創業の工事、土木遺産を保存・活用へ 「宿布発電所」跡地を整備し、福井市に寄贈しました

2019年10月21日

 宿布発電所(福井市宿布町)は、1899年(明治32年)5月に、京都電燈株式会社(現・北陸電力)によって福井県で初の、北陸では2番目の水力発電所として運転を開始しました。福井市内に流れ込む足羽川に堰堤を造り、約2㎞の導水路で貯水池に水を引き、この水で水車を回して発電しました。運用当初の出力は80kwで約600燈の明かりが灯り、1901年(明治34年)には発電機が増設され、約3000燈の需要を満たしたと記録されています。

 1898年(明治31年)、 当社の創業者・熊谷三太郎は 当社初の請負工事として、この発電所の導水路や貯水池の石積み工事にあたりました。当社ではこれをもって創業元年とし、ここを当社の事業発祥の地としています。

 宿布発電所は、繊維業をはじめとする福井の近代産業の幕開けを担い、半世紀以上にわたって活躍しましたが、1956年(昭和31年)に老朽化のため廃止されました。その後、発電所跡地は土に埋もれ、幸運にも当時の構造物が現代まで残り、120年前の水力発電の様子を今に伝える貴重な遺構となりました。しかしながら、遺構は毀損が激しく、一般にはその存在すら忘れ去られている状況でした。

遺構全景(貯水池・余水吐)
送水鉄管路跡
余水吐
石積み

 こうしたことから当社では、この歴史的価値のある遺構を後世に残し、市民の皆様に広く活用していただくことに社会的意義があると考え、昨年(2018年)、当社の創業120周年の節目を機に、当社のルーツでもある宿布発電所跡地の整備を進めてきました。
 整備工事では、貯水池や余水吐、水車に送る管路の跡を掘り起こし、当時の発電設備を展示する木造平屋の展示館を建築しました。また、芝生広場、駐車場、案内板を設置し、だれでも自由に見学できる施設にしました。
 展示館に設置された水車と発電機(ともに北陸電力寄贈)は、実際に宿布発電所で使用されていたものです。水車は国内で唯一現存する型式のものと言われており、発電機とあわせて大変に貴重な設備です。

旧宿布発電所展示館 外観
発電所運転当時の水車(右)と発電機(左)

 9月28日に当地で行われた完成祝賀式典では、当社の櫻野社長が「このたびの工事は、単なる創業の地を整備するというだけでなく、近代産業の幕開けを担い、その役目を終えて長いあいだ眠っていた発電所の遺構に、新たな価値をつくりだし、世に送り出すものであり、大変意義のある事業だった」と挨拶。櫻野社長と北陸電力株式会社の水野 弘一 代表取締役副社長が東村 新一 福井市長へ寄付採納目録を手渡し、福井市から感謝状を受け取りました。
 当社では、この施設が地域の皆様に広く活用され、永く愛され続ける施設となることを願っています。