『熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法』の開発 ―床スラブによる上フランジ拘束効果を考慮した横補剛―

2021年01月29日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長:櫻野泰則)は、床スラブ付き鉄骨梁を対象に、床スラブによるH形鋼梁上フランジの水平変位および回転拘束効果を利用して鉄骨梁の横座屈補剛を行う工法『熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法』を開発しました。
 本工法は2020年3月に日本ERI株式会社の構造性能評価を取得しており、既に2件の新築工事に適用しています。

1. 開発の背景

 鋼構造建築物に使用されているH形断面梁は、大きな荷重が作用したときに水平方向(横方向)にはらみ出す横座屈現象が生じることが懸念されます。そのためH形鋼などによる横座屈補剛材を小梁や方杖として設置することが、建築基準法で規定されています(保有耐力横補剛)。一方で、大梁の上フランジは床スラブなどにより、連続的もしくは断続的な拘束を受けていることが多く、この拘束効果により横座屈抑制効果が期待できることは、既往の研究や実験により解明され広く知られています。
 以上の背景より熊谷組では、床スラブの横座屈補剛効果を利用することで設計および施工を合理化する熊谷組鉄骨梁横座屈補剛工法の開発に至りました。

2. 工法の概要

 本工法では、頭付きスタッド等のシアコネクタを用いて鉄骨梁と床スラブを一体化することにより、床スラブによる鉄骨梁上フランジの水平変位および回転への拘束効果を考慮した横座屈補剛の設計を行います。これにより、鉄骨梁は横座屈せずに全塑性モーメントに達するとともに、塑性化後の早期耐力劣化を防ぐことができます。
 本工法により設計された鉄骨梁は、梁端部が全塑性モーメントに達するまで横座屈が生じないものとし、かつ、保有耐力横補剛を満たした梁部材として扱うことができます。また、H形鋼の大梁であれば、高炉材、電炉材によらず、適用することが可能な工法となっています。

3. 今後の展開

 今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィスなどの建物に加え、宿泊施設生産施設などを含めた様々な鉄骨造の建物への適用を積極的に行っていきます。

本工法の適用イメージ
本工法の適用イメージ

4. 適用物件

(1)ESR川崎夜光ディストリビューションセンター
 工事名: ESR川崎夜光ディストリビューションセンター新築工事
 工事場所: 川崎市川崎区夜光2丁目4番2
 発注者: ESR夜光特定目的会社
 建物用途: 倉庫、事務所
 建物面積: 78,278.56m2
 構造: 鉄骨造

(2)レンゴー淀川工場跡地開発計画(SOSiLA大阪/レンゴー淀川流通センター)
 工事名: レンゴー淀川工場跡地開発計画(SOSiLA大阪/レンゴー淀川流通センター)新築工事
 工事場所: 大阪市福島区大開4丁目43番8
 発注者: 住友商事株式会社
 建物用途: 倉庫、事務所
 建物面積: 99,974.92m2
 構造: 鉄筋コンクリート造+鉄骨造

お問い合わせ先

株式会社熊谷組 経営企画本部
コーポレートコミュニケーション室 電話03-3235-8155