吹付けコンクリートの遠隔操作技術の開発

2016年07月11日

 株式会社熊谷組(取締役社長 樋口 靖)は、西尾レントオール株式会社(代表取締役社長 西尾 公志 本社:大阪府大阪市)と共同で山岳トンネル工事の安全性向上と効率化を目指し、「無人化施工技術」を活用して、作業員が切羽から離れた安全でクリーンな環境下で吹付けコンクリートを施工できる「吹付けコンクリートの遠隔操作技術」を開発しました。また、鉄道・運輸機構九州新幹線建設局発注の九州新幹線(西九州)、第 1 岩松トンネル外3箇所他工事において試験施工を行い、「切羽災害ゼロと吹付け作業における作業員の曝露粉塵の低減」を目指した施工の実現性を確認しました。 

1.開発の背景

 これまでに熊谷組は、切羽作業の安全性向上と効率化を目的として爆薬遠隔装填システムを開発し、切羽から離れた位置から爆薬と込め物を自動的に装填できる技術を実用化してきました。切羽作業での更なる安全性の向上のためには、爆薬の装填のほか、吹付けコンクリートや鋼製支保工の建込みといった作業においても、人が切羽に接近しないで施工できる技術の開発が大きな効果を上げます。そこで熊谷組は切羽作業の遠隔操作化の一環として、吹付けコンクリートの遠隔操作技術を開発しました。
 この遠隔操作技術の開発に当っては、当社が長崎県雲仙普賢岳の赤松谷川11号床固工の災害復旧工事で確立した、重機を遠隔操作する「無人化施工技術」の要素技術を山岳トンネル工事に取り入れました。

2. 技術の概要

 従来の吹付けコンクリートは、作業員が保護具(保護メガネや防塵マスク)を着用して切羽直近で作業を行います(写真.1)。

 今回の「吹付けコンクリートの遠隔操作技術」は、エレクター一体型吹付け機に取り付けられた3台のモニタカメラの映像を切羽から離れた場所にある操作室に送信し、作業員は操作室でカメラの映像を確認しながら吹付け機を操作して施工します。吹付け機と操作室は有線(LANケーブル)で接続されています(写真.2及び図.1)。

 吹付け機のエレクターブームに搭載した2台のモニタカメラが、従来の吹付けで作業員の立ち位置からの視野を確保し、キャビン上方に搭載した1台のモニタカメラで吹付け箇所全体を俯瞰しながら吹付け状況を確認します(写真.3)。また、カメラには防塵対策を施し、吹付け中のカメラレンズへの粉塵の付着を抑制します。

写真1 従来の吹付け状況
写真2 カメラ取付位置

図1 技術開発の概要 (クリックで拡大します)

写真3 遠隔操作による吹きつけ状況

3. 効果

 掘削直後の切羽は地山のゆるみによって岩塊の肌落ちや崩落の危険因子を含んでいます。この技術は、切羽から離れた操作室から吹付けコンクリートを遠隔操作することにより、山岳トンネル工事で特徴的な災害である落盤・土砂崩壊災害リスクを回避することができます。

 さらに、吹付け中の作業員の曝露粉塵をゼロにでき、「ずい道等建設工事における粉塵対策に関するガイドライン」で示されている粉塵濃度目標レベル以下(3mg/m3)の坑内労働環境を抜本的に改善して、快適な労働環境での作業を提供できます。

4. 今後の展開

 今後は無線化に向けた基礎・実機試験やコンクリート供給設備(ポンプ、急結材供給装置等)の遠隔操作の開発を行い、より効率的な吹付けコンクリートの遠隔操作技術を確立させ、来年度以降の実用化を目指した技術開発を行う予定です。さらに、この技術開発と並行してトンネル施工技術の自動化や省力化を目的とした次世代トンネル施工技術の開発を進め、山岳トンネル工事全体を通じた安全・衛生環境と生産性の向上を目指したいと考えています。

以上

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