断熱耐火λ-WOOD®(柱)の1~3時間耐火の大臣認定取得

2021年03月17日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)」の中大規模の木造建築への導入を念頭に、柱の1~3時間における耐火構造の国土交通大臣認定を取得しましたのでお知らせします。
 当社が開発した木質耐火部材「断熱耐火λ-WOOD」シリーズは、これまでにCLT(直交集成板)壁とCLT床の1時間と2時間の耐火構造で国土交通大臣認定を取得しています。今回、1~3時間の集成材柱の大臣認定を取得しました。特徴として、荷重支持部(柱)の周囲に設置する「燃え止まり層※」に、普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層することにより、その部分の厚さを薄くしました。更に、表面仕上げ材を自由に選択できます。「断熱耐火λ-WOOD(柱)」は、現在施工中の当社福井本店の建替工事に採用しています。
  ※燃え止まり層とは、荷重支持部材(集成材柱)の外側にある燃焼を停止させる層です。

1.開発の背景

 当社では、今後さらに需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めています。中大規模の建築物に木造を適用するための課題の一つとしてその防・耐火性能があります。建築基準法では、耐火建築物の主要構造部には図1に示すような耐火性能が要求されるため、建物の規模によりそれぞれの使用箇所に応じた耐火性能を有した部材を使う必要があります。
 これを踏まえて当社では、すべての建築物において木質部材が使用できるように、「断熱耐火λ-WOOD」シリーズとして柱と梁は1時間から3時間まで、床と壁は1時間から2時間までの性能を満足する木質耐火部材の開発と大臣認定の取得を目指しています。
 当社では、既に1時間と2時間のCLT壁での耐火構造の大臣認定を取得(平成31年3月発表)、CLT床での耐火構造の大臣認定を取得(令和2年1月発表)しています。今回は、それに続き、柱での1~3時間までの耐火構造の大臣認定を取得しました。これにより、「断熱耐火λ-WOOD」の柱は、耐火要件上の階数による制限がなくなり、高層建築物にも使用することができます。

図1 主要構造部に求められる耐火性能
表1 「断熱耐火λ-WOOD」の大臣認定取得状況

2.開発の概要

 「断熱耐火λ-WOOD」は、図2のように「荷重支持部」、「燃え止まり層」、「表面仕上げ材」から構成されます。

 柱の「荷重支持部」については、JAS規格に適合する針葉樹集成材(スギ、ヒノキ、カラマツ、ベイマツなど)を使用することができます。集成材は、ひき板を繊維方向にそろえて積層接着させたものであり、強度や寸法安定性が高いほか、大きな断面の軸材料を作ることができ、中大規模の木造建築に適した材料です。

 「燃え止まり層」は普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層させた構成としています。せっこうボードは、火災時にせっこうボード内に含まれる結晶水が「水」へと化学変化し、その水の蒸発潜熱等の効果で耐火性が確保できる材料です。普通硬質せっこうボードは比重が大きく、より多くの結晶水を含むことにより、優れた性能を発揮します。しかし、せっこうボードは一度加熱され結晶水が抜けると、耐火性能の低下とともに、燃え落ちやすい状態となります。そこで、本開発では普通硬質せっこうボードに加え、結晶水は含まないものの熱遮断性能が高く、燃え止まり層の燃え落ち防止に寄与する断熱耐火パネルを普通硬質せっこうボードの間に組込みました。

 「表面仕上げ材」は、様々な仕様を選択できるようにしました。例えば、20mm以下の木材(あらゆる樹種が選択可能)、壁紙、塩ビシート、塗装、あるいはふかし仕上げを念頭にした表面仕上げ材を設置しない仕様などで大臣認定を取得しています。室内における表面材仕様の選択幅が広がり、お客様および設計者のニーズに対応することができます。また、1時間の燃え止まり層の厚さは40.5mmであり、表面仕上げ材に天然木壁紙シートを組合せた場合、その合計の厚さは約41mmとなります。この総厚が薄いことは、木質感を演出しつつ居室内の有効利用面積を大きく取れる利点があります。

図2 「断熱耐火λ-WOOD」の柱の仕様

3.耐火性能評価試験

 大臣認定取得のために、指定の性能評価機関で耐火試験を実施しました。
 性能評価試験では、荷重を加えながら所定の時間(1~3時間)の火災を模擬した加熱を与え、火災が自然に鎮火するまでの間に、加熱を受けても構造安全性が確保されていること、荷重支持部が炭化しないことなどを確認しました。

耐火試験後(耐火炉から出した状態)
解体後(燃え止まり層をはがした状態)

4.今後の展開

 本件は、「断熱耐火λ-WOOD」として、柱における1~3時間耐火構造の大臣認定を取得したものです。現在、梁の3時間耐火構造についても性能検証を進めています。当社では、「断熱耐火λ-WOOD」シリーズのCLT耐火壁にふかし壁を施し、JISの評価上最高値である遮音等級Rr-60を達成した遮音性能の大臣認定も取得しています(令和2年3月発表)。今後、優れた中大規模の木造建築を実現するために、様々な技術を組合せることにより、更なる性能の向上やコストダウンに向けた技術開発を進めてまいります。

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