「木造CLT複合壁の遮音性能」の大臣認定取得 

2020年03月26日

~中大規模の木造建築への適用を目的にCLT複合壁でJISの評価上最高値であるRr-60を達成~

株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、中大規模の木造建築への適用を念頭に、CLT(※1)複合壁による「界壁の遮音構造」の大臣認定を取得しましたのでお知らせいたします。
このCLT複合壁は、当社が開発したCLT耐火壁(※2)にふかし壁を施した仕様とし、実験室における空気音遮断性能は、JISの評価上最高値である遮音等級Rr(※3)-60を達成しました。

※1:CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層接着させて作った木質構造パネルです。
※2:CLTを荷重支持部材(芯材)とし、普通硬質せっこうボードと、断熱耐火パネルの積層構造の被覆により燃え止まり層を被覆した当社開発の木質耐火部材『断熱耐火λ-WOOD』を用いた仕様の壁です。また、「1時間耐火構造」に関する大臣認定を取得済みです。
※3:RrはJIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」およびJIS A 1419-1:2000 「建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法―第1部:空気音遮断性能」の実験室で求めた遮音性能です。
JIS A 1419-1ではRr-30からRr-60まで規定されています。

1.開発の背景

当社では、今後需要が高まると予想される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めています。中大規模の木造建築物を実現するための課題の一つとして、その遮音性能があります。特に共同住宅などでは、高い水準の空気音遮断性能が要求されています。

当社では、これまで共同住宅などにCLTを適用するために、高い遮音性能を持つCLTを用いた複合壁や複合床の開発を行ってきました。

このたび、当社が開発した木質耐火部材『断熱耐火λ-WOOD』シリーズのCLT耐火壁※2にふかし壁を施し、新たに開発したCLT複合壁が、遮音性能の大臣認定を取得しました。このCLT複合壁は、大臣認定の基準を十分に満足するとともにJISの評価上最高値である遮音等級 Rr(※3)-60を達成し、高い遮音性能を有することを確認しました。

2.開発の概要

一般的に、共同住宅における住戸間の壁単体の空気音遮断性能は、遮音等級 Rr-55以上が望ましいと考えられています。CLT単体の壁の空気音遮断性能は、鉄筋コンクリート壁と比較すると材料の面密度(単位面積当たりの質量)が低く、一般的なふかし壁を構成した場合でも、鉄筋コンクリート壁と同等の遮音性能を達成することは難しくなります。さらに、木造建物の各部材の取り合い部分(柱、梁、床、壁)の納まり上、遮音性能が下がるという課題があります。

本開発では、図1のようにCLTを荷重支持部材(芯材)とし、普通硬質せっこうボードと、断熱耐火パネルの積層構造を被覆した1時間耐火構造の壁(CLT耐火壁)(※2)に、遮音性能を確保するためのふかし壁としてグラスウールと上張り面材(普通硬質せっこうボード1枚、強化せっこうボード1枚)を施したCLT複合壁を開発しました。
開発したCLT複合壁の特徴は以下の3つです。

(1)ふかし壁による低音域共鳴透過(※5)の低減および幅広い周波数の空気音遮断性能の向上
ふかし壁の背後空気層厚さを選定し、さらに上張り面材に比重の異なるせっこうボードを積層することにより低音域の共鳴透過を低減させ、幅広い周波数の空気音遮断性能を高める仕様としました。

(2)梁との取り合い部分の構造の再現
実際の木造建築では壁と梁や床との取り合い部分の納まり上、遮音性能が下がると考えられるため、試験体には梁を想定した木材を設置して、実際の取り合い部を再現した仕様としました。
 
(3)乾式工法による施工性と軽量性の向上
当社は、床および壁をともに乾式工法とすることにより、湿式工法による養生期間の短縮、施工の合理化を図り、さらに全体の重量も軽減させています。

上記仕様で構成された試験体を用いて、実験室(一般財団法人建材試験センター 第1音響試験棟)において性能評価試験を実施しました。本仕様はJIS規格の空気音遮断性能として遮音等級Rr-60を達成しました。
さらに、「界壁の遮音性能」に関する大臣認定の基準を十分に満足したことにより、大臣認定を取得しました。

※5:二重構造の場合に板同士が中空層の空気を介して共振し、低音域の遮音性能(透過損失)を低下させる現象のこと。


図1 木造CLT複合壁の遮音構造の断面図
図1 木造CLT複合壁の遮音構造の断面図
写真1-1 CLTの設置
写真1-1 CLTの設置
写真1-2 木造CLT複合壁の遮音構造の完成 ・マイクの設置
写真1-2 木造CLT複合壁の遮音構造の完成 ・マイクの設置
図2 測定結果
図2 測定結果

本件は、CLT複合壁の遮音性能の大臣認定を取得したものです。当社では、一昨年開発したCLT複合床乾式工法による床衝撃音遮断性能(Lr-45相当(※6))と合わせて、高い遮音性能を有した中大規模の木造建築物への採用を目指す予定です。今後も当社では、構造、耐火、遮音を含め、総合的に中大規模の木造建築物への適用に向けた研究開発を進めてまいります。
※6:Lr相当は、CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音(標準重量衝撃源)の測定結果をJIS A 1419-2にプロットして数値化し、相当値として表現したものです。

[お問い合わせ先]
[本リリースに関するお問い合わせ先]
株式会社熊谷組 経営企画本部 コーポレートコミュニケーション室 電話 03-3235-8155

[本製品に関するお問い合わせ先]
株式会社熊谷組 技術本部 新技術創造センター 開発第3グループ 電話 03-3235-8617