木造CLT床で高い床衝撃音遮断性能を達成

2018年10月10日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、中大規模の木造建築への採用を念頭に置いたCLT※1床および付加材※2の組み合わせによる床材を開発し、一般財団法人建材試験センターでの実験において、重量床衝撃音(標準重量衝撃源)でLr-45相当※3の高い遮音性能を達成しましたのでお知らせいたします。

※1:CLT(直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネルです。
※2:付加材は、CLT床の上に遮音シート付ALC、高剛性高密度となる2重床、CLTの下に断熱耐火パネルと石膏ボードとの積層構造による燃え止まり層、防振天井のことを示します。
※3:Lr相当は、CLT床単体の測定がJISで規定されていないため、残響室で床単体の重量床衝撃音(標準重量衝撃源)の測定結果を JIS A 1419-2にプロットして数値化し、相当値として表現したものです。

1.開発の背景

 現在、当社が取り組む中大規模の木造建築については、すでにCLT壁単体でJIS最高の遮音等級Rr-60を達成し、2018年7月に発表いたしました。

 しかしながら、木造建築においては、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、これを使用する共同住宅などの住戸間で必要な遮音性能を確保するためは、壁単体だけでなく、壁・床・梁全体での遮音性能が重要であり、当社では継続して開発を進めてきました。

 共同住宅などの床には、高い水準での重量床衝撃音の遮断性能が求められます。しかし、比重の小さいCLT単体では十分な遮音性能が得られません。そこで当社では、CLT床とさまざまな付加材を組み合わせることにより、遮音性能を確保する開発・基礎実験を行いました。

2.開発の概要

 CLT床は、鉄筋コンクリート床に比べると比重が小さいことから、特に重量床衝撃音の対策が難しくなります。高い遮音性能が求められる建物では、CLT床の上にコンクリート等を打設した湿式工事による重量床衝撃音の対策が一般的です。しかしながら、この対策では、コンクリートの重量によって、軽量性に優れるCLT床の特性が活かせないことや、乾式工事であるCLT床に加え、湿式工事が入ることで工期が長くなるなどの課題がありました。

本開発では、重量床衝撃音の遮断性能の向上に重点を置きながら、CLT床の付加材として、乾式工事となる遮音シート付ALC※4などを組み合わせることで遮断性能を向上させました。また、遮音シート付ALC以外に用いる付加材の施工も乾式工事とし、施工性と軽量性にも優れた仕様にしています。

〈本開発における主な遮音対策〉
① 210mmのCLT床の上に遮音シートを組み込んだALCを設置
② 重量床衝撃音の対策として、高剛性高密度※5の2重床※6を設置
③ 防振ゴムの形状を工夫した防振ハンガーによる防振天井を設置

なお、遮音性能の評価は、標準重量衝撃源による重量床衝撃音の測定結果をJIS A 1419-2(等級曲線)にプロットすることで、簡易的にLr相当※3として数値化しました。 実験の結果、210mmのCLT床に上記①~③の付加材を用いることで、重量床衝撃音(標準重量衝撃 源)に対し、Lr-45相当※3の高い遮音性能を達成しました。

3.今後の展開

 今回の結果は、210mmのCLT床および付加材※2での床単体としての遮音性能です。今後はCLT床を150mmにした場合などにおいてもさまざまな付加材を組み合わせ、さらに高い遮音性能となる仕様を検討する予定です。

 また、床の遮音性能は、床単体だけではなく、壁や梁等の納まりを考慮する必要があります。今後は、先に発表したCLT壁の遮音性能(Rr-60)と、現在開発を進めている主要構造部(柱・梁・床・壁)の耐火性能を組み合わせ、実際の建物に適用可能な仕様を検討していきます。


※4:ALCは、軽量気泡コンクリート板のことです。
※5:高剛性高密度とは、2重床の構成としてパーティクルボードとフローリングの間の仕様を比重の高いアスファルトシートを合板で挟み込むサンドイッチ構成にすることで、高い剛性と高い密度の両方を確保したものです。
※6:2重床は、支持脚と防振システム根太を採用し、側面壁と巾木下部は約3mmの隙間を設けています。

図1 重量床衝撃音の遮音測定状況
重量床衝撃音の遮音測定状況
図2 重量床衝撃音の遮音測定結果(Lr-45相当)
図3 試験体の平面図および断面図況
試験体の平面図および断面図況

本リリースに記載している内容は発表日時点のものですので、あらかじめご了承願います。
【本リリースに関する問い合わせ先】
株式会社 熊谷組 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 電話 03-3235-8155
【本技術に関する問い合わせ先】
株式会社 熊谷組 技術本部 新技術創造センター 電話 03-3235-8617