「木造CLT壁の2時間耐火構造」の大臣認定取得

2019年03月28日

薄い燃え止まり層と様々な表面材が選択可能となる仕様で大臣認定を取得

株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、中大規模の木造建築を念頭に、CLT(※1)壁の1時間および2時間耐火構造の大臣認定を取得しましたのでお知らせします。

今回、認定を取得したCLT壁は、当社独自の仕様です。芯材(CLT)の周囲に設置する「燃え止まり層(※2)」は、石膏ボードと断熱耐火パネルを積層することで、一般工法である石膏ボードだけの仕様と比較して、その厚さを薄くしました。また、このCLT壁は、耐火構造であることに加え、仕上げの表面材として、さまざまな材料を使用することが可能です。

※1:CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネルです。
※2:燃え止まり層とは、表面材と芯材(CLT)との間にある燃焼を停止させる層です。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材(CLT)の表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化しない
(焦げていない)ことなどが必要とされます。

1.開発の背景

今後、需要が高まると予測される木造建築分野において、当社が取り組む中大規模の木造建築では、建物の主要構造部である壁に、木質系材料であるCLT壁を用いることが想定されます。しかし、CLT壁を中大規模の木造共同住宅などに使用するためには、4階までの建物が1時間耐火構造、5階建て以上の建物が2時間耐火構造であることが必要です。

これを踏まえて当社では、CLT壁において当社独自の仕様を開発し、このたび1時間および2時間耐火構造の国土交通大臣の認定を取得しました。
耐火性能を有した部材の大臣認定は、主要構造部(柱・梁・床・壁など)ごとに取得する必要があり、今回の認定は他の部材に先駆けて取得したものです。当社ではこうした部材の耐火構造の研究・開発を進めており、今後の大臣認定に向けて自主試験で柱の3時間耐火に目途をつけています(2017年11月発表)。

※耐火構造の大臣認定は、壁が2時間耐火、柱が3時間耐火となります。

2.開発の概要

木造建築における主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火構造は、芯材となる木材の周囲に「燃え止まり層」を設けて耐火性能を確保します。

本開発では、この燃え止まり層に「石膏ボード」と「断熱耐火パネル」を積層することで、一般に使用されている石膏ボードだけの積層と比較して、その厚さを薄くしています。
石膏ボードは、火災時に石膏ボード内に含まれる結晶水が「水」へと化学変化し、その水の蒸発潜熱等の効果で耐火性が確保できる優れた材料です。しかし、石膏ボードは一度加熱され、結晶水がすべて水へ変化すると、耐火性能の低下とともに、崩壊しやすい状況となります。そこで、本開発では石膏ボードに加え、結晶水は含まないが、熱遮断性能が高く、崩壊防止に寄与する断熱耐火パネルを石膏ボードの間に組込みました。

更に、燃え止まり層の外側(室内側)に設置する表面材は、様々な仕様を選択できるようにしました。例えば、20mm以下の天然木、壁紙、塩ビシート、塗装ならびにふかし壁を念頭にした表面材を設置しない仕様などを選べます。室内における表面材仕様の選択幅が広がることにより、お客様および設計者のニーズに対応することができます。

その結果、表面材を天然木とした場合の燃え止まり層と表面材との合計厚さは、最も薄い場合、1時間耐火構造で41mm、2時間耐火構造で63mmまでスリム化することができました。壁の断面厚さが薄いことは、室内の利用可能な空間の拡大に寄与します。

写真1 壁試験体の耐火試験前 
写真1 壁試験体の耐火試験前 
写真2 壁試験体の耐火試験中
写真3 壁試験体の耐火試験後

3.今後の展開

本件は、主要構造部(CLT壁)における1時間および2時間耐火構造の大臣認定を取得したものです。今後、他の主要構造部(柱、梁、床)の1~3時間耐火構造の大臣認定については、2年以内の取得を目指します。また、昨年発表したCLT遮音壁(Rr-60)およびCLT遮音床(Lr-45相当(※3))と併せて、耐火と遮音の両方に優れた中大規模の木造建築を実現するために、更なる研究開発を進めてまいります。

※3:Lr相当は、CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音
(標準重量衝撃源)の測定結果をJIS A 1419-2にプロットし、相当値として表現したものです。

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