「断熱耐火λ-WOOD®」柱・梁・床・壁の耐火構造の国土交通大臣認定を取得

2021年06月17日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ・ウッド)」の中大規模木造建築への導入に向けて、主要構造部(柱・梁・床・壁)における1~3時間の耐火構造の国土交通大臣認定(以下、耐火認定という)を取得しましたのでお知らせします。

 当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD」は、これまでに床・壁(1~2時間)、柱(1~3時間)の耐火認定を取得してきております。今般、梁(1~3時間)における耐火認定を取得したことにより、すべての主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火認定を取得し、15階以上の木造建築を純木造で建築できるようになりました。「断熱耐火λ-WOOD」の特徴は、荷重支持部(柱・梁・床・壁)の周囲に設置する燃え止まり層を硬質せっこうボードと断熱耐火パネルの積層により薄くしただけでなく、様々な仕様の表面仕上げ材を選択できることにあります。

 当社の創業の地である福井市において現在施工を行っている福井本店新築工事に、「断熱耐火λ-WOOD」は採用されています。

※燃え止まり層とは、荷重支持部材の外側にある燃焼を停止させる層です。

1.開発の背景

 当社では、環境重視の観点から需要が高まると想定される中大規模木造建築の実現に向けて技術開発を進めています。建築物に木造を適用するための課題の一つとして、その耐火性能があります。建築基準法では、耐火建築物の主要構造部には、図1に示す耐火性能が要求されるため、建築物の階数に応じた耐火性能を有する部材を使う必要があります。
 当社では、建築物への木質部材の利用を図るために、主要構造部(柱・梁・床・壁)における耐火性能を満足するように「断熱耐火λ-WOOD」の開発を進めてきました。これまでに1~2時間のCLT壁(平成31年3月発表)およびCLT床(令和2年1月発表)、1~3時間までの柱(令和3年3月発表)の耐火認定を取得してきました。今回、1~3時間までの梁の耐火認定を取得し、これにより、「断熱耐火λ-WOOD」は、耐火要件上の階数による制限がなくなり、15階以上の高層建築物にも使用することができます。

図1 主要構造部に求められる耐火性能
表1 「断熱耐火λ-WOOD」の大臣認定取得状況

2.開発の概要

「断熱耐火λ-WOOD(柱)」は、図2のように「荷重支持部である芯材」、「燃え止まり層」、「表面仕上げ材」から構成されます。この構成は、柱のほか、梁・床・壁のすべてにおいて同じ仕様です。また、「断熱耐火λ-WOOD(梁)」は、図3のような断面になります。

 柱および梁の「荷重支持部である芯材」については、JAS規格に適合する針葉樹集成材(スギ、ヒノキ、カラマツ、ベイマツなど)を使用することができます。集成材は、ひき板を繊維方向にそろえて積層接着させたものであり、強度や寸法安定性が高いほか、大きな断面の軸材料を製作することが可能であり、中大規模木造建築に適した材料です。

 「燃え止まり層」は硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層させた構成としています。硬質せっこうボードは、火災時に硬質せっこうボード内に含まれる結晶水が「水」へと化学変化し、その水の蒸発潜熱等の効果で耐火性能が確保できる材料です。しかし、硬質せっこうボードは一度加熱され結晶水が抜けると、耐火性能の低下とともに、燃え落ちやすい状態となります。そこで、本開発では硬質せっこうボードに加え、結晶水は含まないものの熱遮断性能が高く、燃え止まり層の燃え落ち防止に寄与する断熱耐火パネルを硬質せっこうボードの間に組込みました。  

 「表面仕上げ材」については、様々な仕様を選択できるようにしました。例えば、20mm以下のあらゆる樹種の木材、壁紙、塩ビシート、塗装、あるいは表面仕上げ材なしなどを選択することができます。室内における表面材仕様の選択幅が広がることは、お客様および設計者の多様なニーズに対応することができます。また、1時間の燃え止まり層の厚さは、柱・梁・床・壁のすべての部材で40.5mmであり、表面仕上げ材に0.5mm程度の天然木壁紙シートを組合せた場合には、合計の厚さは約41mmとなります。この総厚が薄いことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を広く取ることができる「断熱耐火λ-WOOD」の利点です。

図2 「断熱耐火λ-WOOD(柱)」の仕様
図3 「断熱耐火λ-WOOD(梁)」の仕様

3.耐火性能評価試験

 梁の耐火認定取得は、国土交通省指定の性能評価機関で試験を実施しました。

 性能評価試験は、荷重を加えながら所定の時間(1~3時間)の火災を模擬した加熱を与え、火災が自然に鎮火するまでの間に加熱を受けても構造安全性が確保されていること、荷重支持部が炭化しないことなどを確認しました。

4.今後の展開

 今回、「断熱耐火λ-WOOD」として、梁における1~3時間の耐火認定を取得したことにより、主要構造部(柱・梁・床・壁)すべての耐火認定を取得しました。「断熱耐火λ-WOOD」は、現在、当社設計施工の案件において、施工や設計組込みをしております。

 今後は、純木造において建築階数に制限なく対応できる状況となったことから、広く採用頂けるように「断熱耐火λ-WOOD」の事業化を含めて、検討を進めてまいります。

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