新たな「熊谷組 福井本店」が創業地に完成 次世代都市型コンパクトオフィスの実現と中大規模木造建築への挑戦

2021年08月19日

株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、当社の創業地・福井市において進めてきた「熊谷組 福井本店」の建て替え工事が、このたび竣工しましたのでお知らせいたします。新本店ビルでは、当社が独自開発した高性能の耐火木材を使用し、ZEBに取り組みました。そして、働く人の健康増進や快適性・知的生産性の向上を図るスマートウェルネスオフィスを構築し、次世代都市型コンパクトオフィスを実現しました。運用開始後も新技術の導入効果の実証・検証をかさね、環境配慮型の建築物の普及とサスティナブルな社会の実現に取り組んでまいります。

熊谷組福井本店 外観(南東面)

1. 福井本店建て替えの背景

福井で創業した当社は、1938(昭和13)年に現在の本店の地(福井市中央2丁目6-8)に株式会社熊谷組を設立しました。その後、1964(昭和39)年に本社機能を東京に移してからも、現在まで半世紀以上にわたり同地を本店としてきました。そして創業120周年を迎えた2018(平成30)年、建物が老朽化したことから、同地に新たな本店を建設するプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、2019年に完成した宿布発電所跡公園(福井市宿布町)の整備事業と一体をなす、当社創業地(ルーツ)の整備事業の一環です。

2.概要

新本店ビルは、福井本店および福井営業所の機能を有するオフィスビルであり、『熊谷組の「歴史」と「未来」を具現化する、起業の地に相応しい建物』をコンセプトとして計画しました。さらに、当社の取り組みの実証と市場への展開を視野に入れ、環境負荷低減と快適性・生産性の向上を兼ね備えた先進的事例として、木造建築とZEBを採用しています。

① 中高層木造建築を視野にいれた耐火木材の採用
木造建築の普及はカーボンニュートラルの観点からも注目されています。
構造体は、当社が目指す中高層木造建築の実現を見据えた、鉄骨造と木造のハイブリット構造です。耐火木材には、当社が独自に開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD®(ラムダウッド)」を使用しています。この木造部分には一部、8mのロングスパンを採用しています。大断面集成材による柱、梁とCLT耐震壁を併用しました。北陸の厳しい冬の積雪荷重にも耐えられる都市型木造建築としています。


                     断熱耐火λ-WOOD®(ラムダウッド)


② 立地・建物形状的に難しい都市型コンパクトオフィスビルのZEB化への挑戦

 ZEBの実現・普及は、我が国のエネルギー需給構造の抜本的改善の切り札であり、政府のエネルギー基本計画における政策目標を達成するために重要な取り組みのひとつです。
 新本店ビルの建設地である北陸地域は日照時間が少ない多雨・多雪が特徴の日本海側気候であり、場所も狭小地であったためZEBを目指すには、多くの制約がありました。これを克服して超省エネルギー化を実現するため、外皮性能の「高断熱化」、高効率空気熱源ヒートポンプの搬送動力低減を図り、室内の湿度環境に視点を向けた「潜顕分離空調※4による床吹出放射空調」、「タスク&アンビエント照明」などの各種手法を採用しています。さらに、屋上面の太陽光発電パネルに加え、外壁面にライトスルー型両面発電タイプのパネルを設置。これらの様々な手法の導入により、1次エネルギー消費量を全体で83%減らし、ZEBのカテゴリーの内「Nearly ZEB」を取得しました。
 また、多雨地域であることからZWB(Zero Water Building)の試みとして、雨水利用による水資源の保護に努めました。雨水利用や蓄電池設備は、BCP(事業継続計画)にも対応します。

区分 主要導入技術
建築 日射遮蔽(庇、壁面緑化)、ライトシェルフ、自然換気、高断熱(CLT+断熱材)、Low-eガラス、バイオフィリア等
給排水 節水器具、雨水利用(洗浄水、潅水)、緊急排水槽

空調・換気

高効率空気熱源ヒートポンプ、潜顕分離空調、大温度差FCU、変風量制御、
搬送動力低減制御、外気冷房、ウォーミングアップ制御、床吹出放射空調、
カスケード換気、全熱交換器、DCモーター機器、BEMS 等
電気

高効率トランス、LED照明、分割点灯、人感センサー、昼光制御、
タスク&アンビエント照明、太陽光発電、BCP対応蓄電池 等

システム概念図

③ 社員の健康増進と快適性・知的生産性の向上を推進
 壁面緑化やルーバーなどを用いて日射を抑制しつつ開口面積を確保し、木造梁や木質仕上げを「現し」とし明るく開放的な空間を実現しました。建物内には越前和紙や地元産の杉材を使用し、外構には緑化やオープンスペースを確保しています。さらに、社員の休憩・打合せスペースを充実させ、ABW(Activity Based Working)を導入するなど、働くための健康的な環境を重視したスマートウェルネスオフィスを実現しました。

