「独自の現場力」ーー。熊谷組グループではすべての社員が現場の一員です。
建造物の外形的、機能的な品質はもちろんのこと、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる「しあわせ品質」をお届けするために、わたしたちは安全・品質・環境No.1を目指して、ものづくりに取り組みます。

技術力と人間力でつくる、宮城県の新たな広域医療拠点
「仙台医療センター建替等整備工事」

東日本大震災からの復興と、新たな防災拠点整備の一環として建て替えが進められているのが、独立行政法人国立病院機構仙台医療センターです。医療施設、特に総合病院の建設は、安定性の確保だけでなく将来の医療技術の進化をも見越した建設であり、それだけに建設会社の医療技術に対する知見など底力が試されます。熊谷組は、東北の新たな医療拠点となる施設の建設に英知を結集して取り組んでいます。

広域防災の拠点病院であると同時に新時代の医療のあり方を具現する

宮城県の広域医療や災害時対応を担う仙台医療センターは、1937年に創設され、戦後は厚生省に移管されて国立仙台病院として親しまれてきました。ただ施設の老朽化が進み、2011年に発生した東日本大震災により少なからず損傷を受け、県の基幹災害拠点病院としても災害に強い安全な建物を整備する必要に迫られていました。
宮城県は震災後、「広域防災拠点整備構想」をまとめますが、仙台医療センターは現在地の真向かいにある宮城野原を決定しました。また、広域防災拠点整備構想でドクターヘリの導入と仙台医療センターを基地とすることも併せて決め、ヘリポートと格納庫は一足早く2016年8月に熊谷組によって竣工しています。
新病院は地上12階建てで、延べ床面積は61,615m2、病床数660室、手術室12室、働く医療スタッフは約1,000人という巨大なもの。工事は、2016年4月に着工しました。病院、特に大規模な総合病院の建設は、建屋を造るだけでなく様々な技術的、社会的な課題を明らかにし、それらを調整しながら竣工時における最先端医療の実現を目指します。仙台医療センターの橋本省院長は、「新病院は対応力が高く、ムダのない病院づくりを目指すもので、必然的に課題も多くなりますが、それを避けて通ることはできません」と語ります。
例えば技術面では、放射線治療のための部屋のシールド、手術室のクリーン度の確保、滅菌や検体検査のための高精度な電気や熱源の管理などが求められます。開設されれば病院は24時間、365日休みなく稼働しなければならず、建屋には電気や熱源、排気などの安定性を確保するための工夫が盛り込まれていきます。また医療技術や機器は、まさに日進月歩で進化しており、それらを見越した診療室や手術室、部屋づくりも必要です。
熊谷組の作業所長として現場で指揮を執る清水暁は、「総合病院の建設は、今を継続させながら強化し、未来を先取りしていく作業です。そのためには私たち施工側のスタッフにも医療についての様々な見識が必要とされます」と語ります。医療施設の建設は、いわば建設会社としての総合力が試されるものなのです。

医療施設建設の専門家と医療スタッフが共に考え、創造する

様々な課題の調整は、言うまでもなく、そこで働く医療スタッフとの連携なくしてはあり得ません。仙台医療センターの建設では、週に1度、病院側と定例検討会を開いて課題や対応を整理していますが、工事の進捗に併せて、より細部についての打ち合わせが増えていきます。
医療スタッフは、新病院の建設を経験したことがある人は少なく、誰もが手探りです。すでに5つの医療施設の建設に関わってきた清水は、「どんな医療機器を使いたいのかや、どんな動線を期待しているかなどを詳細にインタビューして工事に反映させます」と語ります。
「スタッフの皆さんは医療の専門家ですが、病院の機能は医療技術だけで支えられている訳ではありません。例えば空調や排気、ガス設備など医療を支えるために必要な要素をスタッフの皆さんにご理解いただき、その上で、コストが増えても機能をアップしておくのかなどを議論します。一方で私たちが、不必要と思われるものは『不必要』とはっきりと提案できなくては良い病院とはならないのです」
そのために熊谷組のスタッフは例えば、「総合図」という病院の全体像が理解できる資料を常に用意して打ち合わせしています。新しい病院の中で医療スタッフが、自らの動きを想像できるような資料を用意。その際には、医療機材メーカーと事前に打ち合わせた使い勝手なども織り込んで説明します。
「一緒になって造る。それが竣工後の使いにくさや予期せぬリスクを低減し、病院の安定稼働を支える基盤となっていくのです」と清水は言います。

