AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発

2019年04月04日

株式会社熊谷組(代表取締役社長 櫻野 泰則)は、SOINN株式会社(代表取締役 CEO 長谷川 修 本社:東京都町田市)と共同で、不整地運搬車を自動で走行させる「AI制御による不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術」を開発しました。

これにより不整地運搬車の安全性の向上とオペレーター一人による複数台の運転管理で生産性の向上を図ることができます。
今後、技術を活用した効率的な土砂運搬作業などの新たなサービスの早期展開を目指し、開発を進めていきます。

1.背景

一般的な土木工事において土砂の運搬は土砂積載場所から搬出場所まで、ほとんど同一の経路を往復する繰返し作業を行っています。その作業は単調な繰返しの作業でありながら、運搬経路からの逸脱や車両の離合などの危険があり、運搬車の運転手の疲労蓄積や集中力の低下による事故の危険もあります。そこで当社では、土砂の運搬作業の安全性と生産性向上を目的として、不整地運搬車の自動走行技術を開発し、さらに複数台の車両が同一経路を往復する際の走行・停止を自動制御させるAI制御技術を開発しました。

2.概要

開発したAI制御技術は、教示運転に基づく単独の不整地運搬車に対する自動走行技術と、AIによる制御を組み合わせた制御技術であり、2台以上の車両のスムーズな運行と、PCによる人の介在を少なくする省人化が可能となります。
AI制御では複数台の不整地運搬車が繰り返し自動走行する際にも衝突等が発生しないよう安全な運行を制御させるため、従来は土砂積載の遠隔操作オペレーターのほかに、衝突等の安全確認を行いながらクローラキャリアの自動走行を行うオペレーター1名が必要でしたが、AI制御によって衝突等の監視作業が不要となるため、土砂積載から土砂搬出までの一連の作業がオペレーター1名で可能となります。

図-1 AI制御システム
図-1 AI制御システム
図-2 オペレーター1人による運行
図-2 オペレーター1人による運行
写真-1 AI制御による運行状況
写真-1 AI制御による運行状況

不整地運搬車の自動走行技術

不整地運搬車の自動走行技術は、最初に不整地運搬車のオペレーターが運転席から離れた場所(操作室)で、走行状況をカメラ映像で確認しながら土砂積載場所から搬出場所まで遠隔操作で運転を行い(教示運転)、その操作内容をコンピュータに記憶させて不整地運搬車を自動走行(自動運転)させるものです。(写真-2、3)

写真-2 コントローラ
写真-2 コントローラ
写真-3 自動走行対応不整地運搬車
写真-3 自動走行対応不整地運搬車

3.AI制御フロー

①教示ステップ
自動走行を行うためには、予めオペレーターがカメラ画像により走路を確認しながら教示運転を行い、教示経路データを作成します。これは自動走行の手法と同様の方法でオペレーターによる安全確認を行うものです。

②分析ステップ
次に教示経路と車両サイズ・遠隔操作といった条件に基づき、複数車両の全ての走行位置関係を算出し、安全な位置関係や、衝突の可能性がある位置関係をAIにより計算し、安全な状態のみ選定します。

③計画ステップ
引き続きAIでは、与えられた経路の始点・終点の位置、および土砂積み込み、土砂廃棄といった作業目標を考慮し、全ての位置関係の状態から最もコスト・時間が最小となる効率的な運行計画パターンを生成します。

④実行・指令ステップ 
これらのステップ②・③によってAIによる運行計画パターンが生成され、オペレーターは操作盤のスタートスイッチを押すだけで複数台のクローラキャリアは常時AIによって進行・停止の判断が行われ、衝突する事なく効率的に進行・待機を繰り返し、所定の作業目標を達成する運行を行います。

図-3 AI制御フロー
図-3 AI制御フロー

4.AIによる効果

・運行監視要員の削減
AIの運行制御によりクローラキャリアの衝突等の安全確認作業がなくなるため運行監視要員の必要がなくなる。

・積込機械オペレーターの負担軽減
バックホウ積込みや整地など作業に専念できる。

・運搬機械の負荷低減
運搬機械の速度が平準化するため燃費効率を向上する。

・運搬機械同士の接触事故防止
専用のセンサーがなくても、運行管理で接触を防止できる。

・経路が複雑かつ長距離化に対応
AIで制御するため経路が複雑かつ長距離なものでも対応可能となる。

5.実施工検証

阿蘇大橋地区斜面対策工事における土砂運搬の実施工に本技術を導入し、AIによる効果を確認しました。

表―1 実施工検証概要
写真-4 実施工検証状況(操作室)
写真-4 実施工検証状況(操作室)
写真-5 実施工検証状況(AI自動走行状況)
写真-5 実施工検証状況(AI自動走行状況)

6.今後の展開

今後はAI制御技術をさらに向上させるとともに以下に示す事項の向上も目指します。また安全面や運用方法の検討を十分に行い、本格的な実運用に向けて準備を進めてまいります。

・現場ごとの条件を反映させた精密な運行管理。
・運行管理の見える化による現場マネージメントの高度化。
・様々な現場に合わせた多様な装備の開発。
・建設機械の情報を加えた精度の高い運行管理。
・AI学習の蓄積や施工への反映。


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