小断面トンネル自動吹付機システムの開発

2019年12月20日

株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)はトンネル施工時における生産性向上、作業環境の改善を目指し、最新の技術を取り込んだ次世代トンネル技術の開発を進めており、その第一弾として小断面トンネルに特化した「自動吹付機システム」を開発しました。
「自動吹付機システム」はCIM管理システムと連携しながらi-Constructionを目指す機械開発の中核技術となります。
早期にトンネル作業現場に導入するため、今後吹付システムの実用化を進めます。

1.背景

今般FIT制度(電力の固定価格買取制度)等で活況を呈している水力発電の小断面山岳トンネル工事の施工における吹付作業は、作業空間が狭隘なため、粉塵等により環境が悪い状況下で作業を行わなくてはなりません。
小断面では映像の認識範囲が限られることから当社が得意とする無人化施工技術を利用し、遠隔で吹付機を操作する自動運転技術を導入しました。当社の小断面トンネル工事に投入すべく吹付機械の試作システムを開発しました。


2.概要

開発した自動吹付機システムは小型バックホウをベースに自動吹付ロボット機能を搭載し、オペレータの吹付作業を忠実に再現することができる教示(ティーチング)システムを搭載しています。

写真-1 自動吹付機システム
写真-1 自動吹付機システム

① システム

吹付システムのノズル回転部は油圧モータを搭載していますが、素早い回転角度の変化に対応する高精度位置検出装置を使用し、比例電磁油量弁を適切に制御することにより負荷変動を最小限に抑えています。こうした基本システムにオペレータの操作を教示させ記憶し、自動再現するロジック制御装置を搭載しています。

図-2 自動吹付機システム(KIT-S1)の構成図
図-2 自動吹付機システム(KIT-S1)の構成図

② 実験1(塗装吹付試験)

当社筑波技術研究所において、試験機に塗装吹付ノズルを搭載し教示吹付をした上に自動吹付試験を実施して、その再現性を確認しました。

写真-2 実験2上書き再現試験
写真-2 実験2上書き再現試験

教示運転による赤色ペイント吹付の上に自動再現運転による青色ペイント吹付をしました。その吹付差は上下左右2mm程度で、このシステムの高い精度を確認できました。

③ 実験2(実吹付試験)

模擬トンネルを使用した吹付実験(乾式・湿式コンクリート)を実施し、吹付位置は上下+2cm左右1cm以内に収まりました。また吹付厚は10±3cmに収まり吹付変動に対しても大きな影響もなく吹付を行い、システムの有効性を確認しました。

写真-3 模擬トンネルによる実吹付試験(左:教示 右:自動再生)
写真-3 模擬トンネルによる実吹付試験  左:教示
写真-3 模擬トンネルによる実吹付試験(左:教示 右:自動再生)
右:自動再生

3.今後の展開

今後は自動吹付機システムの実用化実験を行い、来年度の現場導入に向けて当該システムに最新のICT、AI技術を導入した自動吹付機を製作中です。また熊谷組は次世代トンネル施工システム開発の一環として小断面施工機械に特化したKITプロジェクト(Kumagai Innovative Tunnel Project)を立ち上げ、吹付機の他、削孔機、積込機等含めた機械群の開発も並行して進めています。

本リリースに記載している内容は発表日時点のものですので、あらかじめご了承願います。

[本リリースについてのお問合せ先]
株式会社熊谷組 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 電話03-3235-8155

[技術に関するお問合せ先]
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