万全な品質が求められる社会インフラ  大規模スケールの最終処分場の建設

「奥山の杜クリーンセンター」は埋立容量約3,193,177㎥、東京ドーム約2.5杯分という東海エリアでも大規模な最終処分場です。周辺の環境に影響を及ぼさないようにその建設には万全の品質が求められます。私たちの生活に欠かすことのできない重要な社会インフラを実現するために、熊谷組ならではの人と技術がここでも活躍しています。

重要な社会インフラである大規模最終処分場の建設

熊谷組が建設を進める「奥山の杜クリーンセンター」は、廃棄物処理のエキスパートであるミダックホールディングスが運営管理する最終処分場です。この最終処分場とは、燃やしたごみの焼却灰やリサイクル/リユースが困難な廃棄物などを埋め立てて最終的に処分する施設のこと。私たちの生活を支えるとても重要な社会インフラです。適正に運営管理される最終処分場の存在は、廃棄物の不適正処理や不法投棄を未然に防ぐ役割もあります。しかし、我が国における最終処分場の残余容量は減少傾向にあり、需要が高い状態が続いています。
「奥山の杜クリーンセンター」は、全体面積約228,000㎡。埋立容量は約3,193,177㎥、東京ドームおよそ2.5杯分という大規模な最終処分場です。新東名高速道路から近くアクセスに優れていることもあり、東海圏ばかりでなく関西や関東からも利用されています。
最終処分場にはいくつかのタイプがありますが、「奥山の杜クリーンセンター」は管理型の最終処分場です。この管理型では、処分場内に流入した雨水などが周辺に影響を与えないように対策を整え、専用の水処理施設で処理するなど、継続的に環境への影響を管理します。そのため、施工には高度な技術と徹底した品質管理が要求されます。熊谷組は、その使命を担い、社会インフラの実現に取り組んでいます。

浸出水処理施設

オール熊谷組の体制のもと、高品質な施工に取り組む

作業所長  蟻塚 浩一

「奥山の杜クリーンセンター」は大きく4つの工区に分かれ、熊谷組はすべての工区を担当しています。その第1工区の工事がスタートしたのは2019年2月のこと。現場を統括する作業所長の蟻塚浩一は次のように話します。

「この最終処分場は、採石場だった土地を再利用しています。そのため、通常の最終処分場とは異なる高度な技術やノウハウが必要となりました」

一般的な最終処分場では、壁面が比較的ゆるやかな斜面となる場合が多いのですが、この処分場は、採石場の跡地のため、岩盤がむき出し箇所も多い急勾配の斜面です。高低差約30m、ほぼ垂直に近い壁面が続く場所もあります。建設にあたっては、これらの凹凸のある岩盤を切削して均し、コンクリートモルタルを吹き付けるという成形工事が必要となりました。

「場所によって地質などが異なるため、ロックボルトを使って補強するなど工法も工夫しています。環境や地質、設計など本社の関連部署や支店と連携して検討を重ねました」

この蟻塚の言葉にもあるように、困難な条件を克服して高品質な施工を実現するために、工事は関係者が一丸となって進められました。

周辺の環境に影響が及ばないように万全の遮水施工

管理型の最終処分場において、鍵を握るのが遮水工事です。処分場内に流入した雨水が地下水などに影響を及ぼさないように万全な遮水構造が必要となります。その技術について蟻塚は話します。
「処分場の底部には、特殊な粘土を混合させた厚さ50cmの不透水層を設け、さらにその上に遮水シートを敷設するという二重遮水を施しています。また、壁面にも底部と素材の異なる遮水シートを使用し、これらの接合部については検討を重ねて独自の技術を用いています」
遮水シートの施工は、特殊な技術であるため、ほとんどは人力による作業となります。なかでも困難を極めたのが急斜面の壁面での施工でした。幅約1mの遮水シートを慎重に丁寧に貼り付けていきました。雨天時には工事ができないため、工程の管理にも配慮が必要です。
また、処分場内に溜まった雨水は地下に埋設された排水パイプを通じて専用の処理施設に集められます。この処理施設には容量約10,000kLの貯水槽も含まれ、これら施設などの建築も熊谷組が担っています。さらに今回の造成では、敷地内の中央を流れていた川を第1工区の南側へと迂回させています。急勾配の岩盤の上に川を通さなければならず、この川の付け替えも難工事となりました。