④ 住友林業との協業
 木造の採用においては、当社と業務・資本提携している住友林業と協業し、材料や耐火をはじめとする技術的な面で連携を図っています。この成果は、今後の中大規模木造建築への展開につなげていきます。

⑤ 建物のブランディング
 環境認証制度として、CASBEE※2建築:Sランクを取得(2021.7月)、また、ZEBリーディング・オーナーの登録(2021.1月)を完了。さらに、CASBEEウェルネスオフィス:Sランク、LEED※3:Goldの認証取得を目指します。なお、本計画は、一般社団法人静岡県環境資源協会が公募する『令和2年度 ZEB 実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業』へ応募し、採択を受けています。

環境認証制度 目標取得レベル等
LEED Gold
CASBEE 建築 S ランク 2021.7 取得
CASBEE ウェルネス S ランク
BELS 5★ Nearly ZEB
ZEBリーディング・オーナー 2021.1 登録


⑥ 創業120年の歴史を具現化し、次世代に伝承する施設

 新本店の正面玄関の外壁には、当社創業の工事で、福井県初の水力発電所である「宿布発電所」で実際に使われていた石積みを配し、建物内には当社のブランドストーリーを紹介する歴史記念室を開設しました。創業の精神を次世代の社員に継承し、本店を訪れる社外の皆様にも広く知っていただくための施設です。

2階 歴史記念室

3.今後の展開

 建物を実際に使用しながら、環境負荷低減のデータを収集するとともに、ウェルネスオフィスとして働き方改革を実現し、生産性の向上を図ってまいります。さらなる新技術導入と効果の実証・検証をかさね、実績を今後の中大規模木造建築における技術開発へとつなげていきます。
 また、未来に向けた当社の取り組みを具現化した新本店ビルをお客様に見学していただき、環境配慮型の建築物の普及に向けた積極的な営業展開を図ります。

参考資料

※1.ZEB
(NET Zero Energy Building)

建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物をいいます。

※2.CASBEE
(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能の格付手法。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価します。

※3.LEED
(Leadership in energy and Environmental Design)

米国の非営利団体である米国グリーンビルディング評議会(USGBC:US Green Building Council)により開発された、環境配慮型建築物の格付けシステムです。

※4.潜顕分離空調

潜熱(主に湿度)と顕熱(主に温度)を分けて、空気を処理するシステムです。

福井本店の概要

項 目      概 要
建物名称 株式会社熊谷組福井本店
所在地 福井県福井市中央2丁目6-8
設計・監理 株式会社熊谷組一級建築士事務所
施工 株式会社熊谷組北陸支店
敷地面積 565.51㎡
建築面積 299.35㎡
延床面積 1,190.85㎡
高さ [最高高さ] 19.97m   [軒  高 ] 15.97m
構造 鉄骨造+木造(ハイブリッド構造)4階建て、耐火建築物
工期 2020年9月~2021年7月
用途 1階:エントランスホール、会議室 2階:展示室、打合せスペース、3・4階:事務室
特記 Nearly ZEB

福井本店建替プロジェクトで取り組んだSDGsのテーマ

・女性も働きやすい環境の整備
・雨水利用、節水器具
・太陽光発電、蓄電池
・ZEB、BEMSによるエネルギーマネジメント
・働き方改革の推進、社員の健康
・社員の創造性、知的生産性、快適性を高める空間
・ゼロエミッションの取り組み、リサイクル材の使用、廃棄物削減による省資源化の推進、建物の長寿命化
・働き方改革の推進、生産性向上
・環境配慮技術の改善、リサイクル材の使用、λ-wood🄬の開発・採用

・建築物の耐震化、次世代オフォスの開発、ZEB
・LEED、CASBEE- スマートウェルネスオフィス認証の取得
・自然災害への安全性を高めた計画緑地の計画

・木造 / 木質建築・CLTの採用
・低ホルムアルデヒド建材、リサイクル材の使用
・建設副産物の削減、建設時のCO2排出量削減

・ZEB、蓄電池、非常時排水槽
・都市緑化の推進、森林の適切な維持管理及び間伐材などの活用による生物多様性の保全
・木材活用による持続的な森林資源の利用

・住友林業との協業
・オープンイノベーション

4. 問い合わせ先

株式会社熊谷組 コーポレートコミュニケーション部
広報グループ  電話 03-3235-8155