二重管式既製コンクリート杭工法「ヘッドギアパイル工法」を開発

2017年07月03日

 株式会社熊谷組(社長:樋口靖)と西松建設株式会社(社長:近藤晴貞)、安藤ハザマ(社長:野村俊明)、株式会社トーヨーアサノ(社長:植松泰右)、三谷セキサン株式会社(社長:三谷進治)の5社は、既製コンクリート杭の耐震安全性を向上させるヘッドギアパイル工法(Headgear Pile)を共同開発しました。本工法は、建物を支える既製コンクリート杭の頭部に、直径の大きい鋼管を設置し、二重管式構造とすることで地震力に対する抵抗性を高めることができます。なお、この二重管部の構造安全性評価の妥当性について、一般財団法人日本建築センターから工法評定(BCJ評定-FD0565-01)を取得しました。

1. 工法の背景

 表層地盤が軟弱な場合には、地震時の杭変位や杭頭部の曲げ応力が大きくなることから、一般的に耐力や靭性の大きな外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)などが使用されます。さらに建物規模が大きくなると、鉛直荷重に対しては既製コンクリート杭で支持できるものの、地震時における水平荷重に対しては外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)を用いても耐力が不足し、場所打ちコンクリート杭を採用せざるを得ない場合があります。

2. 工法の概要

 ヘッドギアパイル工法(以下、本工法)は,建物の鉛直荷重を支持する既製コンクリート杭(以下、本杭)の杭頭部付近に,本杭よりも直径の大きな鋼管(以下、外管)を設置します。この二重管式構造により地震等で横方向からかかる力(水平荷重)に抵抗することで杭頭変位を低減できます。さらに,外管に水平荷重の一部を負担させることで本杭の応力が低減できることから,耐震安全性を確保,向上させることができます。
 また,本工法は,表層地盤に軟弱な沖積粘性土が堆積する地盤条件で,物流施設,共同住宅,事務所ビルなどの中低層建物に対して効果的で,特に,大きな鉛直支持力を確保できる既製コンクリート杭工法と組み合わせることにより合理的な設計が可能となり,場所打ちコンクリート杭や大径のSC杭を用いる場合に比べて杭のコストダウンを図ることが可能になります。 このたび,実物大の杭を用いた水平載荷試験により,各水平荷重負担を明らかにするとともに,通常の既製コンクリート杭の施工に用いられる機械で必要な精度を確保できることを確認しました。

3. 主な特徴

本工法の主な特長は以下のとおりです。
・本杭と外管から構成される二重管部で水平荷重に対して抵抗することから、杭頭変位を低減でき、
 杭の耐震安全性の向上につながる
・建物の鉛直荷重を支持する本杭の曲げ応力が低減できることから、杭のコストダウンにつながる
・特別な機械・装置を用いることなく、通常の既製コンクリート杭工事の延長で施工が可能

図ー1 ヘッドギアパイル工法の概要
図ー2 従来工法との性能比較
写真ー1 水平載荷試験の状況

写真ー2 二重管杭の建込み状況

本杭と外管の一体化状況
杭芯ずれの確認状況

写真―3 施工試験の状況

4. 今後の展開

 今後は、コスト低減につながるほか、既製コンクリート杭のより高い耐震安全性確保が可能な杭工法であるヘッドギアパイル工法の適用を積極的に推進する方針です。

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