仙台医療センター作業所 清水 暁作業所長
全作業員が参加する昼礼の様子

作業者にとっても安全で、働きやすい最先端の現場を創る

仙台医療センターの建設現場は、建設工事を担う人たちにとっても安全で働きやすく、ダイバーシティを実現するための先駆的な現場になっています。
新病院建設の工期は、2019年3月末までの3年間。建屋だけでなく電気や設備の作業者が、最盛時には1日約1,000人規模で入ります。朝礼と昼礼では、作業内容や注意点を細かく確認するのはもちろん、その上で清水は「現場は日々人が入れ替わりますが、作業員が安全のために自発的に動くムードづくりに力を注いできました」と言います。
例えば現場や休憩所、トイレなどをきれいに保ち、気分良く働けるようにすること。現場では片付けと掃除を小まめに行い、トイレ掃除は当番制にして、初めて現場に入った作業員でも、「今ある清潔さは仲間の手によって維持されている」という連帯感を持ってもらうようにしています。「トイレなどは仲間が掃除している姿を見れば、汚してはいけないと思うものです」(清水)。
女性作業員のための配慮も取り入れています。現場事務所に女性作業員用の更衣室とトイレを設け、専用の電気錠でなければ入室できないようにしました。仙台医療センターの現場は、日本建設業連合会が推進する女性作業員チームの登録制度「けんせつ小町」に「宮城野ベアーズ」として登録しました。「けんせつ小町」登録では、記念すべき100チーム目でもありました。
ユニークで面白いのが、現場駐車場脇に「ヤギ農園」を開設したことです。3匹のヤギが草を食み、畑ではトマトや芋が栽培されています。「空き地の除草作業の手間を省けないか」という清水の発案でつくられた農園ですが、医療センター職員のために設けられている保育園の園児たちが芋掘りをしたり、作業員が休憩の折にヤギに草をやったりと、緊張感のある現場にほっとするエリアが確保されています。

女性用の休憩室
現場の「ヤギ農園」

「4週5閉所」でも達成が見込まれる竣工1カ月前倒しの改善力

2019年3月末までの新病院建設の工期も1年を切りました。清水によると、1カ月前倒しして2月末には病院に移転の準備を始めてもらえる予定です。着工以来、「1カ月で1日工期を早められれば、3年で1カ月」と訴えて取り組んできた成果です。しかも医療センターの建設現場は土・日の連休が毎月必ず1回ある「4週5閉所」を実現しており、働き方の効率化が着実に進んでいるのです。
清水所長は、「医療施設を手がけている誇りだけでなく、働きやすい環境を整えてきた成果としての効率の向上です。現場の掃除一つにしてもロスを減らし、安全に働けてかつ効率も向上します。2017年には熊谷組の医療施設建設の専門家がここに集まり研修と意見交換の会を持ちましたが、そうした熊谷組の英知が結集した現場として、お客様に1日も早く活用していただける結果を出せそうです」
と語ります。

医療施設建設の研修の様子
ヘリポートと格納庫も手がけました

お客様コメント 新時代の医療のあり方を具現する施設づくり

新しい仙台医療センターは、基幹災害防災拠点病院としての十分な機能を備えるだけでなく、宮城県における急性期治療病院としてのナンバーワンの機能を備えた病院でもありたいと考えています。
その上で私が新病院に強く期待するのは職員、特に女性職員に働きやすい職場となることです。医師国家試験の合格者はすでに3分の1が女性であり、看護師も女性が主流です。つまり日本の医療は、女性たちに大きな期待がかかっています。一方で、女性にとって結婚や出産などのライフイベントは、仕事を続けるかどうかの大きな節目になります。今回の新病院建設では職員のための附属保育所も建て替え、定員も増やします。 つまり新病院は、「平時の安全保障」と言われる医療が、現代に備えるべき要件を具現するものであって欲しいのです。熊谷組の皆さんをはじめとする建設関係者とは、新病院整備室会議を通してビジョンを共有していただき、それを受けて見学会を頻繁に開催していただくなど深い協力をいただいています。安心すると同時に感謝しています。

独立行政法人国立病院機構

仙台医療センター
院長 橋本 省 様

建設工事概要

工事名 独立行政法人国立病院機構
仙台医療センター建替等整備工事
発注者 (独)国立病院機構 仙台医療センター
設計者 (株)久米設計
施工者 熊谷組・加賀田組共同企業体
所在地 仙台市宮城野区宮城野2-411-9他
工 期 2016年4月1日~2019年10月31日
面 積 敷地面積56,009m2、建築面積15,190m2、
延べ床面積61,615m2
構造規模SRC・S・RC造、地上12階建て、病床数660、手術室12
別途、以下の工事を含む
● 既存建物の解体
● 宮城県ドクターヘリヘリポートおよび格納庫建設
 ( 工期 2016年1月~同8月)