「木造CLT床の2時間耐火構造」の大臣認定取得
2020年01月28日
~ 薄い燃え止まり層と様々な表面仕上げ材が選択可能となる仕様で大臣認定を取得 ~
株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、中大規模の木造建築を念頭にCLT※1床の1時間および2時間耐火構造の大臣認定を取得しましたのでお知らせします。
今回、認定を取得したCLT床は、当社独自の仕様です。その特徴として、荷重支持部材(CLT)の周囲に設置する「燃え止まり層※2」は、普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを積層することにより、従来工法と比較して、総厚を薄くしました。また、このCLT床は、耐火構造であることに加え、表面仕上げ材にさまざまな材料を使用することが可能となっています。
※1:CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が
直交するように積層させて作った木質構造パネルです。
※2:燃え止まり層とは、荷重支持部材(CLT)の外側にある燃焼を停止させる層です。その基本性能の確認では、載荷加熱した際の構造安全性や、芯材表面が炭化しない(焦げていない)こと、非加熱側に燃え抜けないことなどが必要とされます。
1.開発の背景
当社では、今後需要が高まると予測される中大規模の木造建築の実現に向けて技術開発を進めています。中大規模の建築物に木造を適用するための障壁の一つとしてその防・耐火性能があり、一般に耐火建築物の主要構造部には図1の耐火性能が要求されるため、それぞれの使用箇所に応じた耐火性能を満足した部材を使う必要があります。
これを踏まえて当社では、すべての建築物において木質部材が使用できるように、柱と梁は1時間から3時間まで、床と壁は1時間から2時間までの性能を満足する木質耐火部材の開発と大臣認定の取得を目指しています。
このたび、平成31年3月に発表したCLT壁の1時間と2時間の耐火構造の大臣認定取得に続き、CLT床についても当社独自の耐火構造を開発し、1時間と2時間の耐火構造の大臣認定を取得しました。これにより、CLT床とCLT壁は、1時間耐火構造であれば最上階から4層まで、2時間耐火構造であれば最上階からすべての階において使用することが可能となりました。
2.開発の概要
本開発では、図2のように荷重支持部(芯材)の木材に燃え止まり層を被覆した独自の木質耐火構造を考案し、性能の検証を進めています。
荷重支持部は、床の場合CLTを使用することを条件としています。CLTは図3のように挽き板(ラミナ)を繊維方向が直交になるように積層接着させて作ります。木材は繊維方向に強い軸方向力を発揮することから、CLTはより大きな断面の面材ができるので、中大規模の木造建築に適した材料です。
燃え止まり層は、「普通硬質せっこうボード」と「断熱耐火パネル」を積層させて被覆させています。当社の燃え止まり層の特徴として、次の2点があげられます。
(1)燃え止まり層の薄さ
燃え止まり層は荷重を支持しないため、部材の燃え止まり層は厚ければ厚いほど室内空間を狭めます。せっこうボードは、火災時にせっこうボード内に含まれる結晶水が「水」へと化学変化し、その水の蒸発潜熱等の効果で耐火性が確保できる材料です。普通硬質せっこうボードは比重が大きく、より多くの結晶水を含むことにより、優れた性能を発揮します。しかし、せっこうボードは一度加熱され、結晶水が抜けると、耐火性能の低下とともに、燃え落ちやすい状態となります。そこで、本開発では普通硬質せっこうボードに加え、結晶水は含まないが、熱遮断性能が高く、燃え止まり層の燃え落ち防止に寄与する断熱耐火パネルを普通硬質せっこうボードの間に組込みました。その結果、燃え止まり層の厚さを最も薄い場合、1時間耐火構造で41mm、2時間耐火構造で63mmと従来工法と比べてスリム化することができました。
(2)表面仕上げ材の自由度の高さ
表面仕上げ材は、様々な仕様を選択できるようにしました。例えば、20mm以下の木材(樹種の指定なし)、壁紙、塩ビシート、塗装ならびに二重床や二重天井を念頭にした表面材を設置しない仕様などを選ぶことができます。室内における表面材仕様の選択幅が広がり、お客様および設計者のニーズに対応することができます。
3.今後の展開
本件は、CLT床における1時間および2時間耐火構造の大臣認定を取得したものです。柱と梁の1~3時間耐火構造の大臣認定については、1年以内の取得を目指しています。当社では、今後、本件のCLT床を含む、柱、梁、床、壁の1時間から3時間の木質耐火構造を有した部材を『断熱耐火λ-WOOD(ラムダ-ウッド)』の名称で展開するとともに、優れた中大規模の木造建築を実現するために、更なる研究開発を進めてまいります。
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