床コンクリートのひび割れ自動計測ロボットを開発

2019年03月22日

株式会社熊谷組(取締役社長:櫻野 泰則)は、自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れ等を自動検出する「ひび割れ自動計測ロボット」を開発しました。
これによって一人で広範囲にわたる計測が可能になるだけでなく、計測員の肉体的負担の軽減や検査時間の短縮を図ることができます。
 
※本開発にあたっては、倉敷紡績株式会社様から、連続写真撮影技術、コンクリートひび割れ自動検出技術などの
協力をいただいています。

1.開発の背景

従来の方法による床コンクリートのひび割れ等の検出・計測・記録は、たいへん多くの手間と時間を必要としています。そのため、こうした作業における省力化技術や、確度を向上させる技術が求められていました。また、老朽化が進む構造物の増加にともない、こうした構造物に対応する検査技術のひとつとして、ひび割れ等を計測する技術の開発や改良は、ますます重要なものとなっています。
 
近年、コンクリートのひび割れを検出・撮影する技術は、AI(人工知能)でひび割れを認識して抽出したり、高解像度レンズを使用して遠方からひび割れを観測したりする技術など、さまざまな開発が行われています。これは各種構造物において、コンクリートのひび割れ等を検出・計測・記録して完成時検査に用いたり、供用後のメンテナンスや補修の必要性の有無を確認したりするためのものです。
この床コンクリートの「ひび割れ自動計測ロボット」も、こうした課題を踏まえて開発したものです。

2.技術の概要

今回開発した「ひび割れ自動計測ロボット」は、自動走行台車にカメラを搭載し、床面を連続撮影します。

撮影した写真は走行時に自動取得した位置データと照合し、自動で配置・結合されます。
こうして合成された画像データから『ひび割れ自動検出・図化システム』がひび割れ幅やひび割れ長さを自動検出し、正確な位置データを持つひび割れ図のCADデータとして出力します。

これを当該位置の構造図のCADデータと重ね合わせることにより、「ひび割れ計測図」として、検査報告書へ記載することができます。 

「ひび割れ自動計測ロボット」本体装置外観
「ひび割れ自動計測ロボット」本体装置外観

3.このロボットの特徴

(1)計測作業の時間短縮
ひび割れの多寡の影響はほとんど受けず、計測作業の時間が従来よりも約1/2になり、大幅な短縮が見込まれます。

(2)計測員の負担軽減とコスト低減
従来のひび割れ計測は、人海戦術で実施されていますが、「ひび割れ計測図」の作成に必要な作業の多くが自動化されており、計測員の肉体的負担の軽減、現場検査時間の短縮にともなうコストの低減が見込まれます。

(3)広範囲を一人で計測することが可能
計測する区画の、開始点と終了点の座標値を入力して、スタートボタンを押したあとは、すべて自動で走行して計測します。1区画の大きさは、10m×10m~10m×20m程度を想定しています。

(4)自動計測中のモニター確認が可能
右図のようにモニター画面で、計測漏れがないかなどをリアルタイムで確認できます。

(5)手動(手押し)計測も可能
自動で計測漏れがあった場合や自動走行で計測できない部分がある場合は、モニターを見ながら、手動(手押し)で計測できます。

「ひび割れ自動計測ロボット」モニター画面
「ひび割れ自動計測ロボット」モニター画面

4.今後の展開

当面は、当社の現場に限定して活用し、実際の現場での運用を通じて、さらなる改良改造を行います。また、将来的には商品化の可能性も視野に入れており、床面以外への応用も検討しています。

【お問合せ先】
[本リリースに関するお問合せ先]
株式会社 熊谷組 経営企画本部 コーポレートコミュニケーション室 電話 03-3235-8155          

[技術に関するお問合せ先]
株式会社 熊谷組
建築事業本部 建築技術統括部 建築生産イノベーション技術部 電話 03-3235-8722
       技術本部 新技術創造センター 開発第1グループ