不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術の開発

2018年01月31日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長 樋口 靖)は、株式会社KATO HICOM(代表取締役社長 井上 芳樹 本社:神奈川県横浜市)とJMUディフェンスシステムズ株式会社(代表取締役社長 出本 政德 本社:京都府舞鶴市)と共同で、不整地運搬車を自動で走行させるための「不整地運搬車(クローラキャリア)の自動走行技術」を開発しました。 これにより、不整地運搬車オペレータの負担軽減による工事の安全性の向上と、同一オペレータによる複数台の運転管理による生産性の向上を図ることができます。

1.開発の背景

 一般的な土木工事において土砂の運搬は、積込箇所から搬出場所まで、ほとんど同一の経路を往復する繰返し作業を行っています。その作業は、単調な繰返しの作業でありながら、運搬経路からの逸脱や車両の離合などの危険があり、運搬車の運転手の疲労蓄積や集中力の低下による事故の危険もあります。そこで当社では、土砂の運搬作業の安全性と生産性向上を目的として、不整地運搬車の自動走行技術を開発しました。

2.開発の概要

 不整地運搬車の自動走行技術は、最初に不整地運搬車のオペレータが運転席から離れた場所(操作室)で、走行状況をカメラ映像で確認しながら土砂積載場所から搬出場所まで遠隔操作で運転を行い(教示運転)、その操作内容をコンピュータに記憶させて不整地運搬車を自動走行(自動運転)させるものです。(図-1,2、写真-1,2)

 この技術の開発にあたっては、当社が雲仙普賢岳(長崎県)などの災害復旧工事で確立した、複数の建設機械を操作室から遠隔操作で行う「ネットワーク対応型無人化施工システム」(※1)の要素技術が活かされています。

※1:第7回ものづくり日本大賞受賞

 (1)教示運転
 操作室と不整地運搬車の両方にコンピュータを設置して無線で接続(無線LAN)し、操作室でオペレータがカメラの映像を確認しながら不整地運搬車を遠隔操作することで運搬経路を記憶させます。
 不整地運搬車では、車体に設置したGNSS(全球測位衛星システム)とIMU(慣性計測装置)で車体の位置を測定し、そのデータと操作情報から車載コンピュータで教示経路を作成し、教示運転の終了時に操作室のコンピュータに送信して経路を保存します。

 (2)自動運転
 教示運転が終わった時点で自動走行を選択すると、操作室のコンピュータから不整地運搬車のコンピュータに教示経路と正逆走の情報が送信され、これを元に自動走行が行われます。安全のため、自動走行時も常に操作室と通信を行い、自動走行途中での操作室からの停止指示や非常停止信号が優先されます。  

図-1 自動走行システムの構成図
図-2 自動走行手順
写真-1 コントローラ

3.走行実験と結果

 本技術の実運用に向けて、自動走行システムの精度と運用方法の確認を行うため、阿蘇大橋地区斜面防災対策工事の現場で2回の実験を行いました。(写真-3)  

写真-3 走行実験場所

(1)第1回実験(自動走行の精度に関する実験)
  ① 実験内容 
    不整地運搬車の発進位置を横に逸脱させて自動走行を行い、自動運転走行路の教示経路に対する
    蛇行量を測定しました。   
  ② 実験結果 
    教示経路に対する蛇行量は、平均で30cm、最大で70cmとなりました。          
    蛇行はほとんど同じ傾向で発生しており、発進位置を大きく逸脱しても同じ傾向の蛇行量に収束しました。
    (表-1、図-3,4)

発進位置の
逸脱量
教示経路からの
最大蛇行量
教示経路からの
最少蛇行量
教示経路からの
平均蛇行量
1回目 右に16cm 0.654m 0.005m 0.315m
2回目 右に9cm 0.646m 0.000m 0.319m
3回目 右に13cm 0.678m 0.020m 0.356m
4回目 0cm 0.678m 0.000m 0.309m
5回目 右に12cm 0.685m 0.000m 0.326m
6回目 0cm 0.694m 0m 0.344m
7回目 右に100cm 0.831m 0.000m 0.341m

※7回目の最大蛇行量は、発進位置を逸脱したことが影響

表-1 教示運転との蛇行量

図-3 教示経路からの蛇行量
図-4 1回目蛇行量を基準とした各回の蛇行量

(2)第2回実験(自動走行の運用方法に関する実験)
  ① 実験内容 
    自動走行式の不整地運搬車2台と遠隔操作式のバックホウ1台を1名 のオペレータで操作し、
    土砂積込から搬出までの作業を検証しまし た。   
  ② 実験結果 
    不整地運搬車が自動走行で移動している時間を別の不整地運搬車の土砂積込、搬出作業に利用することで、生産性の向上を図ることができ ることを確認しました。  

4.今後の展開

 今後は、自動走行のさらなる精度の向上を行うとともに、安全面においても運用方法の検討を十分に行い、本格的な実運用に向けて準備を進めてまいります。

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