~

2021年09月02日

株式会社 熊谷組
株式会社 横河ブリッジ

 株式会社熊谷組(本社:東京都新宿区、取締役社長:櫻野 泰則)、株式会社横河ブリッジ(本社:千葉県船橋市、代表取締役社長執行役員:髙田 和彦)は、河川内の橋梁リニューアル工事における工事期間の短縮や工事費の縮減を目的として、河川内に位置する橋梁の更新工事に関する工法「KPYダブルユースガーダー工法」を共同開発しました。
 従来の橋梁工事では、既設橋梁の撤去と更新橋梁の構築は、上部工と下部工を分離して施工が行われてきましたが、本工法では、既設上部工の撤去に用いるガーダーを仮桟橋に転用し、既設下部工の撤去・新設や新設上部工の架設に用いることで、工事期間の短縮と工事費の縮減を実現することができます。
 また、本工法に用いる仮桟橋は、河積阻害率(※1)とHWL(※2)に配慮した桟橋構造となっていますので、出水期にも残置することが可能で、築島や瀬替えを必要としない環境にやさしい工法です。

[本工法の概要・特長]

(1)背景
 昨今、地球温暖化の影響もあり台風や集中豪雨により河川が氾濫し、全国各地で甚大な浸水被害が発生する事例が増えてきています。浸水被害を防止するためには、堤防をかさ上げするなどの対策が必要となりますが、堤防のかさ上げに伴い橋梁および周辺道路の大がかりな改築等が必要となることから、橋梁部でのかさ上げは難しいのが現状です。また、高度経済成長期に建設された橋梁の多くは老朽化が課題となっており、現行の耐震基準を満たさないことも多く、河川内における橋梁のリニューアルが急務となっています。

(2)開発経緯
 従来の河川内における橋梁更新工事では、既設上部工を撤去した後に、第1渇水期(例えば11月から5月)には流水域に仮桟橋を設置して既設下部工の撤去工事を行い、出水期になると仮桟橋を撤去します。第2渇水期になると再度仮桟橋を設置し、新設下部工の設置工事を行い、再び出水期となると仮桟橋を撤去するといった施工サイクルを繰り返します。通常、仮桟橋は20m程度の支間長の単純桁のため20m毎に杭基礎等を設ける必要があり、仮桟橋下部工はHWL以下の位置に設けられることが一般的です。出水期に仮桟橋を撤去する理由は、河川の流水に影響を与えることが無いようにするためであり、従来の河川内における橋梁更新工事では、短い渇水期間において仮桟橋の設置と撤去が繰り返され、これまで多くの時間と多額の費用が費やされてきました。

(3)本工法の概要
 本工法は、河川内の橋梁更新工事における既設上部工の撤去、新設橋上部工の架設に用いるガーダーを仮桟橋上部工に転用し、工事期間の短縮および工事費の縮減を実現する橋梁更新工法です。また、新設橋と並行した位置に仮桟橋を設置し、仮桟橋下部工をHWL以上の高さの位置に設けることで、出水期においても仮桟橋を残置することが可能となります。なお、利用するガーダーは、従来の仮桟橋と異なり連続構造で耐震性も向上するため、支間長を新設下部工と同程度の間隔まで伸ばすことができるため、河川の流水への影響(河積阻害率)にも配慮しています。
 更に、本工法は豪雨等により流失してしまった橋梁の再構築にも対応できます。例えば、下部工の再構築のために用いたガーダーを利用して、その上に下路アーチ橋やトラス橋などの橋梁上部工を地組みし、河川部へ引き出した後、再構築された下部工上へ横取りするといった工法で、急速な施工にも対応できます。
 その他にも渇水期に流水域にて築島あるいは瀬替えを行い、橋梁の撤去や構築による施工方法も行われてきましたが、本工法は、流水域にて築島や瀬替えをすることもなく、環境にやさしい工法となっています。

(4)本工法の主な特長
〇既設上部工の撤去・新設に用いるガーダーを桟橋に転用することで工事費を縮減
 従来の橋梁工事では、既設橋梁の撤去と更新橋梁の構築は、上部工と下部工に分離して施工が行われてきました。今回、既設上部工の撤去に用いるガーダーを仮桟橋に転用し、既設下部工の撤去・新設や新設上部工の架設に用いることで、工事期間の短縮と工事費の縮減につながります。一例では、従来工法の80%程度に工事費を縮減することができます。

〇河積阻害率とHWLに配慮して出水期にも残置できる桟橋構造とすることで工期を短縮
 本工法では、河川内の橋梁更新工事で用いられることの多かった仮桟橋の代わりに、河積阻害率に配慮してHWL以上の位置にガーダーを設けることで、渇水期ごとの仮桟橋の設置と撤去を無くし、出水期でも残置できる構造としました。この結果、工期の短縮が可能となりました。例えば、従来工法の80%程度に短縮することができます。

〇築島や瀬替えを必要としない環境にやさしい工法
 従来工法では仮桟橋の他にも、流水域にて築島や瀬替えをすることで、橋梁の撤去や構築が行われることもあります。こうした場合、河川に生息する動植物への影響が大きな課題となっておりました。今回、流水域への影響を最小限に留めることで、周辺環境への影響を低減します。


 熊谷組および横河ブリッジは、今後さらに、橋梁の上部工から下部工までをトータルで見た視点で、工事の施工性・安全性の向上のための総合的な技術開発を行い、橋梁更新工事に加え、豪雨等により流出した橋梁の早期復旧事業等にも積極的に取り組むとともに、関係者の課題に真摯に取り組み、市民の安全・安心にも貢献して参ります。

※1 河積阻害率
橋脚の総幅が川幅に対して占める割合

※2 HWL
High Water Levelの略。日本語で計画高水位。HWLは、計画高水流量が河川改修後の河道断面を流下するときの水位です。

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お問い合わせ先

[本リリースについてのお問い合わせ先]
株式会社熊谷組 コーポレートコミュニケーション部
広報グループ 電話 03-3235-8155

[技術に関するお問い合わせ先]
株式会社 熊谷組 土木事業本部プロジェクト技術部 電話 03-3235-8649
株式会社 横河ブリッジ 技術本部 技術開発部 電話 043-247-8411