地盤アンカー工法におけるアンカー定着層確認技術の開発

2019年04月17日

株式会社熊谷組(取締役社長:櫻野 泰則)は、地盤アンカー施工時に削孔用ケーシングに与える給進力、回転力および打撃力から得られる総貫入エネルギーを指標とするアンカー定着層の確認技術を開発し、当社の既開発工法であるSTK-Ⅱアンカー工法(大口径鉛直型本設地盤アンカー工法)の設計施工指針に本技術を追加し、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第11-08号 改定2)を取得しましたのでお知らせします。

1.開発の背景

地盤アンカーは山留め壁などの仮設構造物に加えて、建築物などの本設構造物にも用いられていますが、所定の引張抵抗力を確保するためには、アンカーの定着体※を良質な地盤である定着層に設置する必要があります(図1参照)。定着層は、設計時に実施するボーリング調査により設定しますが、施工時には地上に排出される削孔水およびスライムの目視確認に加えて、削孔機の振動や削孔スピードなどによる確認を併せて行います。ただし、施工時の確認は地層によっては困難な場合があり、また、オペレータの感覚に頼ることが多く記録に残らないという欠点がありました。

そこで、地盤アンカー施工時に削孔用ケーシングに与える給進力、回転力および打撃力を計測して得られる総貫入エネルギーを算定し、総貫入エネルギーの値を基に定着層への到達確認を行う技術を開発しました。これにより、定着層に傾斜あるいは凹凸が予想される場合を含め、地盤アンカーの施工時に定着層の確認を1本毎に行うことが可能となります。

※定着体:地盤アンカーを構成する部位のうち、地盤との摩擦抵抗力を期待する部分



図1 建築物への本設地盤アンカーの適用例
図1 建築物への本設地盤アンカーの適用例

2.開発技術の概要

地盤アンカー施工時(削孔時)には削孔用のケーシングを用いて削孔を行いますが、開発した技術はケーシングに与える給進力、回転力および打撃力を計測し(図2参照)、それらの値から総貫入エネルギーEDの算定を行い、その深度分布を基に定着層を確認する手法です。

ED=(EV+ER+EP)/Vd
記号 ED:単位深度当たりの総貫入エネルギー (MN・m/m)
EV:単位時間当たりの給進エネルギー (MN・m/min)
ER:単位時間当たりの回転エネルギー (MN・m/min)
EP:単位時間当たりの打撃エネルギー (MN・m/min)
Vd:削孔速度(m/min)


図2 削孔中におけるデータ計測画面
図2 削孔中におけるデータ計測画面

3.削孔試験の概要

本技術の適用性を検討するために、原位置において削孔試験を行いました。試験結果の一例を図3および図4に示します。当社の既開発工法であるSTK-Ⅱアンカー工法(大口径鉛直型本設地盤アンカー)への適用を考慮し、削孔角度は90度、削孔径は225mm、定着層はN値50以上の地盤としました。

図3は定着層上端の境界でN値変化が大きい場合ですが、総貫入エネルギーが急増する深度はボーリング調査による定着層の上端深度と良く一致しています。一方、図4は定着層上端の境界でN値変化が小さい場合ですが、総貫入エネルギーをグルーピングして得られる境界はボーリング調査による定着層の上端深度と一致しています。

このように、削孔時における総貫入エネルギーの深度分布変化を基に定着層の確認を行うことができます。


図3 削孔試験結果(定着層:N値50以上の硬質粘性土)
図3 削孔試験結果(定着層:N値50以上の硬質粘性土)
図4 削孔試験結果(定着層:N値50以上の砂礫)
図4 削孔試験結果(定着層:N値50以上の砂礫)

4.今後の予定

本技術をSTK-Ⅱアンカー工法の設計施工指針に追加し、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明(GBRC性能証明 第11-08号 改定2)を平成31年3月15日に取得しました。

今後は、STK-Ⅱアンカー工法において定着層に傾斜あるいは凹凸が予想される場合に本技術を適用していく予定です。また、山留め壁などに用いる仮設地盤アンカー(定着層がN値20以上の砂質土地盤である斜め地盤アンカーなど)への適用も検討していく予定です。



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