次世代無人化施工技術 拡張型高機能遠隔操作室の開発

2018年04月17日

 株式会社熊谷組(取締役社長 櫻野 泰則)は、無人化施工技術における災害対応用の拡張型高機能遠隔操作室を開発しました。
 従来の高機能遠隔操作室は、ネットワーク対応型無人化施工機械に適用する遠隔操作機能をユニットハウスに装備したもので、緊急を要する災害対応において、従来に比べて工事着手までの準備期間を大幅に短縮できることが大きな特長でした。今回開発した拡張型の高機能遠隔操作室は、こうした利点を活かしたまま拡張性や柔軟性、信頼性を高め、災害への対応力を更に向上させました。
 また当社は、このようなi-Constructionの技術開発を更に加速させるため、つくば市の技術研究所内に屋外実験ヤードを新設しました 。

1.開発の背景

 人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、難易度の高い現場であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなります。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、この設備構築の時間をいかに短縮して、迅速に工事に着手するかが課題となっています。  

 また複雑化した通信システムは、設営時の誤配線や機器の損傷などのトラブルを招きやすく、緊急時の対応には大きな障害となります。最近の情報化施工やこれからの災害現場で活用が期待されるi-Constructionでは、通信機器の果たす役割が特に重要となっており、できるだけ障害を少なくすることが重要となります。

 さらに、近年は災害の規模が拡大する傾向にあり、遠隔操作で同時に稼動させる建設機械の台数の拡大に柔軟に対応できるよう、拡張性が求められています。

2.設備の概要

 当社では、熊本地震における阿蘇大橋地区斜面防災対策工事の無人化施工で導入していた高機能遠隔操作室を改良し、こうした課題を解消した拡張型高機能遠隔操作室を開発しました。操作室にはデジタル伝送対応機器を搭載し、無線LANによる第5世代の無人化施工に対応します。

【拡張型高機能遠隔操作室の特徴】
(1)拡張性の向上
①複数の遠隔操作室を連結し、3棟まで拡張できます。(本開発では2棟が標準装備です)
②無人化施工の作業段階に応じて、制御対象の建設機械を変えることが可能です。
1棟では3台、2棟では8台の建設機械を制御することができ、3棟では最大15台を想定しています。

(2)柔軟性の向上
③カメラオペレータの操作卓を自在に配置することが可能です。
④固定カメラと車載カメラの映像を32台まで表示することが可能です。

(3)信頼性の向上
⑤ネットワーク対応型無人化施工技術を安定させながら、その機能を最大限に発揮させるため、
 ネットワーク管理機能を充実させました。
⑥無線システムは最新のロボット用周波数を利用した無線局を導入します。

【高機能遠隔操作室の特徴(参考)】
①無人化施工を実施する上で必要な基地局側のネットワーク機器を予め用意することで
設備全体の立上げ時間を大幅に短縮することが可能となります。
②無人化施工システムでの機器構成・設定等でネットワークの負荷を低減することで、 
現場での障害を最小限にとどめることを可能としました。
③オペレータの負担を少なくするため、操作装置、映像装置の配置を最適化しています。
④遠隔操作室はモニタ等の機材を室内に設置したまま10tトラック等で迅速に移動することが可能です。
⑤アンテナ設置用ステージは組立て式で、現地で簡単に設置することが可能です。
⑥映像はすべてデジタル化し、ハイビジョン映像を表示することも可能です。
⑦建設機械にカメラ・無線機器等を簡便に搭載し、操作室とは簡単に接続、運用できるシステムを構築できます。
⑧建設機械の自動走行システムなどロボット技術を容易に導入することが可能です。


 災害現場に無人化施工を導入する場合、従来であれば簡単な操作室でも準備に5~10日を要していましたが、
この移動式の高機能遠隔操作室であれば、屋上に無線基地局を設置して運用するなら1日で、有線LANや光ファイバケーブルを使用して、別途無線基地局の設置が必要となる場合でも3日程度で稼動させることが可能です。

 システムは全てLANで構築されているため、「低容量型デジタル高精細画像伝送システム」※ の導入が可能です。バックホウ車載カメラにHDカメラを使用することで、従来よりもモニタ映像が鮮明になったことに加え、モニタ映像のタイムラグが少なくなり、オペレータの負担も軽減されました。
  ※熊谷組、青木あすなろ建設、大本組、西松建設、フジタ、(一財)先端建設技術センターで共同開発。

拡張型高機能遠隔操作室

操作室内部設備
屋上ステージ設備

3.今後の展開

 突発的な災害に迅速に対応し、速やかに被害の拡大を防止して復旧するためには、平時から建設機械やオペレータの準備が重要です。当社では、この移動式の高機能遠隔操作室を実際の現場に投入するだけでなく、人材育成として無人化施工機械の操作訓練に用いたり、ICT建設技術の開発に活用したりするなど、広く社会に役立てたいと考えています。

 また、今後は当社のつくば技術研究所に新設した屋外実験ヤードを活用し、当社グループ中期経営計画で示した森林保全事業に役立つ林道整備技術・無人化施工技術の開発を進める計画です。

 さらに、これまで蓄積してきた無人化施工技術は、更なる遠隔操作性を向上させるための技術開発や、新たな無線通信開発、およびAIを活用したロボット技術の開発などに活用していきます。

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【本リリースに関する問い合わせ先】
 株式会社 熊谷組 コーポレートコミュニケーション室 広報グループ 電話 03-3235-8155

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