フライアッシュを使った長距離圧送可能な可塑性注入材『スーパーエコマックス』の開発
2012年10月30日
株式会社熊谷組(取締役社長 大田弘 本社:東京都新宿区)は、テクノス株式会社(代表取締役社長 中川正俊 本社:愛知県豊川市)、株式会社ファテック(取締役社長 青野孝行 本社:東京都新宿区)と共同で、フライアッシュを配合し長距離圧送可能な可塑性注入材『スーパーエコマックス』を開発しました。 スーパーエコマックスはトンネルの覆工背面などの地盤中の空洞や空隙に注入する材料です。
1.背景
可塑性注入材として当社では既に「エコマックス」と「AZグラウト」を開発し保有している。ただし、エコマックはフライアッシュを大量に配合しているが長距離圧送ができません。一方、AZグラウトは長距離圧送(距離:2~3km)はできるがフライアッシュが配合されていません。
昨年の3.11の東日本大震災以降、原子力発電の停止により電力需給が逼迫しています。原子力に変わる新エネルギーの利用、促進が行われている一方、既存の火力、水力発電所の有効活用が注目されています。このような状況下で、火力発電所から排出される石炭灰の有効活用が望まれており、空洞注入材、地盤改良材、吹付けコンクリート、マスコン対策、各種コンクリート二次製品への添加が行われています。当社では、主に水力発電所の長寿命化が望まれている電力事業者への対応の一環として導水路トンネルの覆工背面空洞注入材としてフライアッシュを配合した可塑性注入材の開発を行いました。
2.概要
基材と可塑材を別々にミキサで製造し、異なる配管で圧送します。両材料を注入口付近でスタティックミキサーにより攪拌混合して空洞に注入します。フライアッシュは350kg/m3配合するものとし、2~3km圧送することができます。
水中分離抵抗性、充填性、非漏出性に優れ収縮性が少なく圧縮強度は2~3N/mm2で、NEXCOの「矢板 工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領」に適合した材料です。また、溶出試験の結果、水道法で定められている50種類の水質基準をすべて満足しています。
3.特徴
(1)強度
材齢28日で圧縮強が2~3N/mm2。
(2)水中分離抵抗性
水槽投入後60分経過後、水の濁度は0.2%、pHは4%程度上昇するが、NEXCOの基準は満足しており問題ない。
(3)非収縮性
高さ1mの供試体表面の沈下量は0.16cmである。
(4)非漏出性
幅5mm以下の隙間からの漏出はない。
(5)圧送性
2MPa以下の圧力で、100L/minで2000mの長距離圧送が可能である
4.今後の展開
フライアッシュは生産場所(火力発電所)によって、粒度分布や成分が異なるため、配合(可塑剤の添加量)も異なります。現在、2つの電力事業社から生産されるフライアッシュについて試験練りを行っており、標準配合を設定しています。今後は、さらに全国の電力事業者から生産されるフライアッシュを対象に標準配合を確定する予定です。
また、今後の展開として循環型社会の形成に貢献する材料として電力事業者だけでなく広く地盤内や各種空洞への注入材として普及展開を図ります。
以上
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