生物多様性保全に向けての新たな取組みを推進 JHEP評価に対応したホタルビオトープの開発に着手

2013年06月06日

 株式会社熊谷組(取締役社長:大田弘)は、公益財団法人日本生態系協会(会長:池谷奉文 所在地:東京都豊島区)の協力を得て、「JHEP評価に対応したホタルビオトープの整備手法の開発」を主体とした、生物多様性保全に向けた新たな取組みを開始・推進しました。

1.背景

 2010年10月名古屋で開催された生物多様性条約 第10回締約国会議(COP10)以降、生態系の維持や自然との共存に対する関心がますます広がりを見せ、土木・建築における大規模開発やビル建設計画においては、生物多様性に配慮した技術提案が求められるようになってきています。土木分野では、大規模案件においては総合評価項目の中に「生態系配慮」が記載されている場合がほとんどであり、建築分野においてもCASBEEでの評価項目の一つに取り入れられたことを背景として、都市部の再開発事業などでは施工者選定で生物多様性に配点する事例も出ています。
 一方、熊谷組では、土木建築工事にかかわらず、従来から自然環境や生物が生息する空間づくりに配慮し、ビオトープの創造のほか、屋上緑化の整備、ホタルの棲める環境づくり(通称:ホタルビオトープ)などを実施してきました。しかし、設置・整備後の評価に関しては、第三者機関による評価を受けたことがないため、どの要素がどの程度生物多様性の向上に寄与しているか不確かな面がありました。
 そこで、熊谷組では、生物多様性を定量的に評価できる手法を確立し運用している公益財団法人日本生態系協会と連携・共同して、生物多様性の視点で街づくりを評価するために、「JHEP評価に対応したホタルビオトープの開発」に着手しました。

2.「JHEP評価に対応したホタルビオトープの開発」の概要

 環境アセスメントなどで用いられている「ハビタット評価手続き:HEP」をもとに日本版の評価手法「ハビタット評価認証(JHEP認証)制度」を確立、運用している公益財団法人日本生態系協会と連携・共同して、JHEPに対応したホタルビオトープの整備手法の開発をめざして研究を開始し、現在までに下記の成果を得ています。
 JHEPに対応したホタルビオトープを開発するためには、ホタル幼虫の定量的生息環境の選好性を把握する必要がありますが、日本ではまだ十分な知見が得られていません。そのため、まずはゲンジボタルを対象として、環境選好性に関する研究に取り組むことにしました。
 ホタル幼虫の生息環境要因としては、底質・流速・水深・水温・水路形状・水量などが挙げられます。まずは、ホタル幼虫が選好する底質の条件を明らかにすることから着手しました。図1に、ホタル幼虫の底質選好性把握実験の概要を示します。

3.今後の展開

 今年度から来年度にかけて、弊社はホタル幼虫が好む生息環境条件を把握するための必要な要素実験に注力することにより、幼虫の環境選好性を定量的に明らかにしていきます。
 日本生態系協会ではこれらの知見を組み合わせてゲンジボタル幼虫の生息環境評価モデルを作成し、弊社既施工のホタルビオトープへのフィードバックを行います。
それらの評価をふまえて熊谷組では、JHEP評価に対応したホタルビオトープの整備手法を確立し、認証取得をめざすことを予定しています。
 認証取得により、弊社のホタルビオトープ技術に対する信頼性が一層向上することが期待でき、土木(ダム、トンネル等)工事案件や都心部ビル屋上等への技術提案・設計案件等に広く展開を図っていく予定です。
 なお、これと併行して当社は、公益財団法人日本生態系協会と共同で、弊社技術研究所内敷地の既存草地を対象として、在来草本による草地整備手法の確立に向けた研究にも着手しました。今後1年間モニタリング調査を行い、効果の検証と維持管理手法の確立をめざしていく予定です。

以上

[お問い合わせ先]

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 株式会社 熊谷組  広報室
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 担当:小坂田 泰宏 (電話03-3235-8155)

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