木造CLT壁でJIS最高の遮音等級を達成

2018年07月02日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、中大規模の木造建築を念頭に、CLT※1壁単体での遮音実験を一般財団法人建材試験センターで行い、CLT90mmとCLT150mmをそれぞれ用いた2種類の複合壁において、両方ともにJIS最高の遮音等級となるRr※2-60を達成しましたのでお知らせいたします。

※1:CLT(直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネルです。
※2:Rrは、品確法で規定されている壁単体の遮音性能値でJIS A 1419-1(空気音遮断性能)の等級値です。

1.開発の背景

 今後、需要が高まると考えられる木造建築分野において、当社が取り組む中大規模の木造建築では、建物の主要構造部である壁に、木質系材料であるCLT壁を用いることが想定されます。しかし、共同住宅などにこのCLT壁を使用する場合には、高い水準での空気音遮断性能が求められるなど、技術的な面で解決すべき課題がありました。

 そこで当社では、CLT壁を共同住宅などでも利用できるよう、高い遮音性能を確保するための開発・基礎実験を行ってきました。

2.開発の概要

 一般に共同住宅における住戸間の壁単体の空気音遮断性能(JIS)は、実際の建物(共同住宅等)で使用した場合において、遮音等級Rr-55以上が望ましいと言われています。
 通常のCLT壁は、厚さ30mm程度のラミナ(ひき板)を繊維方向と直交させて積層した木材の壁であり、鉄筋コンクリート壁と比較すると、材料の単位面積当たりの重量が低いため遮音性能が劣ります。また、CLT壁にグラスウールなどの吸音材を設置したふかし壁を設けた場合でも、鉄筋コンクリート壁と比較すると、遮音性能が低くなる課題がありました。

 そこで本開発では、CLT壁近傍に遮音効果を高める構成材料(石膏ボード、断熱耐火パネル、遮音シートなど)を組み合わせて用い、壁全体としての遮音性能を高めました。また、ふかし壁で比重の異なる材料を積層させるなどして、低音域の共鳴透過を低減させました。 従来のCLT壁にこうした当社独自の仕様を組み込むことにより、本製品はJIS規格の空気音遮断性能として最高となる遮音等級Rr-60を達成しました。

 また、木造建築における住戸間のCLT壁など主要構造部は、遮音性能と共に耐火性能を確保する必要があります。耐火性能は、木材そのものの「燃え代層」により耐火性能を確保する方法と、「燃え止まり層」を設けて耐火性能を確保する方法があります。
 本開発では、「燃え止まり層(CLT90mm)」と「燃え代層(CLT150mm)」の両方の耐火仕様において、壁単体として空気音遮断性能で遮音等級Rr-60を独自仕様の組込みで達成しました。

3.今後の展開

 今回の結果は、CLT壁単体での遮音性能を確認したものです。木造であるCLT壁は、壁面以外からの音の伝搬経路も想定されるため、住戸間の遮音性能は、壁単体だけではなく、壁・床・梁全体での遮音性能が重要となります。
 当社では、今後は床や梁等の納まりを考慮した遮音性能を確保する必要があると認識しており、現在、同時に開発を進めているCLT遮音床(乾式工法による重量床衝撃音等の対策床)と、主要構造部(床・梁・壁)の耐火構造を踏まえ、この床と梁の上にCLT壁を設置して、壁の空気音遮断性能に関する大臣認定取得を目指す予定です。

写真1 燃え止まり仕様(CLT90mmふかし壁)の施工

① CLT90mm施工終了
② 耐火ボード施工中
③ 軽鉄・GW施工終了
④ CLT遮音壁施工終了

写真2 燃え代仕様(CLT150mmふかし壁)の施工

① CLT150mm施工終了
② 反射遮音シート施工終了
③ 軽鉄・GW施工中
④ CLT遮音壁施工終了・測定
図1 燃え止まり仕様(CLT90mmふかし壁)の空気音遮断性能の測定結果
図2 燃え代仕様(CLT150mmふかし壁)の空気音遮断性能の測定結果

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