多様な視点を交えて、取締役会で活発な議論を

熊谷組では、多様な視点を経営に取り入れ、コーポレートガバナンスの充実を図るために社外取締役を選任しています。2020年6月に就任した吉田栄氏に社長の櫻野が話を聞きました。

(左)櫻野 泰則 取締役社長 (右)社外取締役 吉田 栄氏 

女性活躍が想像以上に進んでいて驚きました

櫻野 吉田さんが社外取締役に就かれて1年が過ぎました。熊谷組の印象はいかがですか?

吉田 そうですね。社内の雰囲気が明るく、フラットで活気のある会社だと感じています。就任する前は、創業120年という歴史があり、堅いイメージを持っていたので少し驚きました。

なかでも女性の活躍が想像以上に進んでいる印象を受けましたね。内勤の管理職ばかりでなく、営業や現場の副所長などでも女性が力を発揮しています。経済産業省・東京証券取引所の「なでしこ銘柄」に選定されるなど外部からの評価も高いですね。

櫻野 当社の場合、低迷の時代がしばらく続き、近年になって再び成長へと歩み始めました。それとともに「全員参加の経営」を目指してさまざまな活動を進めています。最近、女性活躍をはじめ、そのような取り組みが定着し、社内の空気も変わりつつあるように感じます。

ところで、取締役会の印象はどうでしょうか?

吉田 多様性という視点では、取締役会も十分に機能していると思います。社外の取締役・監査役のキャリアや経験も多彩で、私自身、議論をしていて新しい刺激を受けることがしばしばあります。

ただし、どうでしょうか。取締役会全体の議論としては、もっと踏み込んでもよいように感じます。

多様な視点から意見をぶつけ合って活発な議論を

櫻野 それはどのような点でしょうか?

吉田 これは日本の企業に共通する課題でもあると思うのですが、取締役会の議論が、社外の取締役や監査役からの質問に対して業務執行の取締役が応答するという一方通行になりがちです。

そこからもう一歩踏み込めたらと感じています。お互いに立場を超えて侃々諤々の議論によって結論を導き出すというのが理想の姿ではないでしょうか。そのためにも社外取締役の役割はとても重要で、私自身、議論の引き金になるような一石を投じる発言を心がけています。

櫻野 社外取締役が加わるようになって取締役会の議論も活性化してきたように思いますが、おっしゃるとおりまだ道半ばなのでしょうね。その意味でも、吉田さんの発言は、はっと気づくようなことも多く、とても刺激になっています。

たとえば海外グループ会社の増資に関する案件で、重要となる事業の採算性について発言がありました。また、今回の新しい中期経営計画の策定についても、将来の経営の担い手を育てるために「若手幹部社員にも関わらせるべきでは?」という提案もいただきました。

吉田 取締役会の議論を活性化させるためには、報告事項の比重を減らすことなども検討課題のひとつと思います。社外取締役への事前の情報提供は十分になされていますので、工夫次第で報告事項については簡略化できるのではないでしょうか。そうすれば、自ずと議論の時間も増えると思います。

社員の「自走力」を感じる社会貢献活動

櫻野 先ほど女性活躍の話が出ましたが、他に熊谷組のことで吉田さんが感じていることはありますか?

吉田 ダイバーシティや環境問題についても社員の皆さんの意識が非常に高いと感じています。「自走力」とでもいうのでしょうか、会社から背中を押されているのではなく、社員が自ら前向きに取り組んでいる印象を受けます。社会貢献活動などについても、マッチングギフトを応用した独自の仕組みを取り入れて社員が積極的に参加していますね。

櫻野 「熊谷組スマイルプロジェクト」のことですね。吉田さんも参加したと聞いています。

吉田 はい。そのプロジェクトで「子育てひろば全国連絡協議会」の支援を行っていて、活動の一環として社員と一緒に折り紙を折っておもちゃを作りました。

 

 

社員と一緒に折り紙を折っておもちゃを作る吉田社外取締役

コンプライアンスを徹底させていくための仕組みづくり

櫻野 熊谷組が社会の信頼に応えていくためには、コンプライアンスも非常に重要なテーマとなります。その取組みについてはどのように感じていますか?

吉田 法令遵守の徹底をはじめコンプライアンスについてしっかり取り組んでいると感じています。しかしその一方で、懸念すべきこともあると思います。

コンプライアンス研修などの活動はとても綿密に行われています。今後は、それらの効果をモニタリングするような仕組みも必要ではないでしょうか。企業のコンプライアンスは、たとえ99人が理解していてもわずか1人の気の緩みで大きな問題につながる可能性があります。非常に難しいテーマであると理解していますが、だからこそ徹底した”仕組みづくり”が大切です。

櫻野 おっしゃるとおりですね。しっかりPDCAを回し、実効性を確保するよう努めていきたいと思います。

 

 

「ものづくり」の経験を生かして、異なる視点から

櫻野 ところで話は変わりますが、じつは吉田さんは建設業界にとても縁深いルーツをお持ちなのですよね。御祖父様が日本の土木学に大きな功績を残した学者でいらっしゃる。

吉田 そうなのです。祖父も曾祖父も土木学の学者だったのです。熊谷組から社外取締役のお話をいただいた時には不思議なご縁を感じて、「ぜひ!」と思いました。就任してからは、先祖の墓参りに行くにも気合いが入ります。

櫻野 吉田さん自身はもともと化学の技術者で、生産やエンジニアリング部門での経験が豊富。海外での経験もお持ちです。その「ものづくり」における経験を、建設という異なる分野でも発揮してほしいと期待しています。

吉田 化学メーカーのエンジニアリング部門では、生産拠点などの工事を発注する立場でもありました。つまり、建設会社とは視点が180度違っていたわけです。そんな経験も生かして、新しい気づきを見出せたらと思っています。

土木や建築の現場にもとても関心があります。ぜひ現場の皆さんと直接会って話を聞いてみたいと思っているのですが、現在はコロナ禍の影響でなかなか行けません。このことが、1年を振り返ってみて、唯一残念に思うことですね。

櫻野 落ち着いたら、ぜひ足を運んでみてください。吉田さんには現場はもちろん、地方の支店も訪れ、当社の将来を担う社員に会ってほしいですね。そこで気づいたことを、取締役会にフィードバックしてほしいと思っています。

 

企業としての「背骨」はぶれてはいけない

櫻野 最後に新しい中期経営計画についてのご意見をお聞かせください。

吉田 これは取締役会でも話したことですが、投資家をはじめステークホルダーに対する「コミットメント(約束)」と、会社としての進むべき方向を示す「ターゲット(目標)」を明確に使い分けることが大切だと思います。これらを混同してしまうと、社会からの信頼に応えられず、社員のモチベーションも高まらないということになりかねません。また、変化が激しいこれからの時代には、PDCAをタイムリーに回していくことがいっそう重要になります。
それとともに大切なのは、これまでの歴史の中で培ってきた姿勢や強みといった、企業として背骨になる部分はけっしてブレさせないということです。熊谷組“ならでは”、あるいは“しか”という価値にこだわり、世の中から常に必要とされる企業を目指してほしいと思っています。
 

櫻野 ありがとうございます。今日のお話でも改めて気づかされることがたくさんありました。これからも社外取締役をはじめ、ステークホルダーの皆様の意見を生かし、コーポレートガバナンスの充実を図っていきます。