インフラ大更新市場にむけたコッター床版工法の開発について更なる急速施工を可能とする橋梁床版を開発中

2015年11月19日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長:樋口 靖)は、オリエンタル白石株式会社(代表取締役社長:井岡 隆雄、本社:東京都江東区)、株式会社ガイアートT・K(代表取締役社長:前山 俊彦、本社:東京都新宿区)、ジオスター株式会社(代表取締役社長:栗山 実則、本社:東京都文京区)と共同で、「コッター式継手※を用いた道路橋プレキャストPC床版(コッター床版工法)」を用いて老朽化した橋梁の床版を架け替える工法の開発を進めています。


※コッター式継手とは
  コッター式継手はシールドトンネルのセグメントを連結する技術として開発されました。その後、空港やコ
  ンテナヤードのように交通荷重が特に大きい箇所や軟弱地盤に適した舗装版として高強度PRC版(高強度PRC
  版研究会)に応用されました。
  また、橋梁の端部で生じる段差を防止する延長床版プレキャストシステム工法にも、コッター式継手が用い
  られています。東日本大震災の際には多くの橋梁の端部で段差が生じましたが、延長床版プレキャストシス
  テム工法を用いた橋梁では緊急車両等の通行に支障がなかった実績から、関東地方整備局主催の「平成23年
  度建設技術フォーラム」において「東日本大震災で効果を発揮した6技術」の一つに選ばれました。


 
 

1.工法開発の背景

高度成長期に建造された橋梁は今後一斉に老朽化が進み、平成35年には全国約70万橋のうち4割以上の橋梁が建設後50年を経過すると見込まれています。
その中でも橋梁の床版は、建設当初の想定を超えた交通量の増加や過積載車両の通行により疲労損傷が著しく、道路管理者は適切な修繕・更新を迫られており、その市場規模は数兆円といわれています。

図1

 供用中の橋梁の架け替え工事を行うには交通規制や迂回路を用意することが必要となるため、工事による社会的な影響が少なく、利用者の利便性をできる限り損なわない工法が求められています。
 そこで、供用路線の橋梁床版の架け替え工事では、あらかじめ工場で製作されたプレキャスト版を敷設する急速施工が可能な工法が主流となっています。

2.コッター床板工法の利点

現在開発を進めているコッター床版工法は、プレキャスト製品の利点に加えて以下の優位性を持っています。

(1)更なる急速施工が可能
接合部分にコッター式継手を使うことで、従来のループ継手によるプレキャスト床版工法に比べて床版設置時間を約3割短縮することが見込まれます。
現在行われているプレキャストPC床版による架け替え工事では、橋軸縦断方向(車の走行方向)に約2mピッチで版同士の接合を行います。
接合部の施工は現場で鉄筋と型枠を組み、間詰コンクリートを打設する必要があり 一定の時間を要し天候にも影響を受けます。
コッター式継手では鉄筋工・型枠工は必要なく、くさび状のH型金物を床版に埋設されているC型金物に挿入し、固定用ボルトを必要なトルクで締めこむことで十分な接合強度を確保できます。

(2)将来、部分的な取り換えが容易
長年にわたる供用中には、事故や災害などの特殊な事象により部分的に床版の取り換えが必要となることも想定されます。従来の継手方式では構造上、強度の再現や交換時の作業時間に課題がありますが、「コッター床版」は接合部のH型金物を切断しても、まわりの床版の強度に影響しないため、損傷した箇所の床板を撤去し、交換することで、迅速に再び必要とされる機能を復旧することが容易であり、供用後のメンテナンス性や災害時の早期復旧等においても優れています。

3.現在の開発状況

現在までに静的破壊試験、200万回の定点載荷を繰返す曲げ疲労試験を通じて、ひび割れ抵抗性、耐力・耐疲労性能を確認できました。
本工法は特許を取得しております。

4.今後の予定

今後は、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)が所有する輪荷重走行試験機による最終試験を一般社団法人日本建設機械施工協会施工技術総合研究所において実施し、道路橋示方書等が規定する疲労耐久性を確認するほか、各種耐久性向上対策と、更なるコストダウンを行ってまいります。  また、道路管理者からのニーズが高い片側車線毎の分割施工(半断面施工)を可能とする、橋軸直角方向の継手開発に取り組む予定です。

以上

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