ICTによる建設機械を導入し、作業効率化とCO2削減を実現

熊谷組では、センシング技術やロボティクス技術などICTを取り入れた建設機械(建機)の導入を積極的に進めています。今回の現場でも、これら先進の機能を備えた建機が活躍しています。
たとえば、バックホー(油圧ショベル)では、衛星測位システムによって建機の位置を高精度に把握。建機のコントロールボックスに搭載した3次元設計データと刃先の位置を比較し、操作を的確にガイダンスしてくれます。これまで切盛土などバックホーによる作業では、あらかじめ位置や高さの目安となる「丁張り」を設置し、作業中もオペレーターが建機から度々降りて確認しなければなりませんでした。ICTの活用によって、これらの作業のほとんどが不要となり、大幅な効率化を実現しています。底部をならすブルドーザーや締め固める振動ローラにも同様のICTを導入し、効率化を図っています。
CO2排出量の削減は、土木の現場においても欠かすことのできないテーマです。ICTによる作業効率化は、このような課題にも貢献しています。さらに今回の現場では、燃費性能に優れるハイブリッド型のバックホーも導入。このほか、環境アセスメント調査に基づく自然環境への配慮、徹底した分別化による廃棄物の削減、周辺道路での清掃や散水など、土木の最前線で地道な取り組みを積み重ねています。

若手社員たちが学び成長する、最前線での人材育成

2019年2月に施工が始まった第1工区は2022年3月に工事が完了し、現在はすでに廃棄物の搬入が行われています。そして続いて第2~4工区の工事が同年2月にスタート。第1工区での実績が評価され、熊谷組はこれらの建設においても継続して受注しています。現在、現場の作業事務所に常駐する社員は7名。大半が20代という若手中心の現場です。ICTの活用などによる効率化は現場の働き方改革にもつながり、伸び伸びと仕事に取り組んでいます。
「土木工事の基礎知識から協力会社の作業員とのコミュニケーションのとり方まで日々たくさんのことを学んでいます」
と言うのは、入社4年目の中島宏旭です。中島は、熊谷組に入社して最初に配属された職場がこの「奥山の杜クリーンセンター」でした。このような熊谷組の次代を担う若手の育成や技術承継も土木の第一線における大切なテーマとなります。その指導役でもある作業所副所長の川森崇史は次のように話します。
「ICTといった最新技術だけでなく、測量など土木工事の基礎を地道に身に付けられるように配慮しています」
また、最終処分場ならではのやりがいについて、作業所長の蟻塚は語ります。
「私自身、これまで数多くの土木の現場に携わってきましたが、最終処分場は初めての経験です。特殊な施工が多く、一方で万全の品質が要求され、そこが難しさでありやりがいであると感じています。また、私たちの生活を支える社会インフラを自分たちの力で建設している手応えも大きい。若手の社員たちには、土木ならではの醍醐味をこの現場で体感し成長していってほしいと思っています」
現在施工中の第2・3工区の完成予定は2026年6月。「奥山の杜クリーンセンター」はその後も長期間稼働し、約30年にわたって埋立が続く計画です。現在、熊谷組が取り組む工事が、その後の長期間にわたる最終処分場の保全を支えていくことになります。だからこそ、熊谷組は妥協することなく技術と品質にこだわり続けるのです。

現場で活躍する若手社員

工 事 概 要

工事名 奥山の杜クリーンセンター(最終処分場)建設工事
発注者 ㈱ミダック
設計・監理者 ㈱建設工学研究社
工 期 2019年1月1日~2026年6月30日

工事内容

最終処分場

受注者

熊谷組